日本の宗教のいろは

お正月について考える

「お正月」は皆様はどう考えていますか。一年の始まりとしてしかとらえていない人がほとんどではないでしょうか。正月というのは、地域によって呼び方は異なりますが、「正月様」と呼ばれている神様が、各自の家庭に帰ってこられ、それをお迎えしてまつることが正月の行事であります。(諸説あり) この「正月様」は、ご先祖様。正月はご先祖様が各自の家にお戻りになってくるのを迎えます。つまり、各家が祭場になり、その準備を始めるのが、十二月十三日の事始めの日なのです。今は、その日は大掃除の日と思われがちですが、本来は違うのです。その日から物忌(ものいみ)(食事や外出、面会などを慎み、心身を清める)、潔斎(けつさい)(神仏をまつる前に酒や肉などを断ち行いを謹んで心身を清浄にする)を始めます。 また昔は、天・地・人の一日と言い、一日の始まりを三つに分けて考えていました。天の一日は、真夜中の十二字が始まり。地の一日は、夕暮れが始まりとし、人の一日は夜明けが始まりと考えていました。そして、ほとんどの宗教行事は地の一日によって行われます。 つまり大晦日は、十二月三十一日の夕暮れから始まるのです。お正月というのは神道の行事に由来し、「神人共食」、つまり神様と人間が一緒に食事をすることという考え方です。神道の行事では、神様と家族がそろって食事することを非常に大切にしているからです。神様(ご先祖様)と一緒にいただくので、お正月に使うお箸は両側が細く丸い柳箸(やなぎばし)を使うのです。これは一方で神様(ご先祖様)がお食べになるからです。 また、お雑煮というのは神饌(しんせん)(神様へのお供え物)を下し神様からのお下がりとして、ごった煮にして食べるというのが由来であります。また、鏡餅には「お正月様」の魂が宿っていると考えられていて、鏡開きというのはその魂をいただいてリフレッシュするための行事であったのです。こう考えると「お正月」という行事も、しっかりした考え方によって成り立っていることがわかると思います。 太陽であり「あまてらすおおみかみ」が天の岩戸に隠れたときに世の中が暗くなったという神話はよく知られています。「あまてらすおおみかみ」中心とする神々の系統を天神(あまつかみ)と呼ぶ。天神は高天原に座す神々のことで、後で日本に降り立ち支配する。その時、国を譲るように言われたのが「すさのおのみこと」の子孫である大国主命を中心とする国神(くにつかみ)であり。(国譲り)。つまり日本の神々には統治者としての天神と統治される側になった国神の二系統があることになります。
グラコム2004年12月号掲載

  2004/12/27   M I
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