今回は「空(くう)」についてです。
仏教で大切な教えの一つに「空」という考え方があります。説明も理解もしづらいのですが仏教には欠かせないことの一つなのでなんとか簡単にお話をしたいと思います。
人生はその人の思い通りにはいかないものです。楽あれば苦ありのことわざ通り。また人は、様々なことに固執するあまり煩悩(ぼんのう)が生まれ、それが仏教の教えの中では「悟り」に至ることができない原因の一つになっています。その煩悩をなくすために仏教では、すべての物事は「空」であると捉えるのです。その教えを深く追及したのがインド仏教の「龍樹(りゅうじゅ)」と言われる有名な僧です。
さて「空」とは、サンスクリット語でシューンニャの訳で「膨れあがり中身がからっぽ」とか「実体がない」とかの意味であり、「空」とは単に何もない「無」ということではなく、有ることもないこともすべての事柄・存在は実体がないということを表しています。何の事だかよくわかりませんね。
仏教では事柄の成り立ちは「縁起(えんぎ)」によるものと釈尊は説きました。「縁起」とは、「因縁生起(いんねんしょうき)」の略で、この世のあらゆるものは、「因」という直接の原因と「縁」という間接の条件によりお互いが関係しあって成り立ったりなくなったりしている。ということです。よくあるたとえでお話すれば、植物は、種が「因」にあたり、土、養分、太陽等が「縁」になります。つまり、どちらが欠けても植物は育ちません。人間も生まれてから亡くなるまで様々な成長過程がありますが、それもすべて「縁起」によるのです。右があるから左があり、子どもがいるから親であるわけです。
つまり、すべてのものから独立して存在しているものはなく、この世のすべての事柄・存在は、私たちが頭で創り出した概念にすぎなく、すべての事柄・存在は実体がない「空」であると捉えることによって、煩悩がなく「悟り」に近づけるのだと教えています。
なんだか説明している私もわからなくなってきましたが(笑)、少しはお分かりいただけたでしょうか。つづく
グラコム2011年7月号掲載