今回は三法印についてです。
仏教が大切にしている考え方を「三法印」と言います。これは、のちに仏教の考え方を整理してまとめられたもので、「諸行無常(しょぎょうむじょう)」「諸法無我(しょほうむが)」「涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)」の三つを指しています。
「諸行無常(しょぎょうむじょう)」とは、この世のすべてのものは変化し、永遠に普遍なものは存在しない。という意味です。つまり、私たちはよい状態があるとつい、ずっとそのままでいるのではないかと錯覚したり、そうでないと苦しんだりします。ものごとは無常であることを知ることにより、楽しいことにも苦しいことにもしっかりとした対応ができるのではないでしょうか。
「諸法無我(しょほうむが)」とは、そのまま読めば、すべてのことには、主体となる我(が)がないことを言いますが、わかりやすく言えば、この世には独立して存在するものはなく、すべてのものはいろいろなものと様々に関係があって存在している。ということです。つまり、自己中心主義が行き過ぎて、「自分だけがよければいい」ということでは孤立したり、いさかいを起こしたりする。他のことを思いやるこころや感謝するこころを持たなければならないということではないでしょうか。
「涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)」とは、あらゆる煩悩がなくなって「さとり」を得た状態をいいます。人が感じる苦しみは欲や執着心といった煩悩が引き起こします。それを取り去ることで静寂で安らかなる状態になることができます。これを「涅槃(ねはん)」と言っています。
また、これら「三法印」に「一切皆苦(いっさいかいく)…すべては自分の思いどおりにならない。とか、すべてのことは苦しみである。という意味。」を加えて「四法印」と言われることもあるようです。つづく
グラコム2011年5月号掲載