今回からは釈迦の教え、仏教の原点について何回か連載したいと思います。
仏教徒は「三宝に帰依する」ことが大切だと耳にすることがあると思います。また、そのことが仏教徒としての根本的な考えであるとも言われます。その三宝とは、「仏」…釈迦も含め、悟りを得た仏、「法」…釈迦の説いた教え、「僧」…出家をした僧(もともとは出家者の集団を意味していた。)の三つを言い、この三者は密接に関係し、いずれも仏教の存立に欠かすことのできない重要な要素であり、仏教徒にとって最も尊いものとして三宝と呼ばれています。
「帰依する」とは、心の拠りどころにすると言い換えられるでしょう。つまり、もっとも大切な仏・法・僧を心の拠りどころとすることだと言えます。これは現在、日本にあるたくさんの宗派に関係なく、仏教徒であれば「三宝に帰依する」ことがまず大切であるのです。
釈尊は晩年に、自灯明・法灯明として有名であり、弟子に話した一節に「自らを拠りどころとして、他者を拠りどころとせず、法を拠りどころとして他のものを拠りどころとしないことだ」という内容があります。その中で言われている法とは「仏・法・僧」すべてのことを表していると考えるのが妥当ではないかと私は考えます。自らに自信を失った時、誰もが何かにすがりたい気持ちになることがあると思いますが、仏教徒は三宝に帰依することでその三宝である法を心の拠りどころとすべきである。と述べているのだと思います。
また、その中で話されている、他者を拠りどころとしないことは他者と協調しないことではなく、人間は助け合い、人と関わることによって生きているのですから、そのことを否定しているのでもなく、正しい自分をしっかりと確立し、そのことを拠りどころにすることが大切であると釈迦はお話されたのではないかと考えます。つづく
グラコム2011年3月号掲載