密教についての四回目です。
皆様は、マンダラという言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。さて、そのマンダラとは何なのでしょうか。これはサンスクリット語を音写した言葉であると言われています。意味は、本質・中心・真髄を持つものとされています。また、同時に円・丸いという意味も持ち合わせています。密教はインドで成立したと話をしましたが、このマンダラとは、古代インドにさかのぼり、バラモン教やヒンドゥー教の宗教儀礼で、土壇に様々な幾何学模様などを描き、天上の神々を招いて供養し祈願する聖なる空間のことでありました。これが仏教に取り入れられて中国や日本に伝わりました。
さて、日本でマンダラと言われるものはたくさんの種類に分類され、密教だけに使われているものでもありませんが、今回は密教のマンダラについて簡単に説明します。
特徴を並べると、広がりを持った聖なる空間であり、世界や宇宙の縮図。
複数の要素(ほとけ等)と中心を持つ。
ある規則を持って配置され、複数の要素(ほとけ等)の調和がある。
密教で有名なマンダラと言えば、空海が日本に請来した両界曼荼羅(りょうかいまんだら)と呼ばれる視覚的に表現されているものです。「金剛界(こんごうかい)曼荼羅」と「胎蔵(たいぞう)曼荼羅」の二つを指します。「金剛界曼荼羅」は「金剛頂経」、「胎蔵曼荼羅」は「大日経」の密教経典をもとに描かれたものであり、「金剛界曼荼羅」は九つの部分から構成されて、規則のある動きを持って密教の教義と聖なる世界を表したものと言われます。「胎蔵曼荼羅」は十二の部分から構成されて、おおいなる慈悲を表していると言われます。その中には人々の信仰を集めた現世利益のほとけやヒンドゥー教の神々も取り込まれています。つづく
グラコム2009年10月号掲載