密教についての二回目です。
日本の密教には東密と台密とがあることはお話しました。どちらの密教にも大切な経典について今回は簡単にお話をいたします。「大日経(だいにちきょう)」と「金剛頂経(こんごうちょうきょう)」の二つです。これらの経典は七世紀にインドで成立したと言われ、中国を経由して日本に伝わっています。これらの経典は空海が唐の恵果(けいか)にその意味について学び「両部(りょうぶ)の大経(たいきょう)」として日本で教えを広めています。
まずは大日経についてですが、大日如来が直接語りかけるという内容を持つ最初の経典だと言われています。この経典は、悟りに到達するための心のありようが根幹となっています。それは第一巻で「菩提心(ぼだいしん)を因(いん)とし、大悲(だいひ)を根(こん)とし、方便(ほうべん)を究竟(くきょう)とする。」と書かれています。これは、悟りを求める心と万物に対する慈悲を持ち、救いの具体的な手段を実践することで悟りの世界が開けるという意味だといえます。そして、第二巻以降で実践する行について書いてあります。
金剛頂経については、釈尊が一切義成就(いっさいぎじょうじゅ)という名前の菩薩(ぼさつ)として問いかけ、大日如来が答えるという形で書かれています。内容は、「五相成身観(ごそうじょうしんかん)」と言われる五段階の即身成仏への道が書かれています。その五つの意味を簡単に書き記すと、
○通達本心(つうだつほんしん)…悟りを求める心を自覚すること。
○修菩提心(しゅうぼだいしん)…修行を重ねその心を清らかに保つこと。
○成金剛心(じょうこんごうしん)…その心を強固にすること。
○証金剛身(しょうこんごうしん)…身も心も仏と一体になること。
○仏身円満(ぶっしんえんまん)…自己が仏と一体であることを悟ること。 この二つは、密教の根本経典と言われています。日本では真言宗と天台宗にとって大切な経典ではありますが、真言宗と違い天台宗は、法華経を根本経典としています。つづく
グラコム2009年8月号掲載