仏教は二千六百年ほど前にインドの釈尊が悟りを得た後、中央アジアから中国、朝鮮へと伝わり、日本にやってきました。日本には、五百五十二年とか五百三十八年に伝わったと言われていますので、千年以上の年月を経て日本に伝わったことになります。長い年月を経て様々な解釈から仏教は多くの宗派に分かれ、日本でもたくさんの宗派が存在しています。現在の日本の仏教を考えるには、大きな三つの分類から考えるとわかりやすいと思います。その分類とは、「大乗(だいじょう)仏教」と「小乗(しょうじょう)仏教」。「密教(みっきょう)」と「顕教(けんきょう)」。そして、「自力」「他力」。です。
まず初めに大乗仏教と小乗仏教ですが、小乗仏教はインドから東南アジアに広がった仏教、それに対して日本の仏教はほとんどが大乗仏教に分類されます。また大乗仏教が成立したのはインドにおいて紀元前後のことであり大乗仏教は釈尊の死後数百年後に成立しました。
小乗仏教というのは出家者中心の仏教と考えられます。家を捨て、妻子を捨てて出家した者だけが救われる可能性があり、在家の人間には真の救いがないという考え方をします。
これに対して大乗仏教は万人の救いを主張しています。小乗仏教という名前は、大乗仏教が成立したころに大乗仏教の側からさげすんでつけた名前であり、東南アジアでは「上座部(じょうざぶ)仏教」と呼んでいます。「上座」とは「長老」のことを意味しています。
少しわかりやすく話をすると、仏教の教えは、私たちが生きている此岸(しがん)という煩悩があふれる迷いの世界から、彼岸(ひがん)という煩悩のない悟りの世界に到達するという教えであります。どのように到達するのかで小乗仏教と大乗仏教の考え方が違います。小乗仏教では、たいへんな修行を積まなくては到達することができない世界であるために何もかもを投げ出して、出家をし、厳しい修行を積むことにより彼岸に渡ることができる可能性があるという教えです。しかし大乗仏教は、出家して厳しい修行を積んだ者だけでなく、その者が在家の信者たちを彼岸に到達することができるような手助けをし、その方法を実践するように教えてあげるという教えなのです。つづく
グラコム2008年7月号掲載