日本の宗教のいろは

秋の彼岸と六波羅蜜

夏の暑さも和らぎ、朝夕には涼しさを感じるようになるのが秋のお彼岸。諸寺では九月二十三日の彼岸中日に彼岸会法要が開かれます。お彼岸は昼と夜の時間がほぼ同じになり、太陽は真西に沈み、その方向には極楽浄土があると信じられています。仏教ではこの悟りや浄土の世界に近づくことを目指して、日々精進することを教えていますが、その方法の一つとして『六波羅蜜(ろくはらみつ)』の実践があげられます。波羅蜜(はらみつ)とは彼岸に至ることを意味し、そのために六つの実践が必要であると説かれています。
一・布施(ふせ)…人への施し。財物を施す財施(ざいせ)、教えを説き施す法施(ほうせ)、恐れを取り除き安らぎを与える無畏施(むいせ)の三施。布施をする側もされる側も清浄な心でなくてはなりませんね。
一・持戒(じかい)…戒律(修行するときの規律)を守ること。戒には五戒と十戒があり、戒律を守り、正しい生活をすることで自分自身を高めることが必要だということです。
一・忍辱(にんにく)…侮辱や迫害に耐え、怒りの心を起こさないこと。つまり、愚痴や不平不満などを言わずに誰にでも寛容な心を持つことが大切であるということです。
一・精進(しょうじん)…たゆまず努力をすること。つまり、心身を精励し、他の五つの波羅蜜を修行することです。
一・禅定(ぜんじょう)…精神を統一すること。心静かに瞑想し、真理を観察すること。静かな心で世の中をじっくりと見ることによって本当の姿が見えくるのです。
一・智慧(ちえ)…真実を見極めること。単なる知識だけで物事を考えるのではなく、迷いを断ち真理を見極める洞察力を持つことです。
このような話だと難しく感じる人が多いと思いますが、なるほどと思うことも多いのではないでしょうか。心を静めて、秋のお彼岸にこのようなことを考えるのも良い機会ではないかと思います。
グラコム2007年9月号掲載

  2007/08/25   gracom
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