大晦日といえば除夜の鐘を連想する方が多いでしょう。そして除夜の鐘は百八回たたくのが一般的ですが、この百八は煩悩(ぼんのう)の数であると言われます。では、煩悩とは、そして百八の煩悩とは何なのでしょう。
煩悩とは「心を悩み苦しめるもの」のことを言います。人間が持っているものであり、自己中心的な考えとそれに基づく物事への執着から生じるものと言われます。仏教的な解説を簡単に加えると、欲しいものを手に入れたくなること(貪・とん)、腹を立てたり憎んだりする怒りのこと(瞋・しん)、真理を知らない愚かでわからずやのこと(痴・ち)、自分だけが正しいと思うこと(見・けん)、仏の教えを疑うこと(疑・ぎ)、傲慢(ごうまん)になってしまうこと(慢・まん)の六種類の根本煩悩とそれから派生する様々な煩悩の合計が百八あるといわれているのです。ただし、煩悩の数については様々な考え方があり、多い数で言えば六万四千もの煩悩があると言われています。
また煩悩は悪いことと考えがちですが、人間に煩悩はつきものだと考え、上手く煩悩とつき合うことが大切だと思います。自分勝手すぎることは社会ではたいへん問題だと思いますが、自分の煩悩にしっかりと向き合い、コントロールすることが大切です。煩悩のコントロールのためには、お仏壇と向き合い、灯火を見つめ、香を聞くことが最も好い方法であるとも言われています。
さて大晦日とは、旧暦の頃それぞれの月の最後の日を『』みそか(みそは三十の意)と言っていて、一年の最後の日はおおみそかと言っていたのです。ですから現在は十二月三十一日のことを指しています。また除夜といは、大晦日の夜のことを言いますが、もともとは一晩中寝ないで起きているという意味であったそうです。そして除夜の鐘は煩悩の数である百八回たたくところが多くありますが、その意味は、その音を聞きながら一年の罪を懺悔(ざんげ)し、煩悩を取り除き、清らかな心になって新しい年を迎えることなのだと思います。ぜひ、そんなことを思いながらよいお正月をお迎えになってください。
グラコム2007年1月号掲載