前回は、真言宗は「即身成仏」という心が一番大事な教えです。ということでそのことを紐解いてきたところでしたね。そして、「即身成仏義(そくしんじょうぶつぎ)」の中の短い文を考えるところでつづきになりました。
密教では、宇宙に存在するあらゆるものを次の三つの側面から成り立っているととらえています。「体大(たいだい)…ものそのもののこと」「相大(そうだい)…ものの姿、形のこと」「用大(ゆうだい)…ものがもつ働きや作用のこと」の三つです。前回の四行の文章のうち三行もこのことを説明しています。
一つ目の「体大」についてですが、宇宙は「地・水・火・風・空・識」の六つの構成要素「六大体大」から成り立ち、
それは五つの物質的構成要素「地・水・火・風・空」と「識」という一つの精神的構成要素なのです。
つまり、宇宙は、六つの構成要素がお互いにバランスを取り合って存在していると考えています。(六大無碍(ろくだいむげ)にして常に瑜伽(ゆが)なりの意。)
二つ目の「相大」ですが、密教では宇宙には四つの面があり、四種類の「曼荼羅(まんだら)」で表現しているのですが、どの曼荼羅も宇宙を表現しているものであり、
それぞれは離して考えることができないものなので四曼不離(しまんふり)であるといっています。(四種曼荼(ししゅまんだ)おのおの離れずの意。)
三つ目の「用大」ですが、仏教でいう人間の「三業(さんごう)‥身・口(言葉)・意(心)」のことをいい、仏の三業はわれわれ人間には計り知れないほど奥深いので「三密」であり、
「三密加持」とは、手に印を結び、口(言葉)に真言を唱え、意(心)に本尊を念じて祈ることなのです。
「三密加持」すれば、宇宙と一体になり、人間が持つ力では考えられないような不思議な力があらわれるということです。(三密加持(さんみつかじ)すれば即疾(そくしつ)に顕わるの意。)
そして最後の行では、衆生と仏が一体となって溶け合うことが「即身」だと言っています。(重々帝網(じゅうじゅうたいもう)なるを即身(そくしん)と名づくの意。)
たいへん難しい教えですね。でも、少しはご理解いただけたのではないでしょうか。
密教の教えは、宇宙の真理と出会うために、六大無碍、四曼不離の道理をしっかりと観察し、「三密加持」を行じることにより「即身成仏」ができ、衆生が持つ力では考えられないような不思議な力があらわれるということではないかと思います。
(筆者は、宗派の専門家とは言えませんので、詳しくは、菩堤寺のご住職にお聞きください。素晴らしい人ばかりですので、わかりやすく教えてくださると思います。)
グラコム2006年8月号掲載