日本の宗教のいろは

ろうそく(蝋燭)のお話

各宗派の宗祖についてのお話がひと段落しました。今月はろうそく(蝋燭)のお話をしたいと思います。皆様はいつも何気なく使っているろうそくですが、その歴史などを紐解いてみたいと思います。
紙や糸を撚ったものを芯とし、パラフィン蝋(ろう)・櫨蝋(はぜろう)・蜜蝋(みつろう)などを燃焼させるものをろうそくといっています。
世界的に見ると、古代エジプト・ギリシャ・ローマ時代からろうそくが使われ、中国では前漢時代の遺跡から燭台(しょくだい)が発掘されたことから、この時代にアシ(植物)を中心として布を巻いたろうそくが使われていたようです。また、現在よく使用されているろうそくは、 パラフィンを材料とし、木綿糸をよった芯を使っています。このろうそくは、一八五年にイギリスで初めて製造され、石油から精製されるパラフィンを材料とすることにより、ろうそくの量産と低価格化を可能にしました。さて、日本では奈良時代から寺院や宮廷で蜜ろうそくが使われていました。その後、蜜ろうそくに加えて、イボタ蝋やヤマウルシを使用したろうそくも中国から輸入されるようになりました。当時、ろうそくは高級輸入品であり、一般に使われるものではなく、日常は松脂(まつやに)ろうそくが主な灯火であった。この松脂ろうそくは農村部で明治初期まで使われていました。
日本でろうそくの製造が本格的に行われるようになったのは江戸時代以降であり、櫨(はぜ)や漆(うるし)の実を蒸して絞って採取された木ろう(脂)を材料とする木ろうそくが主に作られました。明治時代になると現在主に使われているパラフィンやステアリンを原材料とする洋ローソクが登場し、一般家庭の生活の中にもろうそくが広く普及しました。
現在、神仏用ろうそくとしてはパラフィンを主要材料とする洋ローソクのほか、櫨蝋(はぜろう)や糠蝋(ぬかろう)を材料とする和ろうそく、古代よりろうそくとして使われてきた蜜蝋(むつろう)を材料とする蜜ろうそくなどが使われています。儀式の時には金色・銀色・朱色に塗られて使われることもあります。
グラコム2005年7月号掲載

  2005/06/29   M I
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