健康・福祉コラム

看取り介護について

 最初に「看取り」とは「近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最後まで尊厳のある生活を支援すること」とされています。自宅や病院などで看取ることを想像する人が多いと思いますが、最近では介護施設でも、看取り介護を行います。似たような言葉として「ターミナルケア」「緩和ケア」という言葉もあります。最初に、この2つと「看取り介護」の違いを確認したいと思います。  
「看取り介護」ですが、死が近づいている方に対して延命治療を行わず、自然に死を迎える過程を見守ることを言います。「看取り介護」で重視されることが、その人らしい、充実した生活で最期を迎えること、人間の尊厳を守ることとされており、日常的なケアを中心に身体的・精神的な苦痛を緩和する介護を行います。  
次に「ターミナルケア」ですが、別名「終末期医療」と呼ばれて、経管栄養などの医療行為を行います。看取り介護とターミナルケアとの最大の違いは、その方に対して医療行為を行うかどうかです。ターミナルケアについては医師の判断に基づいて、点滴や酸素吸入などの医療ケアを重点的に行っていきます。そして「緩和ケア」とは、生命を脅かす疾患や問題に直面する際、患者とご家族に対して痛みやそれ以外のメンタル面での苦痛に対する予防と緩和を行うことです。  
そして近年、看取りを介護施設で行うことが増加傾向にあります。看取りを行う場所は「病院・在宅・介護施設」で、以前は在宅での看取りが8割となっていましたが、最近では病院での看取りが8割と、増えているようです。  
「人生の最後は住み慣れた場所で看取られたい」という思いから、ご本人・ご家族の意向に沿った生活支援を行うため、看取りを実施する施設が増え、今では8割の介護施設が看取りを実施しているという調査もあります。介護施設に入居された方も、「住み慣れた介護施設で最期を迎えたい」という方も多くいらっしゃいます。   
国の政策によって、在宅での終末期ケア・看取りが推し進められていることもあり、厚生労働省のアンケートによると、国民の約63%が「自宅で最期を迎えたい」と希望をしています。しかしながら、2015年の調査では自宅で最期を迎えた方が約13%、病院で最期を迎えた方が約75%となっています。本人が在宅で最期を迎えることを希望されていても、ご家族が看取りに耐えられず、救急車を呼んでしまったり、在宅での生活を続けた結果、孤独死に至るケースもあります。  
人は命がある限り、必ず死が訪れます。普段から看取ることを理解することで、元気に過ごせる時間が有限であるということに気が付くことができます。普段、何気なく介護にあたる時間が尊い時間に思えて、より良いケアを提供していこうという気持ちにもなることでしょう。

■お話 社会福祉法人治恵会 特別養護老人ホームくつろぎユニット 介護長 椎名 章 氏

kenko2304

  2023/03/27   M I
≪ 新生活に「お弁当」の準備、 考えてみませんか?  |  食事は心の栄養♪ ≫