12月の声を聞くともう1年が終わるのかと思い、月日が流れの早さに歳を感じています。私が勤務している社会福祉法人治恵会 特別養護老人ホームくつろぎユニットは、今年の2月に道東で初めてユニットリーダー研修実地研修施設として指定を受けました。ユニットリーダーはユニット型施設でユニットごとに常勤配置が義務づけられており、これまで北海道での受講希望者は札幌市まで足を運ばなければならなかったのですが、当施設が実地研修施設に指定を受けた事で、道東地区でその役割を担うことができる大きな出来事となりました。
特別養護老人ホームは「ユニット型」と「従来型」の2つのタイプがあります。ユニット型とは10名程度の少人数単位の入居者さんをグループ分けし、ユニットごとに個室・共有スペースを設けたタイプの特養です。部屋はすべて個室で、共用のリビングスペースを囲むような造りとなっています。
「施設を住まいに」。私たち職員にとっては「職場」でも、入居者さんにとっては「最期まで住む家」です。「施設」ではなく、入居者の方がごく当たり前の暮らしが営める「住まい」なのです。住まいには空間と暮らしがあり、ご自宅で使われていた馴染みのある家具や食器を持ち込んでいただき、馴染みのある物に囲まれ、その人の生活リズムに合わせて支援していかなければなりません。
支援させていただく介護手法のなかで「ユニットケア」と呼ばれるものがあります。ユニットケアとは「その人らしい暮らしの継続」を意味します。つまり、施設への入居後もなるべく自宅に近い環境で生活することを目指した介護の形であり、入居者さんが自分の行動を自ら決定出来るよう職員は自律を重視した支援を行います。このような支援を行うばかりではなく、入居者さんとの関係を紡いでいくことも重要です。以前、私たちは施設を利用していただく方を「利用者様」と呼び、新しい利用者様が来られると「○○様入所されました」と表現していました。ですがユニットケアを学んでいくと「利用者様」ではなく「入居者様」。「入所する」ではなく「入居する」、「引っ越しをする」と表現する事がわかりました。言葉の持つ力は大きく、声に出し表現する言葉を変えただけで 職員の意識も大きく変わっていったのを実感しました。職員は、一人ひとりの入居者さんの心身の状況、生活習慣、個性等をよりよく知り、これまで暮らしてきたように、本人にとって居心地のいい場所で、好きなように過ごす、そんな入居者さんに寄り添い、その人が自分らしく、最期の時間を豊かに楽しく暮らせるよう支援を行います。入居者さんの想いにこたえようとする支援は、時には時間がかかり、失敗することもありますが、こうした支援を積み重ねていくことこそが、入居者さんや家族の信頼へとつながり「最期はあなたに、看取ってもらいたい。」と、言っていただけるようになるのです。相手を想う気持ちこそが、ユニットケアの原動力だと考えます。
私は10年以上、介護の現場に携わらせていただいており、振り返ると本当に様々な事がありました。時には理不尽な事が起こったり、時には罵声を浴びせられたり、今まで正直100回以上は「もう辞めたい…」と思いました。ですが、それ以上、数えきれないくらいに「本当に、この仕事をやってて良かった」と思える事もありました。このやりがいのある仕事を誇りに感じ、「ユニットケア」が入居者さんの笑顔へと結びつく事は間違いないのだと確信しています。
■お話 特別養護老人ホームくつろぎユニット ユニットリーダー 松嶋 芳伸 氏