皆様が仏教を身近に感じるときといえば、お葬式を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。お寺の檀家になっていたり、門徒であったりする方々は違うかもしれませんが、そうでない方はお葬式が一番身近に感じる時だと思います。しかし、お寺の僧侶の方々が葬儀に関わるようになったのは意外に新しく、江戸時代からだと言われています。意外ではないですか?ずっと昔から関わっていたように感じる方が多いのではないでしょうか。お葬式の後は、四十九日に法要を営みますね。その後も一周忌、三回忌…と続く法要があります。今回はその時の会食について触れてみます。
一般に法要の後に施主がふるまう料理のことをお斎(とき)といいます。法要の後に亡くなられた方を思い出しながら参列していただいた方と共にする会食のことです。もともとは戒律を守る寺院において正午までに僧侶が食す食事のことを意味していました。寺院では午後、食事をとらない、また食べ過ぎてはならない決まりであったのです。そのことが起源でありますから、お斎の料理は精進料理でありました。
しかしながら現在では、精進料理にこだわらなくなっているのが一般的なようです。
皆様もご存じの通り精進料理とは、修行中にいただく食事であり、それは【精進】が努力するという意味からもわかると思います。僧侶は殺生をしないという戒律を守っていたことからその中身は、肉や魚を用いず穀物・野菜・豆類の食材だけでできていました。その食材の一例に皆様よくご存じの「がんもどき」があります。これは精進料理から創作された肉の代用品としての材料で、鳥である雁(がん)の肉にも劣らない味だということでその名前がついたと言われています。
この地方ではあまりお斎という表現は使いませんが、葬儀後の繰り上げ法要の後に引き出物と一緒に料理の折り詰めを渡すことがありますね。これはお斎を取ることの時間的余裕を省略した形だと思っていただいて良いでしょう。現在の多忙な社会情勢を考えると仕方のないことかもしれません。つづく
グラコム2008年4月号掲載