訪問診療コラム

「救急車の適正利用について」

以前のコラムで、医師の働き方改革が始まった今、この地域の一次・二次救急医療の崩壊を防ぐためには、まずは市民一人一人の夜間休日当番病院と救急車の適正利用が絶対に必要ということを書きました。そして前回と前々回で夜間休日当番病院の適正利用について書きましたので、今回は救急車の適正利用について書きたいと思います。
救急車は言うまでもありませんが、急に重症かもしれない症状が出現し、あまり動かさない方が良いあるいは動けない状況で、大至急検査や救命が必要な際などに利用してください。例えば、脳出血(急に意識が無くなる、嘔吐を伴う激しい頭痛など)や脳梗塞(急に意識が無くなる、身体の半分だけ急に動かなくなるなど)、けいれん(急に意識が無くなり全身がけいれんしているなど)、呼吸困難(息ができない、息ができてもものすごく苦しくて動けないなど)、喀血(咳をしながら赤い血を大量に吐く)、吐血(赤い血や黒い血を大量に吐く)、心筋梗塞(左胸あたりに急に針で刺されたような痛みがずっと続いて胸が苦しいなど)、大動脈解離(胸や背中に急に激痛が走り冷や汗をかいて動けなくなるなど)、腸閉塞(便が出ず腹痛と嘔吐を繰り返すなど)、腹膜炎(一時的に良くならないずっと続く腹部の激痛など)、交通外傷(意識が無い、動けない、骨が外に出る開放骨折があるなど)、重症なやけど(全身の大部分がやけど、気道熱傷など)、などの状況です。
以前北見市ではこのようなことがありました。新型コロナに感染した人が急激に増加した際に、当院含め市内の発熱外来で全ての患者さんを診れなくなり、新型コロナかの検査を受けるのに2~3日待ちの状況となりました。そうなったところ、発熱している患者さんが救急車を呼ぶことが頻発し、北見市内の医療機関だけでは救急車を収容できなくなり、置戸や常呂などの医療機関にまで救急車が行かざるを得ない状況となりました。またそのような状況となったため、他の重症な患者さんが救急車を呼んでもなかなか来ず、一時危険な状況となりました。このように、市民一人一人が適正な救急車の利用をしなければ、本当に命に関わる病状の人が助からなくなる可能性も出てきます。様々な理由で、北見市内の救急車を受け入れ可能な病院の数が減ってきている今、調子が悪い時には重症になる前に平日医療機関に受診することや、市民一人一人が救急車を適正に利用することが、この地域での救急医療を維持するために、必要不可欠なことだと思います。

■お話…医療法人社団 邦栄会 本間内科医院 理事長 本間 栄志 氏

  2024/03/25   M I
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