最近当院に、訪問診療のお問い合わせを患者さんのご家族から数多く電話で頂いております。なかなか診療中ですと時間がとれず、正確に詳しくお答えできないため、このコラムを通じて当院の在宅医療の方針について、2回のコラムに分けてお伝えしたいと思います。
まず当院の在宅医療の対象とさせて頂いている患者さんは、基本的には車いすでも通院ができない介護3以上か難病、あるいは緩和治療が必要ながん患者さんとさせて頂いております。理由としては、この地域では残念ながら訪問診療を実施する医療機関は、在宅医療を希望する全ての患者さんに対応できるほど、まだ十分な数ではありません。そのため、より訪問診療が必要と思われる方に在宅医療を提供したいからです。さらに条件としては、基本的に延命治療を希望されず、患者さんご本人が最期を自宅あるいは入居施設で迎えたい、患者さんのご家族が迎えさせてあげたいという方とさせて頂いております。この理由としては、まず延命治療に関してですが、延命治療の具体例として酸素投与と点滴があります。酸素投与は、一時的に救命のためには必要な医療処置ですが、例えば最期まで自宅でという希望の方が、在宅医療を行っている経過において肺炎になったとします。その際に苦しいからと言って酸素投与を行うと、いつまでも脳に十分量の酸素が送られることにより、意識がぼーっとせずにずっと意識がはっきりしているため、ずっと患者さんは苦しむことが多いです。そのため酸素投与をどうしても行うのであれば、中途半端に酸素投与だけ行っても肺炎は改善しませんので、入院で酸素と点滴、抗生物質投与で肺炎をしっかり治療するべきと考えます。次に点滴に関してですが、食事があまり摂れていない低栄養状態の方に点滴を投与すると、ほとんどの方で痰が増えます。痰が増えると呼吸が苦しくなり、患者さんが苦しみます。痰が自分で出せないのであれば、痰を吸引すれば良いのではないかと思われるかもしれませんが、痰を頻回に吸引すると鼻腔内や喉の辺りをどうしても管で擦ってしまうため、出血して血痰となり、余計に痰が増えて固くなって痰を出しにくくなります。そのためさらに患者さんを苦しめることになってしまいます。以上のような私の在宅医療の経験から、看取りまで希望という覚悟を決められている患者さんやそのご家族には、患者さんご本人が少しでも苦しまずに最期を迎えて頂きたいという思いから、そのような方針とさせて頂いていることを説明しております。(後編に続く)
■お話…医療法人社団 邦栄会 本間内科医院 理事長 本間 栄志 氏