訪問診療コラム

「医療連携について②~当院のクラウドでの多職種連携~」

 前回のコラムでお伝えしたように、今回は、当院で訪問診療を行っている患者さんのクラウドでの情報共有について、コラムを書きたいと思います。
当院では、訪問診療や訪問看護を希望される患者さんやそのご家族から、同意書を頂いた上で、当院のクラウドで多職種での情報共有をしています。クラウドというのは、インターネット上に情報を置いておき、許可されている人だけがそこに情報を見に行けて、新たな情報を載せることもできるシステムです。文字だけではなく写真や動画も保存でき、アクセスが許可されている端末でのみ、いつでも閲覧できます。当院のクラウド上で共有している情報の内容は、当院で作成するカルテの内容の一部や採血データ、処方内容、様々な作成した医療文書、患者さんの褥瘡などの患部の写真や動画などです。また当院のクラウドを利用している職種は、主治医である私と、患者さんを担当する訪問歯科医師や訪問看護師、調剤を担当する薬剤師などです。医師や歯科医師は、特に平日の午前中は外来診療などでほとんど時間がなく、訪問看護師や薬剤師と緊急時以外、連絡をとることが困難です。また訪問看護師も、平日の日中はずっと担当する患者さんの所へ訪問看護を行い、薬剤師さんも同様に外来で作成された処方箋に対する調剤業務で大忙しです。そのためそれぞれ都合が良い時間帯はバラバラで、急ぐ用件でなければ、それぞれの職種がある患者さんについて他の職種に伝えたい情報を、時間がある時にクラウド上に載せておけます。そしてその患者さんを担当する他の職種が、時間ができた時に外にいてもクラウドにアクセスして、情報を確認できます。在宅医療というのは外来診療と違い、ずっと病院にいるわけではないため、FAXなどで情報のやり取りができず、携帯電話もそれぞれの業種が仕事をしている中でしにくく、一度の電話で全員に情報共有ができないため、在宅医療においてはこのクラウドというシステムが非常に有用です。LINEやメールだと情報漏洩の危険性があり、患者さんの実名などが使えないため、患者さんの情報の取り違いが問題でした。これもクラウドであれば、アクセス許可がある端末からでなければ情報が見れないため、秘匿性の高い情報も載せることができ、万一その端末を紛失しても、その端末にはそれらの情報があるわけではなく、遠隔でその端末自体を使えなくすることも可能です。次回のコラムでは、このクラウドの医療現場での更なる活用法についてお伝えしたいと思います。

■お話…医療法人社団 邦栄会 本間内科医院 理事長 本間 栄志 氏

  2023/09/26   M I
≪ 「医療連携について①~各種文書での多職種連携~」  |  「医療連携について③~当院のクラウド活用法~」 ≫