前回のコラムでお伝えしたように、今回はクラウドを使って、もしこんなことができたらいいのになあ、と私が考えていることについて、コラムを書きたいと思います。
実は日本のある地域では、紙のカルテから電子カルテに切り替える時に、地域で一斉に同じ会社のクラウド型電子カルテに変更した所があります。それが実現できると、一人一人の患者さんに同意を得た上で、その地域のどこの医療機関にかかっても、クラウドからその患者さんの情報を引き出せて閲覧でき、さらにはクラウド上にカルテの内容や検査データなどを書き込むことができます。それができると、医療機関毎に行う同じ内容の採血検査が、どこか一か所の医療機関で行っていれば情報が共有できるため、医療費も安くなり、患者さんの採血時の痛い思いも1回で済みます。またある診療所に通院していた方が、急病で大きな病院に救急搬送されたとしても、普段通院しているクリニックのカルテや検査データが総合病院で見ることができるため、休日や夜間でも紹介状が無くても診療がスムーズに行えます。さらには総合病院で入院して退院した後も、入院中のカルテや検査データがいつも通院している診療所で見られるため、入院中の経過に対する情報提供なども不要となります。
実際のほとんどの地域では、医療機関毎にバラバラの電子カルテを使っているため、ネットでつないだり、採血データやカルテ内容などを共有するのはまず不可能です。統一した電子カルテにするにはお金もかかりますし、現行の電子カルテからのデータの移行もかなり大変です。そのため現状でもし何かできるとしたら、この地域で電子カルテ以外のクラウド型の情報管理システムを作り、同意が得られた患者さんに関する作成した医療文書などを、各医療機関がクラウド上に保存して、それを各医療機関や救急隊などが閲覧する、というものかと思います。このようなことができるだけでも、各患者さんの病名や病状、処方内容、採血データ、介護度、家族の緊急連絡先などがわかり、特に何か急を要する状態で有用な情報源になると思います。そしてそれが自ずと医療連携になるのではないかと考えます。
■お話…医療法人社団 邦栄会 本間内科医院 理事長 本間 栄志 氏