介護医療コラム

「終末期医療の治療方針② ~点滴について~」

2回目のテーマは点滴についてです。発熱や下痢、嘔吐などの症状があり、水分や食事の摂取が十分できていないと脱水や電解質異常を起こします。その際に、特に小児や高齢者に対しては、症状が改善するまで、一時的に手足の細い静脈から点滴を行うことがあります。また手術や抗癌剤投与、難病などのために、長期間食事が摂れない場合には、中心静脈という太い静脈にカテーテルを挿入して、高カロリーの点滴を行うこともあります。
終末期医療において、脱水や電解質異常、長期間食事を摂れないという状況は、ほとんどの場合該当します。しかし点滴を行うことは、あまりお勧めしないことが多いです。
まず老衰状態の場合では、食欲の低下や飲み込む力の低下のため、老衰の進行と共に食事や水分摂取量が少なくなっていきます。さらに胃腸から水分や栄養を吸収する能力も低下してくるため、死期が近づくとより一層、脱水や電解質異常、低栄養状態となっていきます。低栄養状態となると、血液中の蛋白質が低下します。血液中の蛋白質は、血管内の水分を血管内に引き付けて留めておく働きをします。そのため老衰状態が進行してくると、本来血管内にあるべき水分が血管外に出てしまい、脱水なのに胸水や腹水、むくみが見られる状態となります。もしこの状況で点滴を行い、一時的に血管内に水分を入れたとしても、血管外に水分が出てしまい、更に胸水や腹水、むくみが増えて、息苦しくなったり動けなくなったりすることをよく経験します。
次に悪性腫瘍の終末期の場合では、低栄養状態となっていなくても、癌自体が身体の中に炎症を起こすことで、その炎症に血管内の水分が引き寄せられて、胸水や腹水、むくみなどの原因となります。そのため悪性腫瘍の終末期の状態においても、過剰な点滴は息苦しさの原因となり、体重増加によって動きにくくなり転倒する原因にもなり得ます。
特に老衰や悪性腫瘍により死期が近づいてくると、点滴を行っていなければ脱水が進行していきます。脱水が進行すると、意識状態がもうろうとなっていきます。ご家族としては患者さんがそのような状態だと苦しんでいるように見えますが、実は患者さんからすると少しもうろうとなっている方が、苦痛や死への恐怖を感じにくくなっていると考えられています。
以上のような理由から、終末期医療における必要以上の点滴は、むしろ患者さんを苦しめることがあるため、あまりお勧めはしておりません。何より点滴をするために何度も針を刺すのは痛いですよね。

  2022/02/08   M I
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