私は数年前から、地域で行き場を失った猫たちを保護し譲渡する活動に取り組んでいます。活動を始めたきっかけは、自宅の敷地内で痩せた野良猫を見つけたことでした。痩せてボロボロなのに人間に縋ってきたあの時、もし見過ごしていたら、その命は誰の目にも止まらないまま確実に失われていたでしょう。その猫を保護して医療にかけましたが、すでに糖尿病を患っていて助けることは叶いませんでした。家に入れた時の安心した表情が今も目に焼き付いています。「こんな辛いことはもう無くしたい」という気持ちが、私を保護活動へと駆り立てました。
環境省の統計によると、令和5年度の殺処分数は9,017頭(犬:2,118頭、猫:6,899頭)。この合計数は統計開始以来、過去最少ということですが、猫の殺処分数は犬の3倍で、そのうちの6割が子猫と言われています。(※参考URL参照)
その背景には、飼い主による持ち込みや、多頭飼育崩壊、野良猫の無秩序な繁殖などがあります。餌だけを与え続けて避妊去勢をしていないため子猫が産まれ続ける現場や、引っ越しの際に置き去りにされた猫、高齢の飼い主が亡くなり行き場を失った猫のことをよく耳にするようになり、目の前にいるのに誰にも見てもらえない、そんな存在が多くいる現実を知った時、「何とかしなければ」という思いが強くなりました。
私たちが保護する猫は、それぞれ納得のいく事情や、やむを得ない事情を抱えた猫です。保護した猫は、すぐに動物病院で健康チェックを受け、必要に応じて治療やワクチン接種を行います。その後、シェルターや保護主、または預かりボランティアの家で暮らしながら、里親さんを探していきます。病気や障害を抱えた子も多く、医療費は大きな負担となります。また、保護猫は人に慣れていないことも多いため、時間をかけて信頼関係を築く必要があります。夜中に授乳が必要な子猫の世話をしたり、なかなか里親が決まらないことも少なくありません。正直に言えば、活動を続けるのは楽ではないのです。
それでも、やめられない理由があります。保護当初は怯えて隅から出てこなかった猫が、数か月後には膝の上でゴロゴロと喉を鳴らしてくれる。それが1年かかろうが2年かかろうが、その変化を見た瞬間、すべての苦労が報われます。新しい家族に迎えられ、幸せそうに暮らしている姿を里親さんから報告していただくと、「やってきてよかった」と心から思えます。守られるべき命が安心して暮らせる場所を得ることほど、尊いことはありません。
保護活動は、特別な人だけができるものではありません。大切なのは、「自分にできることを無理なく続ける」ことです。例えば、SNSで保護猫の存在をシェアするだけでも大きな力になります。フードや毛布などの支援物資を送ってくださる方もいれば、医療費の一部を寄付してくださる方もいます。そしてもちろん、里親として新しい家族になってくださることも、かけがえのない支援です。
小さな行動の積み重ねが、多くの命を救います。一人では救えない命も、地域や社会の力が合わされば、きっと未来は変えられる。そう信じて、これからも活動を続けていきます。どうか皆さんも、ほんの少しでも関心を持ち、できることから関わっていただけたら嬉しいです。

一般社団法人オホーツクねこの会 理事 大沼 郁美 氏
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