グラ・コムペット広場は、毎月のように送られてくる読者からの要望により2003年8月号より連載がはじまりました。その時々の人気のペットの紹介や育て方、接し方などに触れながら続いてきました。 アース動物病院院長 高良広之先生による医療コラムは、2003年12月号より連載が始まりました。グラコムネットではペット医療コラムとかわいい自慢のペット達を紹介する「みんなのひろば」のコーナーがあります。ぜひ参加してくださいね。
ペット医療コラム Vol.56
犬のキシリトール中毒
歯に良いって思っていたのに
2月に入り、1年中で一番寒い時期ですがいかがお過ごしでしょうか。 道には雪山があり、見通しが悪いので交通事故が増える時期でもあります。動物たちの飛び出しにも気をつけてくださいね。
今回はキシリトールの事を書きたいと思います。というのも年末年始にかけてキシリトール入りの人用のガムを誤って食べてしまったり、人用のキシリトール入り歯磨き粉で長年歯磨きをしていたワンちゃんが来院され、中毒をおこすことがあるのですよと伝えたところ「知りませんでした。他の方にも伝えてください。」とのご意見を頂いたからです。 ご存知の通りキシリトールは甘味料として多く使われており、甘みがあるのにカロリーが少なく、虫歯の予防にもなるということでガムや歯磨き粉に「キシリトール入り」がたくさん出回っています。
しかし犬は人とは違い、キシリトールによるインスリンの分泌が強烈に行われます。牛、ヤギ、ウサギもインスリンを分泌します。猫は分かっていません。インスリンが盛んに分泌されると低血糖を起こします。 低血糖になるとふらふらになり、痙攣や脳障害が残る事もあります。またキシリトールで肝障害が出る事もあります。場合によっては低血糖になる前に肝不全になることもあります。
2006年アメリカ獣医学協会とアメリカ動物中毒センターからの報告では「体重10kgの犬が1gのキシリトールを消費した場合でも治療の必要がある」とあります。ある市販されている人用のガムには1粒あたり0.6gのキシリトールが含まれています。2kgのチワワが誤って2粒食べると中毒を起こしてしまう可能性があります。いつでもあり得ることだと思いませんか。 アメリカの報告では誤って人用のクッキーやガムなどを多量に食べた犬8頭中6頭が死亡または安楽死されたそうです。犬が届く場所に人用のお菓子は絶対におかない方が良いでしょう。
またキシリトールは虫歯予防になるということでも添加されていますが、犬はほとんど虫歯にはなりませんので、キシリトールの必要性はあまりありません。 最近では動物用のケーキやお菓子が増えています。現段階では法律上の規制はなく、業者の自主規制のみなので、飼い主さんは充分に成分表を見ておやつを与えるようにした方が良いでしょう。
アドバイス:アース動物病院 院長 高良広之氏
北見市北進町4丁目3番43
TEL0157-22-6367
グラコム2009年2月号掲載