グラコムネット(北見市の無料宅配情報誌サイト)

ペット保険の一括資料請求【無料】

ペット広場タイトル

グラ・コムペット広場は、毎月のように送られてくる読者からの要望により2003年8月号より連載がはじまりました。その時々の人気のペットの紹介や育て方、接し方などに触れながら続いてきました。
アース動物病院院長 高良広之先生による医療コラムは、2003年12月号より連載が始まりました。グラコムネットではペット医療コラムとかわいい自慢のペット達を紹介する「みんなのひろば」のコーナーがあります。ぜひ参加してくださいね。

ペット医療コラム Vol.174

股関節脱臼

〜なぜか増えています〜

 ちょうど1年前、北海道で最初の新型コロナウイルス感染症の患者さんが確認されました。今は第3波の真っ最中です。基本的な感染対策を徹底しながら、収束に向けて頑張っていきましょう。

 今回は股関節脱臼のお話をします。本来であればあまり季節性のない疾患です。しかし昨年末から、立て続けに来院されています。そこで病気の説明、治療法、リハビリについて少しだけ説明します。

 太ももの付け根の股関節は、臼と杵の関係になっています。臼が骨盤の寛骨臼と呼ばれるくぼみで、杵が大腿骨にある大腿骨頭と呼ばれる出っ張りです。この杵である大腿骨頭が外れてしまった状態を股関節脱臼といいます。四つ足の動物では体重の約3割を支えてくれていますのでとても大切な関節になります。原因は落下や事故などによる外傷性の脱臼が一般的です。また、もともと股関節の緩みがあるような股関節形成不全や甲状腺機能低下症やクッシング症候群など、筋力の低下を起こすホルモン病などが隠れている場合は簡単な力でも脱臼が起きてしまいます。股関節の状況や経過、再脱臼の有無などにより治療法を決めていく必要があります。症状は通常は股関節の痛みや歩行異常、足をつけれないなどです。稀に猫では慢性的な脱臼で見た目には症状がない場合もあります。少しでも症状が認められたら動物病院へ受診されることをお勧めします。病院では歩行検査や整形学的検査にて股関節の疼痛の確認したあとレントゲン検査にて脱臼の有無や方向、関節の状況(骨折がないか、変形性関節炎がないか)を調べます。さらに詳しく調べる必要がある場合はCT検査も依頼する場合もあります。治療法は手術しないで脱臼を整復する(非観血的方法)と外科手術に分けられます。関節の状況を診て飼い主さんと相談のうえ判断します。@非観血的整復:脱臼の方向によりやり方は異なりますが、脱臼を整復したのちに包帯をしばらく巻き、再脱臼を防ぎます。整復処置には短時間の麻酔が必要ですし、約2週間の固定と絶対安静が必要です。A外科治療:非観血的整復では脱臼を戻すのが難しい場合、再脱臼を起こしてしまう場合、変形性関節炎や骨折などを伴う場合などは手術による治療が必要となります。外科手術を大きく分けると温存的手術と救済的手術に分けられます。手術により関節を戻したのち、関節は温存したまま再脱臼を起こさないように固定をするのが温存手術。股関節の形状がもともと脱臼を起こしやすいものであったり、ひどい関節炎が起こっていたりしている場合、軽い衝撃で再脱臼を起こす可能性が高いので、股関節を温存しない手術(大腿骨頭切除術や股関節全置換術)を選択します。高度な技術と設備が必要なため整形の専門医にご紹介する場合もあります。

 犬の股関節脱臼を予防するには、股関節に大きな力がかかることを防ぐために、室内ではフローリングの床にマットを敷いたり、ソファに段差をつけてあげるといいでしょう。また整復後にサポーターをつけたり、リハビリもとても大切です。回復には長期にわたる場合もあります。予防と早めの対処をお願いします。

アドバイス:アース動物病院 院長 高良広之氏
北見市北進町4丁目3番43
TEL0157-22-6367
グラコム2021年2月号掲載

前へ   次へ