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グラ・コムペット広場は、毎月のように送られてくる読者からの要望により2003年8月号より連載がはじまりました。その時々の人気のペットの紹介や育て方、接し方などに触れながら続いてきました。
アース動物病院院長 高良広之先生による医療コラムは、2003年12月号より連載が始まりました。グラコムネットではペット医療コラムとかわいい自慢のペット達を紹介する「みんなのひろば」のコーナーがあります。ぜひ参加してくださいね。

ペット医療コラム Vol.168

ねずみ年に考える

〜エキノコックス症〜

今年はねずみ年です。ねずみで頭に浮かぶのはやはり「エキノコックス症」。本コラムでは8年前のVol.95に1度書いていますが、昨年新たな情報がありましたので再度お伝えします。

まずはエキノコックス症について簡単な説明をします。北海道には多包条虫という種類のエキノコックスがいます。エキノコックスが寄生しているキツネ(またはイヌ)のお腹の中には成虫(親虫)がいて、成熟すると卵を作ります。この卵がキツネ(イヌ)の糞と一緒に自然界に排出されます。これがネズミの口から入ると体内で孵化した幼虫が肝臓などに病巣を作り、それがどんどん広がっていきます。ネズミの体内では幼虫でとどまり、成虫になることはありませんが、感染ネズミをキツネ(イヌ)が食べることによって、取り込まれた幼虫がキツネ(イヌ)のお腹の中で成虫となり、感染サイクルが回ります。この感染サイクルが自然界でのみ起こっている限りは、それ程問題にはなりませんが、何らかの理由で卵がヒトの口から入ってしまうとネズミと同じように人も感染してしまいます。ヒトが感染した場合をエキノコックス症と呼び、肝臓や肺、そして稀に脳や骨などに袋状の病巣ができます。その進行はゆっくりで、個人差もありますが、発症までに十数年はかかると言われています。有効な治療法はなく、外科的切除を行うしかありません。もし放っておくと時には死に至ります。今でも全道で20名前後の方が確認されており、決して過去の病気ではありません。

同じイヌ科の動物であるイヌへはキツネから直接感染することはありません。しかしペット犬の場合、ヒトとの接触の度合いは自然界のキツネに比べ遙かに大きいので、飼い主であるヒトへの感染リスクは高まります。2009年北海道小動物獣医師会で行なった全道調査によると飼い犬の感染率は0.4%でした。しかし昨年の学会で、道東のある地域で調査された飼い犬の感染率は7.1%と報告されました。飼育環境にもよりますが、高感染率だったことで波紋が広がりました。また飼い主へのアンケート調査では、感染していたイヌの多くは散歩中、放されるようでした。普段すばしっこいネズミもエキノコックスに感染すると動きが鈍くなり、簡単にイヌに捕食されてしまいます。イヌは感染してもほとんど症状はありませんが、散歩をよくするイヌは定期的な駆虫をお勧めします。ヒトが感染するのはキツネやイヌから糞と共に排出された卵が口から入った時のみで(1)沢水や山菜などを生で口にしない(2)外から帰ったらよく手洗いをする(3)イヌは放し飼いしない(4)キツネを餌付けたりしてヒトの生活圏に近づけない(5)キツネと接触する機会を持たないなどを心掛けていれば、基本的には安心です。

北海道全体で今一度エキノコックスのことを考え、撲滅し、過去の病気になってほしいものです。

                  

参照:北海道衛生研究所HP資料

アドバイス:アース動物病院 院長 高良広之氏
北見市北進町4丁目3番43
TEL0157-22-6367
グラコム2020年2月号掲載

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