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グラ・コムペット広場は、毎月のように送られてくる読者からの要望により2003年8月号より連載がはじまりました。その時々の人気のペットの紹介や育て方、接し方などに触れながら続いてきました。
アース動物病院院長 高良広之先生による医療コラムは、2003年12月号より連載が始まりました。グラコムネットではペット医療コラムとかわいい自慢のペット達を紹介する「みんなのひろば」のコーナーがあります。ぜひ参加してくださいね。

ペット医療コラム Vol.118

うんちが出づらくないですか

〜会陰ヘルニアについて〜

8月になりました。今年は比較的暑い夏を迎えてますね。お出かけの際は車に動物たちを置きっぱなしにしたり、日陰のない外に出しっぱなしにしないでくださいよ。熱射病になって来院される頻度が高いのが8月です。特に高齢の動物は気をつけて下さい

今回は「会陰ヘルニア」について書きます。会陰(えいん)とは外陰部と肛門の間をさします。この部分の筋肉(肛門挙筋、尾骨筋、外肛門括約筋など)が萎縮して、直腸や腹腔内臓器を押さえることが出来なくなり、直腸に余分な部屋(直腸憩室)が出来たり、腹腔臓器が会陰部の皮下に突出してしまう状態を会陰ヘルニアと言います。本来直腸をまっすぐ出てくる糞便が憩室に溜まり、便秘や排便困難になります。また、本来は腹腔内に納まっている膀胱や前立腺、腸も会陰部に出てきますが、その部分を痛がったり、色調が変わってきていたら緊急状態が考えられます。泌尿器が反転してますので尿道が締められ排尿困難に陥り、腎後性の腎不全に進行している場合があります。また、腸が狭いヘルニア孔を通って戻れなくなり(嵌頓かんとん)、血行障害で腸壊死になります。いずれも命が奪われる場合もあります。飼主さんは肛門の近くが急にふくらみ、排便困難や息み、排便痛などで気づかれることが多いでしょう。

会陰の原因は男性ホルモンの影響や腹圧の上昇や筋力の低下を引き起すような病気が関与したり、活発に吠えることによる腹圧の上昇という性格的な問題や好発犬種もいるようですので遺伝的問題もあるようですが、不明な点も多いようです。

動物病院に来院されるとまず問診します。いつごろから排便困難になっているのか、排便姿勢、便の正常を聞きます。そして腫れている部分の緊張感や疼痛の有無、色調を観察し、肛門に指を入れて、憩室の有無と程度、ヘルニア内容物の確認、残存筋肉量の確認をします。外側からエコーをあてて膀胱・前立腺の有無を確かめます。膀胱が充満している場合は針を刺し、尿を出して膀胱の血行障害を防ぎます。その後、血液検査などを行います。治療は外科手術が主体です。基本は会陰部の骨盤隔膜を縫い縮めますが、筋肉の残存量によってはメッシュを利用したり、骨盤の内側の筋肉を利用したり、お腹を開けて、逸脱している直腸や前立腺を腹壁に固定したりします。そして忘れてはいけないのが去勢していない場合、必ず去勢手術を行ないます。ここまでやっても再発率は3割とも言われています

会陰ヘルニアは、発症するととても大変です。ぜひとも予防してあげてください。去勢手術を行うことで発生率は低下します。また、無駄吠えが多いと腹圧が高くなってくるため、むだ吠えをさせないようにしつけることも重要です。肥満していると内臓脂肪が増えるだけでなく体全体の筋力が低下しやすくなるため、肥満をさせないといったことも予防につながります。

アドバイス:アース動物病院 院長 高良広之氏
北見市北進町4丁目3番43
TEL0157-22-6367
グラコム2014年8月号掲載

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