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グラ・コムペット広場は、毎月のように送られてくる読者からの要望により2003年8月号より連載がはじまりました。その時々の人気のペットの紹介や育て方、接し方などに触れながら続いてきました。
アース動物病院院長 高良広之先生による医療コラムは、2003年12月号より連載が始まりました。グラコムネットではペット医療コラムとかわいい自慢のペット達を紹介する「みんなのひろば」のコーナーがあります。ぜひ参加してくださいね。

ペット医療コラム Vol.117

獣医分野での再生医療

〜目を見張る進歩〜

7月に入りました。今年は例年より曇りや雨が多い予報のようですが、晴れ間をぬって、短い夏おおいに楽しみましょう。

この春、獣医再生医療研究会が学会に移行したということで、大阪まで行ってきました。この分野、本やセミナーでは情報を仕入れて、実習も受けていましたが、実際には手をつけずにいました。今回の学会では新しい情報が得られましたので、かい摘んでお話ししましょう。

再生医療は京大の山中教授がiPS細胞でノーベル賞を受賞して以来、脚光を浴びています。獣医の分野でも、犬と猫ではiPS細胞作成に成功しているようです。特に猫は、日本が唯一確立している技術だそうです。まだ基礎的研究段階ですので、臨床応用は随分先のようです。一方、ちょっと聞いたことのない言葉かも知れませんが、間葉系幹細胞(MSC)を利用した細胞療法は臨床応用されつつあります。間葉系幹細胞は、骨の基の細胞、脂肪細胞、筋肉細胞、軟骨細胞などの間葉系細胞に分化し、あわせて免疫抑制作用を持っていることから、再生医療などへの臨床応用が期待されています。実際に骨の損傷、変形性関節症、乳房切除後の脂肪組織再建術に利用されています。また、間葉系幹細胞は胚葉の枠を超えて神経細胞(外胚葉)や肝臓細胞(内胚葉)などにも分化する能力があり、さまざまな応用が期待されています。北海道内では、札幌医大が脳梗塞の治療に骨髄間葉系幹細胞を用いた臨床試験を実施中で、民間企業が新薬として商品化する予定です。また、海外ではアメリカや韓国ではすでに治療薬として販売されています。一方獣医分野では、間葉系幹細胞の臨床応用は少しずつ進んでいました。多くは難治性の骨折や椎間板ヘルニアなどの外科的療法への応用として使われてきました。ここまでが今まで見聞きしてきた情報でした。今回この学会で、間葉系幹細胞を難治性の内科疾患に対する治療として紹介されました。ヒト医療分野でも4年ほど前から臨床試験の結果が出始めているという非常に新しい治療法です。長野県の動物病院の発表でしたが、自己免疫疾患、関節リュウマチ、多発性筋炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、ドライアイなどへの実施状況が発表されました。間葉系幹細胞の内科疾患への応用は全く不勉強だったため、驚きでした。患者さんからは、その治療効果から大変好評いただいているようでした。

学会会長や発表者もおっしゃっていましたが、再生医療や細胞を用いた免疫療法が「怪しい治療」に終わらないように、獣医分野でもしっかりと基礎研究をし、倫理も踏まえた臨床応用がなされ、いつかこの地域でも利用できるようになることを願っています。

学会参加者の熱い思いを感じた大阪の春でした。

アドバイス:アース動物病院 院長 高良広之氏
北見市北進町4丁目3番43
TEL0157-22-6367
グラコム2014年7月号掲載

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