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グラ・コムペット広場は、毎月のように送られてくる読者からの要望により2003年8月号より連載がはじまりました。その時々の人気のペットの紹介や育て方、接し方などに触れながら続いてきました。
アース動物病院院長 高良広之先生による医療コラムは、2003年12月号より連載が始まりました。グラコムネットではペット医療コラムとかわいい自慢のペット達を紹介する「みんなのひろば」のコーナーがあります。ぜひ参加してくださいね。

ペット医療コラム Vol.162

小型犬の前腕骨骨折

 

 寒い毎日が続いていますが、皆様お元気にお過ごしでしょうか。ここ数年、小型犬の骨折が多くなっています。その中で最も多い前腕骨の骨折について書きます。

前腕骨とは前足の肘と手首の間の骨です。橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)で構成されています。多くの場合、橈骨と尺骨の2本とも折れる場合が多いです。若木骨折や骨折のズレがない場合は、ギブスでの対応が可能ですが、基本的には手術を行います。しかし小型犬の橈骨の幅は3〜5mm、厚さは2〜3mm程度しかなく、特殊な器具と技術が必要です。成長期なのか成犬なのかによって、また骨折の部位によって、手術方法は変わります。成長期の場合は骨の再生スピードが早いので、その再生能力を邪魔しないような方法を考えていきます。しっかりとした固定をするためにはプレートによる固定をしたいのですが、プレート固定が不可能なほど骨径が狭まかったり、スクリューを入れる部位が成長線にかかる場合はピンによる固定をする場合があります。成犬の場合、骨がくっ付くのに時間がかかりますので、基本はプレートによるしっかりとした固定を行います。ただし骨折部位があまりにも手首に近い場合はピンを用いる場合があります。また骨折した骨が皮膚から飛び出ている場合(解放骨折)は感染の心配がありますので、皮膚の外から骨を固定する創外固定を行います。さらに小型犬の前腕骨の骨折の場合、手術の成功率を高めるために再生力が強い上腕骨の海綿骨を採取し、骨折部位に移植します。筋肉も薄く、骨も薄いのでとても気を使う場所なのです。

手術が終わった後は、手首の関節と肘の関節までキャスティング(ギブス)を行います。術後数日間は腫れの管理と疼痛管理のため入院が必要です。そして術後1ヶ月後のレントゲン検査で骨が治る方向に向かっているのか判断します。経過が良好な場合は、ギブスを取り、脚を使うようにします。さらに1ヶ月後レントゲンを撮ります。その子によって経過が違いますが、術後3〜4ヶ月後にはスクリュー、ピンを取ります。さらに2ヶ月程度でプレートも外します。最近では固定器具(プレート、スクリュー)が改良されていますので、より短い期間でプレートは外せるようになっています

予防と術後の注意点ですが、動きが激しい割に骨質の華奢な小型犬です。再度骨折する場合があります。高いところに上がらせない、ジャンプを制限する、アジリティや激しい遊びはしないなどの注意が必要です。また滑らないフロアーにするなどの工夫もしてみてください。

犬種でいうとトイ・プードルが最も多く、パピオン、ポメラニアンと続きます。丈夫でしなやかな骨になるには、適度な日光と運動が必要です。逆にカルシウムをたくさんあげることはよろしくありません。皮膚の障害やホルモンバランスを崩すことにつながります。寒い時期ですが散歩をしていただくのはとてもいいことなのです。

アドバイス:アース動物病院 院長 高良広之氏
北見市北進町4丁目3番43
TEL0157-22-6367
グラコム2019年2月号掲載

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