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グラ・コムペット広場は、毎月のように送られてくる読者からの要望により2003年8月号より連載がはじまりました。その時々の人気のペットの紹介や育て方、接し方などに触れながら続いてきました。 アース動物病院院長 高良広之先生による医療コラムは、2003年12月号より連載が始まりました。グラコムネットではペット医療コラムとかわいい自慢のペット達を紹介する「みんなのひろば」のコーナーがあります。ぜひ参加してくださいね。

ペット医療コラム Vol.70

なかなか治らない嘔吐と下痢

〜炎症性腸疾患(IBD)かも〜

2ヶ月ぶりにグラコムさんに書きます。5月号はたんの動物病院の荒井先生に代打をお願いし、『破折歯』について書いていただきました。 皆さん、ペットには歯にやさしいものを与えてくださいよ。 今回は、なかなか治らない嘔吐と下痢、中でも炎症性腸疾患(IBD)について書きます。

最近、私の病院でも患者さんが増えているように思われます。日頃下痢や嘔吐で来られる動物たちは多いですが、一般的な下痢止めや吐気止め、絶食などで治ることがほとんどです。 しかし、これらの治療に反応しなかったり、一時的に反応しても薬を休むと再発を繰り返したりする病気があります。 その難治性の病気の一つにIBDがあります。

IBDは小腸あるいは大腸の粘膜固有層に炎症性細胞浸潤がみられる原因不明の慢性腸障害です。3週間以上持続する嘔吐や下痢、対症療法で改善しない、病理検査で炎症細胞浸潤がみられるなどの基準があります。 これらを確かめるためには血液検査、超音波検査、内視鏡検査、お腹を開けた切除生検などを行います。 治療は食事療法と薬物療法の両面から行います。 食事療法は、IBDでは正常な腸内細菌や食物抗原に対する免疫学的機序が破綻しているという仮説から行います。抗アレルギーの処方食をあげていただきます。 軽症の場合は食事療法だけで改善する場合もありますが、多くは薬物療法が必要です。プレドニゾロン、抗生剤、免疫抑制剤などを症状にあわせて使って行きます。 反応はさまざまです。難治性の場合は数ケ月単位の治療となりますし、飼主さんの負担もたいへんです。

IBDになりやすい犬種は、アイリッシュセッター(この犬種に限っては遺伝素因が確認されています)、 ジャーマンシェパード、ヨークシャテリア、コッカースパニエル、ダルメシアン、柴犬などで、食物有害反応を呈しやすい犬種としてラブラドールレトリーバー、ゴールデンレトリーバー、プードルなどがいます。 雌雄の差はありません。診断時の平均年齢は約6歳で、若い時から兆候を見せていることが多いようです。

ヒトでも日本でIBDが増加傾向にあるようです。 ヒトでは難病に指定され、潰瘍性大腸炎とクローン病とがあり、原因はやはり不明です。 IBDを引き起こす要因は、一にリノール酸と「無線維高脂肪」を過剰に摂取する洋風な食習慣、二にストレス過多の生活があるそうです。 犬や猫にIBDが増えて来たのも、食事やストレスが引き金になっているかもしれません。 そうだとしたら、動物たちは私たち日本人に注意を喚起しているのかもしれませんね。

アドバイス:アース動物病院 院長 高良広之氏
北見市北進町4丁目3番43
TEL0157-22-6367
グラコム2010年6月号掲載

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