グラ・コムペット広場は、毎月のように送られてくる読者からの要望により2003年8月号より連載がはじまりました。その時々の人気のペットの紹介や育て方、接し方などに触れながら続いてきました。
アース動物病院院長 高良広之先生による医療コラムは、2003年12月号より連載が始まりました。グラコムネットではペット医療コラムとかわいい自慢のペット達を紹介する「みんなのひろば」のコーナーがあります。ぜひ参加してくださいね。
ペット医療コラム Vol.158
マダニに噛まれた愛犬の飼い主様へ
〜ダニ媒介性疾患について〜
新緑の季節となり、散歩やドッグランに出かけることが多くなった愛犬家の皆さま。ワンちゃんはマダニに咬まれていませんか? 以前(このコラムN0.58)ライム病について書きましたが、4月15日に北海道医師会と北海道獣医師会共同開催されたダニ媒介性脳炎の講演会を聞いてきましたので、そのことも含めてお話しします。
マダニは雪解けと共に活動します。多くは山にいますが、普通の散歩道や河川敷にもいます。高さ20cm前後の草むらにいることが多いです。ここで哺乳類が通るのを待っています。自然界ではネズミやキツネ、鹿などがよく咬まれます。そして血液を吸って成長します。もともと2mmほどで、よく見ないとわからないで程度です。血を吸うと大豆ぐらいの大きさになります。「知らないうちに頭にイボができたんですけど」と言われて病院に来られる方が多いです。大抵は1、2匹が目の周りや耳の後ろの皮膚に咬み付いている場合が多いのですが、なかには1頭の犬に80匹のマダニがついていたこともありました。 マダニは動物に食いつくと唾液からセメント様物質を出し、顎をしっかり固定してなかなか落ちない様にします。そして吸血して約1週間でお腹一杯になってその動物から離れます。そして脱皮をして次の動物が来るのを草むらで待っています。それを3回繰り返し、秋に産卵・孵化します。以前は春から夏にかけて注意が必要とお話ししましたが、秋まで注意が必要です。
吸血する際にマダニの唾液を通して病気が動物に移ります。以前お伝えしたライム病はボレリアという細菌が原因です。以前の調査では北見周辺で採取されたマダニの約8割にボレリアがいて、マダニに咬まれた犬の約7割が感染し、何らかの症状を約3割が出していました。ボレリアの場合、マダニに咬まれてから2日以内にマダニを取れば、感染しないと言われています。 一方今回講演会で聞いてきたダニ媒介性脳炎の原因はフラビウィルスで、咬まれた直後から感染すると言われています。しかもライム病には抗生物質が効きますが、フラビウィルスには抗生物質は効きません。感染しても犬は症状は出さないようですが、ヒトがマダニに咬まれフラビウィルスが感染し、発症すると治療が難しいのが現状のようです。今のところ北海道の道南地方でヒトの報告がありますが、オホーツク地域に感染したマダニがいるかははっきりしません。また、ここ数年西日本で発生している重症熱性血小板減少症候群SFTSもウィルスが原因です。
何より予防が大切です。草むらや山に行ったら、こまめなブラッシングをしてマダニを落とす、体を良く観察して、マダニを取り除く(難しい場合は動物病院でやってもらうのがいいでしょう)。事前にマダニ予防の飲み薬、ダニ取り首輪や点着液をつけてマダニが咬みつくのを防ぐなどですが、獣医師によく相談して、選ぶといいでしょう。そしてヒトも草むらや山に入る時は肌を隠すことができる服装をし、服にマダニの忌避剤をつけた方がいいでしょう。帰宅後も家に入る前に入念にチェックしてください。マダニをヒトが運び、愛犬を咬むことも多いです。気をつけましょう。
アドバイス:アース動物病院 院長 高良広之氏
北見市北進町4丁目3番43
TEL0157-22-6367
グラコム2018年6月号掲載