グラ・コムペット広場は、毎月のように送られてくる読者からの要望により2003年8月号より連載がはじまりました。その時々の人気のペットの紹介や育て方、接し方などに触れながら続いてきました。
アース動物病院院長 高良広之先生による医療コラムは、2003年12月号より連載が始まりました。グラコムネットではペット医療コラムとかわいい自慢のペット達を紹介する「みんなのひろば」のコーナーがあります。ぜひ参加してくださいね。
ペット医療コラム Vol.116
犬の舌の色、紫色になっていませんか
〜チアノーゼ?〜
6月はリラ冷えを超えて、新緑が萌える時期になりますね。この時期は体調を崩す方も多いとか。みなさまもくれぐれも気をつけてください。
今回は呼吸困難に陥っているかどうかの指標になるチアノーゼについて書きます。正常な舌の色はピンクから赤色ですが、呼吸困難の動物では、舌の色が紫色からやや黒色になっています。この状態がチアノーゼです。肺でのガス交換が著しく阻害されることによって動脈中の赤血球内ヘモグロビンに酸素が結合されていないことを意味します。生命に関わる低酸素状態ですので、緊急処置が必要になります。
チアノーゼの原因は@気道閉塞(咽頭、喉頭、気管の閉塞):昨年の10月に書いた短頭種気道症候群や気道内異物、喉頭腫瘍、気管虚脱、喉頭麻痺なども気道閉塞の原因になりますが、ワクチン接種後などにおこるアナフラキシーショック、熱中症による咽頭や喉頭の浮腫も比較的多く見られる原因です。A肺疾患:心臓病などから起こる肺水腫、肺血管塞栓症、肺出血、慢性肺疾患の末期など肺自体のガス交換機能が低下している場合。B喘息発作:多くは一過性ですが気管支が閉塞して呼吸ができなくなります。C先天性心疾患:ファロー四徴症、右→左シャントを示す心室中隔欠損・心房中隔欠損・動脈管開存症など。Dヘモグロビンの異常などです。
症状は呼吸困難ですが、姿勢によってその重症度がある程度判断できます。多くは犬座姿勢(おすわりの姿勢)となり、頚を伸ばして動けなくなります。ひどくなると起立できず横になってしまいます。異常呼吸音の種類で異常が起こっている場所を推定できるとも言われています。ズーズー音は鼻咽頭、ガーガーやヒーヒー音は喉頭、ヒューヒュー音は気管や気管支の閉塞が疑われ、ガチョウの鳴き声のような音は気管虚脱の可能性があると言われています。犬は呼吸を吐くときに体温を放熱しているので、気道閉塞があると体温が上昇していき、それがさらに呼吸数を増加させ、気道粘膜の炎症を悪化させ、気道がほぼ完全に閉塞してしまいます。従って治療はまず、酸素投与と体温管理が最重要となります。呼吸がある程度安定しないと、レントゲン検査などの原因追求に進めません。また、ストレスも呼吸数を増加させますので、動物を少しでも落ち着かせるために、飼主さんは優しい声をかけてあげてください。しかし、飼主さんがいることで酸素室から出せ出せと暴れる場合もありますので、預かる場合もあります。通常は30分ぐらいで落ち着きます。それから原因追及していきますが、そこまでたどり着けない場合もあることを理解しておくことも重要です。
これから暑くなってきますが、ワンちゃんたちのふだんの呼吸数をチェックしておきましょう。1分間に40回以上が持続しているようでしたら要注意です。チアノーゼになる前に検査をしておくことをお勧めします。(参考:インターズー社、as)
アドバイス:アース動物病院 院長 高良広之氏
北見市北進町4丁目3番43
TEL0157-22-6367
グラコム2014年6月号掲載