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第49話/江戸川柳で【消渇(しょうかち)】は膀胱炎のこと


数世紀も前、医学が科学的な根拠に基づかず、呪術や民間伝承の力で治療していた頃でも、現在と同じ病気は存在しました。
例えば、膀胱炎です。女性にとって極めてありふれた病気ですが、「消渇(しょうかち)の官女、はかまがじれったい」という江戸川柳に詠われているように、江戸時代にも膀胱炎は存在しました。「消渇」という言葉は、江戸時代、女性の膀胱炎や尿道炎を指す言葉で、宮仕えの女性が膀胱炎にかかって頻尿になり、はかまをはずすのも邪魔でもどかしいという姿を詠ったものです。
さて、膀胱炎は、大腸菌などの一般細菌が尿道から膀胱に侵入し、膀胱の粘膜に感染し炎症を起こす病気です。症状は、排尿時の痛み、頻尿、残尿感が典型的なもので、時に血尿が認められます。診断は、患者さんの尿を遠心分離して、尿中の細胞を顕微鏡で観察します。白血球や細菌が多数認められると、急性細菌性膀胱炎と診断します。
ところで、尿検査で異常が見つからない場合は大問題です。慢性膀胱炎、尿路結石、尿路腫瘍などを考えなければなりませんので、超音波やレントゲン検査、時には膀胱鏡検査などが専門的な検査が必要になる場合があります。


また、男性の場合は、膀胱炎になることが極めて稀ですから、もしも膀胱炎になった時は結石や腫瘍などが原因になっていることがあるので、検査は必須です。
治療は、抗菌剤を服用すれば数日で完治します。通常は熱を出すことはありません。抗菌剤のない江戸時代では、「消渇の灸は頭巾のとこにすえ」と川柳に読まれているように、へそ下のツボに灸をすえていました。また、おそらく漢方薬でも膀胱炎を治していたのでしょう。しかし、これらの効果は十分ではなかったと想像しています。
もしも、膀胱炎の患者が38度以上の高熱になった場合、膀胱内の細菌が腎臓まで上って腎盂腎炎を発症したと考えられます。この場合、おおくは入院して抗菌剤の点滴が必要になります。稀なことですが、膀胱炎から腎盂腎炎、それに尿管結石が合併した場合、致命的な敗血症という重症の感染症を引き起こすことがあります。ですから、ありふれた膀胱炎という病気でも、時には馬鹿に出来ないものなのです。
2007年09月06日(木) No.265 (古屋先生(泌尿器科)のコラム〜ドクトル・フルヤの知って得する泌尿器科講座〜)

ソフトサイン/言葉の発達3


「うちの子、ことばが遅いような気がして…」という1〜2歳代の子供を持つ親からの相談をよく受けます。
言葉の発達は個人差がとても大きい分野です。発語の標準的な発達を表に示します。発達の遅れを問題にする..
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2007年09月06日(木) No.264 (秋山先生(小児科)のコラム)

女性と漢方(36)アトピー性皮膚炎を漢方薬で治す(1)


『28歳Sさん。2歳からアトピー性皮膚炎で26年間悩まされてきた女性で、いくつもの皮膚科を渡り歩き、いろいろな民間療法も試してみましたが、満足のいく結果は得られなかったようです。学生時代は比較的よかったのですが、働き始めてここ数年間は悪化して、体中が痒くて眠れないとの事。』


Sさんの皮膚は以前はジクジクしていつも顔にはかさぶたができていて、ステロイド軟膏を使うようになってから治まるようになったものの、今度はカサカサになってしまいました。つまり、元々はジクジクしてかさぶたが出来やすく、皮膚が赤く熱感をもつタイプのようでした。ステロイド軟膏を使っていると本来の皮膚の状態がわからなくなってしまうので、このように使う前の状態を聞くのは漢方薬を選ぶときにはとても大事な情報になります。
Sさんには、ジクジクをとるために『消風散(ショウフウサン)』、熱を冷ますために『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』を合わせて処方しました。この薬を飲んで2週間で何となくジクジク感は無くなってきたものの効果がはっきり出てきたのは約2ヶ月後でした。Sさん曰く「先月からステロイド軟膏を止めているんです。最近は表面に自分の皮膚ができてきた感じがします。
お風呂にはいるとまだ真っ赤になりますけど、ポロポロと皮がむけることが無くなって、痒み止めも使わなくてすんでいます。」との事。
保湿のために使っていたワセリン軟膏は半年で不要になり、夏場に汗で少し痒みが出たものの、十ヶ月で目の周りに軽い色素沈着を残すだけに改善しました。仕上げには体力を補う『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』という薬に変えて、半年後にはすべての薬を中止しました。
「ジクジクタイプ」と「カサカサタイプ」では、漢方薬の処方も変わります。Sさんは前者のタイプで湿気の多い夏場には悪化することが多いようです。今のところSさんは来院してないですが、今年の夏はうまくしのげたのでしょうか?
2007年09月06日(木) No.262 (山内先生(産婦人科)のコラム)

食物から作られた医薬品(1)


体に良い薬効のある食物は昔から知られており、中国や日本ではそれを利用して漢方薬などが作られました。現代でも食物成分などから作られた医薬品が医療現場で活躍しています。今回はそのいくつかを紹介します。
風邪には「卵酒」という民間療法がありますが、じつは風邪薬の成分で塩化リゾチームと言う言葉を聞いたことはありませんか?
この塩化リゾチームは卵の白身に含まれる成分で、この塩化リゾチームには抗炎症作用、出血抑制作用、喀痰喀出作用、膿粘液分解作用、組織修復作用などがあります。塩化リゾチームは消炎酵素剤として慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、小手術時の出血、皮膚潰瘍、慢性結膜炎などの治療に使われています。一般薬には炎症や痛みを抑えるために、風邪薬や目薬の中にも含まれています。
しかし、卵の成分と言うことで卵アレルギーのある方は使うことが出来ないので、その旨を必ず薬剤師に話して十分注意してください。


グリチルリチンという甘味料は甘さが砂糖の数十倍から数百倍とも言われるほど強いのですが、この甘味料は舌に触ってから味を感じるのに少し時間がかかるため、通常は砂糖と合わせて醤油等に使われています。この成分は甘草よばれるマメ科のウラルカンゾウの根に含まれていて、漢方薬にも良く配合されています。
(葛根湯など)
グリチルリチンは炎症を鎮める作用があり、副腎皮質ホルモンに似ていて、湿疹や肝臓疾患、アレルギーの治療に使われることがあります。次回はイワシ、さんまやハーブのカモミールから作られた薬を紹介する予定です。
2007年09月06日(木) No.261 (原口先生(薬剤師)のコラム)