タイトル

不眠症と薬物治療4


 睡眠障害が疑われたときにお医者さんに伝えるべきチェック事項としては

●不眠症状
 入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒の有無。「寝付くのに何分以上」「目覚めが何回以上」などの数値基準はなく、眠れなくて苦痛や不安があればアリとする。子どもの場合は就床抵抗や一人で寝るのを怖がるという行動として表れることがあります。



●過眠症状
 眠気の有無とその性状。慢性的に持続する眠気(睡眠不足や睡眠時無呼吸症候群など)。突発的に出現する強烈な眠気(ナルコレプシー)

●睡眠時間帯の異常
 極端な遅寝や早寝、昼夜逆転、日々後方にずれ込んでいく睡眠時間帯、不規則で断片的な睡眠時間帯、週末の極端な寝だめなど

●睡眠中の異常現象
 呼吸異常(いびき、息こらえ、10秒以上の呼吸停止)、異常感覚(四肢などのむずむず感、ほてり、いらいら、虫が這う、電気が走るなど多彩)、不随意運動(こむら返り、痙攣)、睡眠中の異常行動(徘徊、激しい手足の動き、絶叫、大きな寝言など)、自律神経症状・その他(動悸、頻拍、パニック様症状、悪夢など)

 慢性的な不眠のある成人の約4割、慢性的な過眠(強い眠気)のある成人の約6割では、うつ病、気分障害、不安障害、アルコール依存など何らかの精神疾患が認められるという調査結果があるため、不眠や過眠など「何らかの睡眠問題」がある場合には、何度も簡単な問診を繰り返し聞かれることがあります。
2019年10月30日(水) No.927 (原口先生(薬剤師)のコラム)

不眠症と薬物治療3


 あるレストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群、むずむず脚症候群)の患者さんの例ですが、40代後半の女性で「更年期障害に伴う難治性の不眠」と言われ、自覚的には更年期になってから「体がほてって眠れない」との事でした。
 確かに更年期のホットフラッシュによる不眠症もあるのですが、ほてり症状の割に不眠が重症で、睡眠薬を服用すると逆に症状が悪化するという事もあり、さらによく聞いてみると、「ほてり」は全身に感じるが、下半身、特に足裏に強く、特に寝床に入るとひどくなるなどレストレスレッグス症候群の特徴があったようです。
 閉経による更年期障害もあったため、下半身のほてりをすっかりその症状だと思い込んでいたようです。


 レストレスレッグス症候群は、別名、むずむず脚症候群の名で知られている通り、「主に夕方以降、下肢に静臥していられないほど強い『むずむず』とした異常感覚が出現するため、入眠困難や中途覚醒などの不眠症状を呈する睡眠障害」となっています。ところが教科書通りに「むずむず」と表現してくれる患者は少なく、「痛がゆい」「突っ張る」「しびれる」「泡立つ」、またこの患者さんのように「ほてる」など表現はさまざまです。
 睡眠障害の中には呼吸異常の様にベッドパートナーでないと気づきにくい症状もあります。また極端な遅寝や早寝といった睡眠時間帯の異常が疑われる場合には、2週間程度、睡眠表を付けて「見える化」する必要があります。
 睡眠問題があったときに、はなから不眠症と決めつけず、可能性のある睡眠障害について順次スクリーニングすることが必要なので、かかりつけのお医者さんなどに詳しく状態を伝え把握してもらう様にしてください。
2019年09月25日(水) No.922 (原口先生(薬剤師)のコラム)

不眠症と薬物治療2


一般診療の中で遭遇する睡眠障害は睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)の分類で分けるとおおよそ80種類ほどあります。睡眠障害はその症状や病態からそれ自体、大きく7群に分類されます。
 最新の疾病及び関連保健問題の国際統計分類第11版(ICD-11)でも睡眠障害を新たな章として独立させる点で、ICD-11とICSD-3の分類はほぼ同一になります。 今回はその意味からもICSD-3(≒ICD-11)として表しています。


睡眠障害を呈する代表的な疾患
(1)不眠症…慢性不眠障害、短期不眠障害、その他の不眠障
(2)睡眠関連呼吸障害群…閉塞性睡眠時無呼吸障害、中枢性睡眠時無呼吸症候群、睡眠関連低換気障害など
(3)中枢性過眠症群…ナルコレプシータイプ、特発性過眠症、睡眠不足症候群など
(4)概日リズム睡眠・覚醒障害群…睡眠・覚醒相障害、不規則睡眠・覚醒リズム障害、交代勤務障害、時差障害など
(5)睡眠時随伴症群
・ノンレム睡眠随伴症…覚醒障害、錯乱性覚醒、睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症、睡眠関連摂食異常症
・レム睡眠随伴症…レム睡眠行動障害、反復性孤発性睡眠麻痺、悪夢障害
・その他の睡眠随伴症…頭蓋内爆発音症候群、睡眠関連幻覚、睡眠時遺尿症など
(6)睡眠関連運動障害群…レストレスレッグス症候群、周期性四肢運動障害、睡眠関連下肢こむらがえり、睡眠関連歯ぎしり、睡眠関連律動性運動障害など
(7)その他の睡眠障害…環境因性睡眠障害

 それぞれの睡眠障害には特有の治療法があり、全体を眺めると睡眠薬が有効なのは不眠症やその他のごく少数の睡眠障害のみです。
2019年08月28日(水) No.917 (原口先生(薬剤師)のコラム)

不眠症と薬物治療1


 今回から不眠症と薬物治療など、いろいろな関連性についてシリーズでお届けします。
 睡眠薬は最も処方率が高い薬の一つで、睡眠は、食事、運動と並び健康を支える3大要素の一つです。
 睡眠がしっかり取れれば風邪などはもちろん、他の病気も治りやすいことは皆さんにも経験があると思います。
 私が国立の精神・神経科専門病院に勤務していた頃に、お医者さんから聞いたのが、婦人科の先生が女性患者を診たら妊娠を疑えと言うのと同じ様に、不眠あり=不眠症ではないと思いなさいと言う事でした。
 成人の10%ほどが慢性不眠症に悩んでいますが、その原因の中で睡眠薬が第一選択肢になる不眠症の人は4分の1ほどで、残りはレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)、概日リズム睡眠・覚醒障害、睡眠時無呼吸症候群などその他の睡眠障害による不眠なのです。(これらは後日説明します。)


 例えば、高齢者を対象にした幾つかの調査では、不眠がある高齢者のうち30〜40%で睡眠時無呼吸症候群が見つかっています。睡眠時無呼吸症候群は日中の眠気が有名で、呼吸停止による動脈血酸素飽和度低下のために睡眠の質が著しく低下するため、不眠はほぼ必発です。この場合でも、睡眠薬を服用すればある程度効果がありますがベンゾジアゼピン系睡眠薬の持つ筋弛緩作用のために、無呼吸症状は逆に悪化することがあります。
 不眠があればと、ひとまず睡眠薬を希望する方も多いのではないでしょうか。しかし、中にはむしろ症状が悪化するケースも少なくなく、眠れなければ何でも睡眠薬と言う素人考えは要注意で本来しっかりとした鑑別診断が必要なのです。
2019年07月31日(水) No.912 (原口先生(薬剤師)のコラム)

“後発品は副作用が出るから嫌”という方の本音(後編)


 前編でも話した通り、ジェネリックの中の「AG」という商品は先発品と同一の原薬・添加物・製造方法によって作られているもので、錠剤に印刷する文字と値段だけが安くなっていてまったく中身が同じ物もあります。
 前にも話したことがありますが、ある先発薬が出た患者さんで「薬の副作用が出た!」と言われたことがありました。調べてみるとその薬が出たころから生活習慣、食習慣が変わって、その習慣をやめたら治った方がおられました。
 ある研究で先発品を強く希望し、後発品への変更を嫌う人のほんの一部には、ある属性を持っている人がいて、その1つが福祉医療などの公的補助を受けていて自己負担金のかからない人(または、一度負担しても医療費が戻ってくる人)。そしてもう1つは、「俺に安物を使うな!」という高級志向の人です。誤解のないよう申し添えますが、薬局で患者さんと接する中で時々感じたことであり、先発品希望の方の全てが当てはまるわけではありません。あくまで、中にはそう思える人が一定の割合でいます。一般的な感覚からすれば、窓口で「私は医療費がかからないから先発品希望」「俺は安物ではなく高いものを希望」とは、なかなか言えないのではないかと思います。そうした本音を言えない中で出てくる“言い訳”が「ジェネリックのせいで副作用が出た」というフレーズなのではないかと考えられると言う報告だったそうです。


 患者さんとケンカする訳にもいきませんので、先発品希望があった場合はそれに沿うことになります。そういった患者さんに対して心配なのは、それ自体が正しい情報ではないので今後、他の病気になった時に使えない薬が増えたり治療できなかったりなど、その患者さんにとっての不利益が起こるなど、もろもろの心配はありますが、現場での有効な対応は難しいというのが現実ですね。
2019年06月26日(水) No.907 (原口先生(薬剤師)のコラム)

“後発品は副作用が出るから嫌”という方の本音(前編)


 患者さんの中には、いまだに「ジェネリック(後発医薬品)は嫌だ」という方がわずかにいらっしゃいます。 今回は「ジェネリックが嫌」という言葉の裏にある心理について考えたいと思います。
 そもそもジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、新薬(先発医薬品)の再審査期間、物質(成分)特許期間満了後、新薬と効き目が同等であることを証明する様々な試験を実施し、 厚生労働省の認可を得て製造販売される、新薬と同じ有効成分を含む医薬品で、規定の試験により厚生労働省の認可を得て、その効果の同等性が認められているものを言います。
 ジェネリックの中の一部に「AG」という商品がありまして先発品と同一の原薬・添加物・製造方法によって作られているもので、中には同じメーカー同じ工場で印刷する文字だけ違う物もあります。これは先発から切り替えで副作用が生じる可能性はほぼあり得ません。
 先発品希望の方でもAGの説明を聞くと、「それならいいよ」と変更を承諾する人が多く「むしろそっちの方が値段も安いし、なおさらいいじゃん!」と言って下さる方が大変多くなってきました。


 逆に「(AGなので)まったく同じです」と言っても受け入れてもらえず、話をしようとした段階で会話をシャットアウト。取り付く島もない様子の患者さんの1人に理由を尋ねてみたところ「副作用が出たことがあるから」という答えが返ってきます。
 先発と同じ物なので「AGへの変更で副作用は出ません!」と言いたいのをぐっとこらえて詳細を伺いましたが、「ジェネリックのせい」の一点張りで、どんな副作用だったのか、変更した薬は何だったのか最後まで語られることはなく、憮然とした表情で会計を済ませて帰っていく方もわずかですがいらっしゃったという話を聞いたこともあります。
2019年05月29日(水) No.902 (原口先生(薬剤師)のコラム)

犬の薬について


 僕ら薬剤師は獣医さんの指示により動物の薬を調合することもあり、薬によっては動物専門のものがなく人間と同じ薬を使う事もあります。先日、患者さんから犬の点眼液について問い合わせがあり、今回はそのことにつ..
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2019年04月24日(水) No.897 (原口先生(薬剤師)のコラム)

牛乳アレルギーについて(後編)


 前回に引き続き牛乳アレルギーのお話をします。
 牛乳から精製される「乳糖」は二糖類で蛋白質は含んでいませんので基本的に心配する必要はありません。製造過程において乳清蛋白が混入する可能性はありますが、症状を誘発することはほとんどありません。実際、乳糖を含む内服薬はたくさんありますが、日本小児アレルギー学会の「食物アレルギー診療ガイドライン2016」では、経口薬については、投与を制限していません。また、食品に使用される量もわずかなため、ほとんどの牛乳アレルギー患児は除去する必要がないとされています。
 ただし、乳糖を含む注射薬や喘息治療用の吸入薬では、過去に乳糖による臨床アレルギーの誘発症状が確認された例が報告されていますので、心配な場合はお医者さんに相談して下さい。
 誤解されやすいのが、「乳酸菌」「乳酸カルシウム」などです。「乳酸菌」は菌の名称であり、「乳酸カルシウム」は化合物の名称で、いずれも加工食品などに含まれます。その名称から、乳製品との関連が疑われやすいのですが、牛乳とは関係ありません。
 一方、「全粉乳」「脱脂粉乳」「練乳」「乳酸菌飲料」「発酵乳」などの加工食品には牛乳が含まれるため、牛乳アレルギーの患者さんは食べられません。


 牛乳アレルギーの子どものカルシウム摂取量は、牛乳アレルギーではない子どもと比較して半分程度と報告されています。必要なカルシウムを乳製品以外で効率的に十分に取ることは難しい事です。 カルシウムの多い食品には、牛乳アレルギー用ミルク、小魚類や青菜類、海藻、大豆製品などがあります。手軽にカルシウムを取れるように、アレルギー用ミルクを牛乳の代わりに料理に使用する、煮干しをふりかけにするなど、毎日の食事を工夫して積極的に摂取する必要があり、ご家族の方は大変なご苦労をされているかと思います。
2019年03月27日(水) No.892 (原口先生(薬剤師)のコラム)

牛乳アレルギーについて(前編)


 乳幼児の食物アレルギーの原因として、鶏卵に続いて2番目に多いのが牛乳や乳製品で、ごく微量でもアナフィラキシーを誘発することもあり、学童期に入っても耐性を獲得しない子供も少なくありません。
 牛乳は特定原材料として加工食品のアレルギー表示が義務付けられていますが、名称上の「乳」という文字の有無だけでは、一概に食べられるかどうかを判断できません。牛乳アレルギーの原因物質を含んでいるかどうかを正しく見分ける必要があります。
 牛乳アレルギーの多くは、牛乳タンパク質の中の「カゼイン」が原因です。カゼインは耐熱性があり、沸騰させた程度の温度では構造がほとんど変化しないため、アレルギーの発症の可能性に変わりません。そのため、牛乳を使用して作られたお菓子やグラタンなどの料理も注意が必要です。
 また、牛乳を発酵させてもカゼインは分解されにくいため、ヨーグルトやチーズなどの加工食品でもアレルギーを誘発します。アスリート向けの食品の中には、「ホエイパウダー」や「カゼインナトリウム」など、カゼインを含んだものが売られています。こちらも「乳由来」などと表示されていて当然注意が必要です。


 加工食品などに利用される「乳化剤」は卵黄、大豆、牛脂などから作られていますが、最近では抗原性の強いカゼインナトリウムを含む乳化剤を使用した食品が発売される事もあるので、注意が必要です。
 一方、「全粉乳」「脱脂粉乳」「練乳」「乳酸菌飲料」「発酵乳」などの加工食品には牛乳が含まれるため、牛乳アレルギーの患者さんは食べられません。
 次回は乳がつくけど問題のないものなどを紹介します。
2019年02月27日(水) No.886 (原口先生(薬剤師)のコラム)

インフルエンザと異常行動 (後編)


 発熱に伴う異常言動や可逆性膨大部病変を伴う軽症脳炎・脳症(MERS)の家系例を対象に遺伝子解析を行った結果、MYRF遺伝子に同一の変異があることが突き止められインフルエンザなどの発熱に伴う異常言動に、遺伝子が関与している可能性が愛知医大の奥村彰久教授の研究グループにより少しずつ明らかになってきましたが、詳しくは分かっていません。 奥村教授いわく、異常行動は薬剤が原因と疑われ社会的に注目されていますが、薬剤を使っていない症例でも確認されており、他に原因があるだろうと指摘されてきました。発熱に伴う異常言動や可逆性膨大部病変を伴う軽症脳炎・脳症(MERS)を繰り返す家系に遭遇したことから、遺伝子的な背景があると考え研究しました。  きっかけは患児を診察し、家族歴を伺ったところ、母親や母親の同胞、さらには祖母と祖母の同胞にも、発熱に伴って異常言動を経験した症例が認められました。


 そこで、この家系に遺伝子解析を行ったところ、MYRF遺伝子で全ての症例に同一のミスセンス変異を認めたのです。このことから、発熱に伴う異常言動やMERSの原因遺伝子であるのではないかと考えたとの事でした。これまでのところMYRF遺伝子の機能は十分に解明されていません。おそらく通常の状態では、遺伝子変異があっても髄鞘は何とか維持されているが、発熱などの負荷がかかった時には耐えきれなくなって異常が出現するのではないかと推定されている様で、今回の研究は、米国神経学会誌にも掲載されました。
 しかし、解禁されたと言っても、異常行動が発現しなくなるという訳ではないので、これまで通り抗インフルエンザ薬の服用者だけでなく、服薬していない患者でも異常行動に注意していくことが重要です。
2019年01月30日(水) No.880 (原口先生(薬剤師)のコラム)

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