タイトル

こどもとスマホ その スマホと体力


スポーツ庁は、2008年から全国の小学5年生と中学2年生を対象に、8つの項目(握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、立ち幅跳び、ソフトボール投げ)の体力、運動能力ならびに生活、運動習慣などについて調査をおこなっています。
 2019年は4〜7月に、生徒の大半にあたる201万人を対象に実施されました。その結果は、それぞれの項目の合計点の平均値である「体力合計点」が、小、中学生とも前年に比べて低くなっていました。とくに小学5年生男子は2008年度の調査開始以来、最低となりました。図1は、小5男子のソフトボール投げと50m走の結果を示しています。


 同庁は、子どもの体力低下の要因として、運動時間の減少や、肥満の児童、生徒の増加、朝食を食べない児童の増加のほか、テレビゲーム、スマホなどの画面をみる「スクリーンタイム」の増加との関連を指摘しています。とくに子どもが運動していた時間がスマホに費やされている可能性をあげています。図2は生徒のスクリーンタイムの状況です。平日に1時間以上使っている子どもの割合は、小5は男子83.3%、女子73.1%、中2は男子90.3%、女子87.6%に上がっています。


 図3は、岐阜県における体力テスト8項目の総合点の偏差値とスマホやパソコンなどの利用時間の関係を示したものです。スマホなどを一日60分以上利用している子の体力総合点は明らかに低いことが分かります。一方、全く使用していない子どもたちは最も高い点数であり、一日の使用時間が30分未満の子どもたちは、体力も低くなく平均以上の水準でした。スマホを使用すること自体が悪影響を及ぼすのではなく、スマホの利用法、とくに長時間の使用に問題があります。


 昔に比べて子どもが外に出て体を動かす機会は少なくなっています。外で遊ぶ代わりに、友達とスマホでゲームやSNSをしながら遊ぶことが多いようです。運動不足の子どもが増えてしまった理由は、何よりもスマホの普及が一番の原因と言えそうです。各家庭で、利用時間と使用ルールを決めて、適切に用いることが最も大切であり、子どもにON(勉強、運動、手伝いをやるとき)とOFF(自由に過ごすとき)のスイッチを作らせ、自分自身でコントロールができるようにサポートしてあげてください。
2021年03月03日(水) No.1000 (秋山先生(小児科)のコラム)

こどもとスマホ その スマホと脳機能


 便利で身近な存在になっているスマホですが、1日2時間以上使用すると、前頭前野が活発に働かなくなることが分かってきました。前頭前野は、脳の中でも人間らしい思考や判断をし、記憶や感情制御をおこなう場所で、3歳までに3倍の大きさに成長します。前頭前野は、私達が生活するうえで一番大切な人間らしさを育む司令塔です。


 大人を対象としていますが、興味深い実験があります。(東北大学、川島先生)
 図は、少し難しい言葉の意味(例えば忖度など)を紙の国語辞典で調べたとき(上)と、スマホを使用しウィキペディアを閲覧して調べたとき(下)の前頭前野の活動を示しています。国語辞典を使用した際は時間内に3つ、一方スマホを用いると5つもの言葉の意味を調べることができました。前頭前野の働きを比べてみると驚くべきことに国語辞典を使っているときは左右の前頭前野は活発に働いているのに、スマホを使うと全く働いていないことがわかりました。スマホで言葉調べをしているときには指先も使っているし文字だって読んでいるのに、前頭前野は全く活動していません。作業効率がいいのはスマホを使用した時ですが、前頭前野はボンヤリしたままなのです。
 また、文章を書くときの実験でも、手書きで手紙を書くと前頭前野はたくさん働くのに、パソコンやスマホで文章を書かせても前頭前野は全く働かないという結果がでています。
 ちなみに、前頭前野の活動に抑制がかかるのはスマホ使用時に限ったことではありません。ゲームやテレビ視聴も同様であり、長時間のプレー、視聴は、言語知能の発達に悪影響を及ぼすとともに、脳の発達、とくに前頭前野の発達に遅延を生じさせることが、健康は学童の経年変化をみたMRI計測から明らかになっています。
 川島先生は、次のようにコメントし、長時間のスマホ利用に注意を呼びかけています。
 前頭前野が発達していることが、ヒトの脳の最大の特徴であり、前頭前野には人間ならではの「こころ」の働きが局在しています。子どもの脳の健全な発達を考えると、前頭前野の機能を活発に働かせる機会を多く持たせることが大切になります。しかし、便利なスマホを頻繁に用いると発達期の子どもたちが脳を使う機会がどんどん奪われることになります。前頭前野を使う『use it』の機会が減り『lost it』が進んだ子どもたちは、将来どうなるのか。そのことを私たちは真剣に考えなくてはならない時が来ていると思います。
2021年01月27日(水) No.996 (秋山先生(小児科)のコラム)

こどもとスマホ その スマホと学力


 10代のスマホの利用時間は、平日で一日119分、休日で194分となっています(2014、総務省)。この数値はあくまで平均なので実際はもっと多くの時間スマホを使っている子どももたくさんいるのでしょう。この現状に脳科学でよく知られている東北大学の川島隆太先生は、仙台市の7万人に及ぶ小、中学生の調査から、スマホと学力低下に相関関係があることを指摘し、スマホの使用方法について警鐘を鳴らしています。
●スマホを使うだけで学力がさがる?
 図はスマホの一日の使用時間と数学の学力テストの正答率の関係を示しています。また驚くことに「2時間以上勉強していながらスマホを4時間以上使っている子」の平均点が「30分未満しか勉強していないけれど、スマホを使わない子」の平均点より低い。スマホを持っていない子どもと、毎日スマホを2〜3時間使う子とを比べると、勉強時間がほとんど変わらないにも関わらず、テストの平均点が10点以上違うという結果になっています。うちの子は、「スマホを持っているけれど、その分しっかり勉強もしているから大丈夫」という考えを覆す結果であり、単に勉強時間が削られるから学力が低下するというわけではなさそうです。ではスマホを使うとなぜ勉強していても成績が低下するのでしょう。その原因は、勉強の質にありそうです。やはり仙台市の中学生の調査ですが、勉強中にスマホを使って音楽を聴く子どもが60%、無料動画を見る子どもが30%、無料通話アプリを使う子どもが30%いたそうです。勉強に集中できない原因にスマホが大きく影響しているようです。一日に1時間程度のスマホ使用であれば、とくに学力に影響はなさそうです。


●LINEの使用と学力の関係
・LINEの使用時間が増えるほど、顕著に成績が下がる。
・一日に2時間以上勉強している子どもが、4時間以上LINEを使用すると、勉強時間が30分未満でLINEを全く使用しない子より圧倒的に成績が悪くなる。
・一日に1時間未満のLINE使用でも成績が下がる。
・スマホ(LINE)の使用をやめても、以前に長い期間LINEを使っていた場合、成績が上がらない。
・LINEは、スマホ全体より影響が大きいようです。これはLINEの通知音によって不安が高まることが習慣化し、集中力そのものが下がってしまうことが原因と考えられています。
 スマホの使用時間は、一日1時間以内とすることが望ましく、勉強中、睡眠時にはスマホの電源を切るなど、家庭内でスマホ使用のルールを作ることが大切です。
2020年12月29日(火) No.992 (秋山先生(小児科)のコラム)

こどもとスマホ その スマホと睡眠障害(後編)


●メラトニンとブルーライト
 夜になると眠くなり朝になると目覚めるのは、私たちの体にもともと備わっている体内時計が関与しています。この体内時計に従って夜間睡眠を促すために、脳の松果体からメラトニンというホルモンが分泌されます。メラトニンは主に夜に分泌され、光の感知で分泌が抑制されます。メラトニンは「夜が来たこと」を全身に知らせます。具体的には、メラトニンにより脈拍、体温、血圧などを低下させることで、睡眠の準備ができたことが認識され、自然な睡眠に入っていきます。


 光を夜に浴びると、自然な睡眠を導くメラトニン分泌が抑制されます。とくにスマホなどの電子機器の画面が放つ「ブルーライト」は、人の目で見ることができる光(可視光線)の中でももっとも波長が短く(380〜500nm)、強いエネルギーを持っており、メラトニン分泌に強い影響を与えます。就寝時に刺激の強いブルーライトを浴びることで、脳が「昼間」と判断してしまい、メラトニンが分泌されにくくなってしまいます。体は睡眠の準備に入ることが出来ず、寝つけないことになります。メラトニンの分泌が後ろ倒しになり、朝になっても分泌され続けることになり、眠りの質は落ちてしまい「よく眠れなかった」「途中で目が覚めてしまった」「朝スッキリ起きることができない」「いくら寝ても寝足りない」と感じてしまいます。
 最近の研究で、同じ光の明るさでも、大人より子どもの方が光を感じやすいことが分かってきており、子どもの方が夜更かしの影響がより強く表れるといいます。またブルーライトには、発生源に近ければ近いほど、発する量が多くなっていくという特徴があります。そのためLEDライトやテレビより目に近い位置で使用するスマホが一番ブルーライトの量が多く、健康とくに睡眠への影響が大きいとされています。
【対策】
1、寝床ではスマホを触れないよう習慣づける。
2、寝る1〜2時間前からはスマホを使用しない。
3、寝る前のスマホ断ちができない原因に、手元にスマホがあるということがあります。寝る前はスマホを枕元で充電しないようにして、できるだけ布団から遠い場所に置いておく。
4、スマホの光が漏れないように工夫する。
2020年11月25日(水) No.988 (秋山先生(小児科)のコラム)

こどもとスマホ その スマホと睡眠障害(前編)


 子どもの睡眠時間は、年々短くなる傾向があり、先進国の中で日本の子どもはもっとも睡眠時間が短いとされています。スマホの爆発的な普及に伴い、様々なスマホ使用に伴う健康問題が指摘されていますが、その中でも特に懸念されているのが睡眠障害です。
2014年、文科省は全国の小、中、高校生2万人を対象とした「睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立などとの関連性に関する調査」を行っています。図に示すように、スマホを使用する時間が長いほど就寝時間が遅くなり、寝る直前までスマホを使っている頻度が高くなるほど起きるのがつらいと感じる子どもが多いことがわかりました。
さらに就寝時刻が遅い子どもほど、自分のことが好きと回答する割合が低く、なんでもないのにイライラすることがあると回答する割合が高くなっています。
 厚労省は2018年、8項目からなる「未就学児の睡眠指針」を発表しています。
 その中で3項目をスマホやタブレットなどの情報通信機器の使用に関する注意、とくに就寝前には光を発する電子機器を使用しないことが望ましいとしています。


未就学児の睡眠指針「子どものより良い睡眠のためのポイント」
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新生児期〜乳児期は体の機能が発達していく課程。安全な睡眠環境の確保を
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保護者の睡眠習慣が子どもにも影響するので注意を
J欷郤圓両霾鹹命機器使用
子どもの使用につながり、睡眠にも影響する。保護者自身の使用状況のチェックを
じと情報通信機器使用
寝床につく前は、明るい光は浴びないよう注意を
セ劼匹發両霾鹹命機器使用と睡眠
機器の使用開始年齢、子どもの生活の中での位置づけを考えよう
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昼寝は年齢とともに必要度が低下。必要以上の昼寝は、夜の睡眠を妨げる
Ы学が近づいた時期の睡眠
就学が近づいたら、学校のスケジュールに合わせて調整を
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睡眠中の異常は病気の可能性も。気になる場合はかかりつけ医、専門医に相談を
2020年10月28日(水) No.984 (秋山先生(小児科)のコラム)

こどもとスマホ その 子どもにスマホを与える時


 最近は、中学1年生の6割がスマホを持っています。スマホの保有率は小学生の2〜3割、中学生の6〜7割、高校生では9割となっています。小学生の高学年になると、そろそろスマホを持たせようかな、..
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2020年09月30日(水) No.980 (秋山先生(小児科)のコラム)

こどもとスマホ その 『スマホ育児』は大丈夫?後編


 大人と同じ様に赤ちゃんでもスマホの動く画像や音に惹かれます。1歳を過ぎると上手に扱うことができるようになります。作家でジャーナリストの石川結貴さんは、次のように述べています。子どもとスマホの親和性の..
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2020年08月26日(水) No.976 (秋山先生(小児科)のコラム)

こどもとスマホ その 『スマホ育児』は大丈夫?


 近年、「スマホ育児」という言葉が多く聞かれるようになりました。もともとスマホを用いて知育やしつけ用のアプリを利用することを示したものでしたが、最近はスマホやタブレット端末を子どもに持たせ、アプリや動画などで自由に遊ばせたり、子守り中に親がスマホを動作している状態を示す言葉となっています。
 2013年、日本小児科医会が「スマホに子守りをさせないで」というポスター(図)を発表し話題になりました。それに対して多くの賛否の声が上がりました。一方的にスマホ子守りを悪にする感じに違和感を持たれた方が多かったようです。


 実際、どのくらいの児がスマホを利用しているのでしょうか?「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」は、平成28年に行ったアンケート調査で、1歳児の41%、3歳児の60%、6歳児の74%に利用経験があり、利用を始めた年齢は2歳が最も多く、8割の子どもが3歳までに始めていました。小さな子どもがスマホなどを使用することへの懸念(図)は、視力への影響を心配される方が6割と最も多く、9割を越える保護者は何らかの影響を心配しています。
 0〜3歳の成長に言葉による応答はとても大切です。一方的に刺激を与えてくるスマホなどは言葉や表現力の発達に影響を及ぼす恐れがあります。低年齢からスマホを持たせていることにはさまざまな危険性が潜んでいるようです。
2020年07月29日(水) No.972 (秋山先生(小児科)のコラム)

こどもとスマホ その 子どもとインターネット環境


 スマートフォン(以下スマホ)が日本に上陸したのは平成20年といわれています。それから10年余が経過し、スマホやタブレット端末は爆発的に普及しました。内閣府が毎年実施している「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、小学生(10歳以上)23%、中学生54%、高校生94%がスマホでインターネットを利用しています。その内容は、動画視聴が77%、ゲーム70%と多く、勉強などに利用しているのは33%とかなり低くなっています。インターネットの利用時間を表に示します。
 現在、ネット環境は子ども社会においても、遊び、人間関係、生活習慣において大きな変化、影響を与えています。とくに長時間の使用が、ネット依存などのさまざまな精神、健康障害を引き起こし大変危惧されています。


 2015年、小児医療保健議会は「子どもとICT(スマホ、タブレット端末など)の問題についての提言」を発表しています。
 健康への影響として、
…校間使用による影響
・VDT(Visual Display Terminals)症候群(ディスプレイなどの画像表示端末を使用した作業を長時間続けることにより、眼、体、心にさまざまな症状をきたす病気)
・睡眠、運動など生活時間が不足することによる健康障害(ネット依存症)
内容による影響
・ゲーム依存
・行動、メンタルヘルスへの影響
情報伝達手段に対する影響
・コミュニケーション能力への影響
・社会性の発達への影響
 日本小児科医会は、「スマホの時間、わたしは何を失うか」というポスターを出しました。
1、睡眠時間…夜使うと睡眠不足になり、体内時計が狂います。
2、学力…スマホを使うほど、学力が落ちます。
3、脳機能…脳にもダメージが!
4、体力…体を動かさないと、骨も筋肉も育ちません。
5、視力…視力が落ちます(外遊びが目の働きを育てます)。
6、コミュニケーション能力…人と直接話す時間が減ります。
 これから数回にわたって、スマホと子どもの関わりについて、考えてゆきます。
2020年06月30日(火) No.967 (秋山先生(小児科)のコラム)

ロタウイルスワクチン


 10月からロタウイルスワクチンが定期接種化されることが決まりました。2020年8月に生まれる0歳児から対象となります。
 ロタウイルスは、生後6か月から2歳までをピークに5歳までにはほぼ全ての子どもが感染します。感染力が非常に強いため、衛生状態が良い日本でも発症予防は難しいとされています。発症すると水のような下痢(白色便)、嘔吐、発熱が生じます。重症化(10%程度)
するとひどい脱水症状を起こすため、毎年数万人の乳幼児が入院、数人の死亡が報告されています。特に初めて罹患した乳児が重症化しやすいとされています。
 日本では、2011年に予防経口ワクチンの「ロタリックス」(2回接種)が、翌年「ロタテック」(3回接種)が承認されましたが、全額自己負担なので2〜3万円かかる接種費用は大きな家計の負担になっていました。それでも最近のワクチン接種率は、6割以上となっています。ロタリックス、ロタテック両方のワクチン効果は同等であり、どちらのワクチンを使用してもかまいません。


【接種スケジュール】
・生後6週から接種可能、初回接種は生後8〜15週を推奨
・ロタリックス(1価):4週以上空け2回接種、生後24週までに終了
・ロタテック(4価):4週以上空け、3回接種、生後32週までに終了
 嘔吐したり、吐き戻したりした場合は、再投与はしません。同じワクチン製剤で1シリーズを完了させます。すでにロタウイルス腸炎にかかった乳児もワクチンを接種すべきです。
【効果】
 一部助成制度がある名古屋市では、2015年にワクチン接種率が9割を越えました。その結果、5歳未満の入院頻度が35%減、1歳
未満に限ると72%減少、外来患者
数もそれぞれ57%、87%減少しています。ワクチンの免疫持続期間は正確には分かりませんが、2シーズン、または2歳まで?
【注意】
 以前からワクチンと腸重積との関係が危惧されていました。腸重積は、生後6か月以降に多くなります。現在、諸外国の報告から関連性は否定的ですが、生後6か月までには接種を終わらせておくのが良いでしょう。
2020年05月27日(水) No.963 (秋山先生(小児科)のコラム)

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