タイトル

ワクチンギャップの解消


 以前から欧米と比較して、日本の小児におけるワクチン行政は20年の遅れがあると言われていました。しかしこの数年でいろいろなワクチンの定期接種化が進み、日本と欧米とのワクチンギャップはだいぶ解消されてきています。


 現在の公的ワクチン実施状況を表に示します。今後、日本でもおたふくかぜとロタウイルスワクチンの定期接種がいつ頃実現するのか、また他のワクチンについて、残された課題、今後の展望などについて、次回説明していきます。
2017年04月26日(水) No.791 (秋山先生(小児科)のコラム)

乳児期の貧血


 「正常に生まれ、その後体重も順調に増え、運動発達も問題ありません。しかし9ヶ月の検診で、顔色が悪いことを指摘され採血したところ、鉄欠乏性貧血と言われました。母乳栄養が原因なのでしょうか?」このような..
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2017年03月30日(木) No.787 (秋山先生(小児科)のコラム)

でべそ


 生れたときは気づかなかったのですが、泣いた時などにおへそがポコッと盛り上がっているのに気づき、心配されることがあります。これは「でべそ」、正式には臍ヘルニアといいます。でべそはそれほど珍しいものでは..
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2017年03月01日(水) No.783 (秋山先生(小児科)のコラム)

三歳児検尿


 わが国では、学校検尿とともに集団検尿の一環として、三歳児検診の際に検尿が行なわれています。その数は、全国で年間90万人に上ります。
 集団検尿の検査目的は、将来腎不全に至るような腎疾患の早期発見です。学校検尿ではIgA腎症を中心とする慢性腎炎、三歳児検尿の対象疾患は、先天性腎尿路奇形(CAKUT)になります。CAKUTは、小児慢性腎臓病の原因疾患の半数以上を占め、1990年後半以降は、糸球体腎炎<CAKUTとなっています。早期に発見すべきCAKUTの子どもは、人口1万人当たり1〜5.5人と推測されて
います。
 三歳児検尿は1965年から行なわれている歴史ある検査です。2007年に実施された全国調査では、98.5%の市町村で三歳児検尿が実施されていました。しかし検査項目は様々で、蛋白尿99.9%潜血80.3%、尿糖88.1%、白血球14.7%でした。
1回のみのスクリーニングが70%、しかも有所見児に対する精密検診の方法が明確に決められている自治体はわずか25%でした。
・北見市の検査方法
 北見市では、蛋白尿だけの検査です。尿蛋白(±)以上で再検査を行い、(+)以上の場合精密検査目的で、かかりつけ医の受診を勧めています。(最近の検討で、三歳児検尿での潜血や白血球の検査の必要性がないことが示されています)
 1次精密検査(かかりつけ医)では、血液検査(血清クレアチニン)、尿検査(尿蛋白/尿クレアチニン比)、尿β2ミクログロブリン/尿クレアチニン比)高血圧の有無などを調べます。
異常がある場合は、2次医療機関で超音波検査などのさらに詳しい検査を行うことになります。
・結果


 表に示すように、過去5年間で異常を指摘された児はいませんでした。保健センターで再検査できなかった児もほとんどすべてがかかりつけ医で検査されており、フォローアップ体制に問題はありません。
 一方、最近尿蛋白だけのスクリーニング方法ではCAKUTの多くが見逃されてしまうという問題が指摘されています。その理由は、CAKUTが有意の尿蛋白を呈さないことが多いこと、早朝尿がなかなか採取できず濃縮尿でのチェックが難しいなどのため、尿蛋白だけでは不十分ではないかとされています。実際、CAKUTを早期発見するため、生後4カ月ですべての児に超音波検査を実施し、実績をあげている自治体があります(神奈川県奏野市、伊勢原市など)。今、現行の三歳児検尿の在り方が問われているのかもしれません。
2017年02月01日(水) No.779 (秋山先生(小児科)のコラム)

学校検尿


 学校検尿は、1974年に始まり40年を超える歴史を持つ、世界でもまれなスクリーニング方法です。小児慢性糸球体腎炎による慢性腎不全の発症が米国の1/4であること、学校検尿世代は明らかに慢性腎不全の患者数が少ないことなどから、学校検尿の有用性が評価されています。
・方法
 早朝尿を家庭で採取して、これを学校に集めて検診機関に委託、検査する方式が全国で行なわれています。ほとんどの地域で、1回目と2回目の検査は検診機関で、2回続けて異常がみられた場合の精密検査は、かかりつけ医を受診させるシステムをとっています。
・結果
 H25年に行なわれた全国調査の
結果は、血尿・蛋白尿が小学生0・02%、中学生0・06%、蛋白尿単独は小学生0・12%、中学生0・44%、血尿単独は小学生0・27%、中学生0・36%でした。学校検尿の最大の目的は、糸球体腎炎を発見することにあります。その頻度は、小学生で1万人に3〜5人、中学生で5〜10人とされています。
 尿所見別の慢性腎疾患の確率は、蛋白尿+血尿で69・3%蛋白尿単独の場合9・4%、血尿単独で4・7%でした。蛋白尿+血尿の慢性腎疾患のうち70%はIgA腎症とされています。このIgA腎症ですが、最近の4剤によるカクテル療法の導入により、10年後の予後が著明に改善しており、早期発見、早期治療の重要性が増しています。腎疾患はほとんどが無症状ですので、早期発見の観点から学校検尿の有用性は明らかです。
・北見市の結果(表)


 過去5年間で、蛋白尿+血尿は8人でした。この8人はすべて精密検査を受けており、現在も定期的にチェックされています。一方、精密検査の受診状況をみてみると、小学生で精密検査が必要とされた196人のうち80人 (40・8%)、
中学生171人のうち132人(77・2%)が精密検査を受けていませんでした。この中には以前精密検査を受けていられる方も多く含まれているのでしょうが、大丈夫とかってに判断しているケースもありそうです。フォローアップ体制を見直してみる必要があります。
2016年12月29日(木) No.775 (秋山先生(小児科)のコラム)

児童、生徒の突然死


 恐ろしげなタイトルになってしまいましたが、生徒の突然死を説明することで、学校心電図検診の大切さを理解していただけたらと思います。
 現在、学校管理下で年間どのくらいの生徒が突然死しているのでしょう..
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2016年12月01日(木) No.771 (秋山先生(小児科)のコラム)

学校心臓病検診


 毎年、春の新学期が始まると主に小学校、中学校、高等学校の新一年生を対象とした心臓病検診(心電図検査)が行われます。心臓病検診の主な目的は、突然死をきたす可能性のある潜在性の心疾患を発見し、専門医による治療と生活管理指導を行うことで突然死を未然に防ぐことにあります。平成7年、学校保健法の改正により、小、中、高1の心電図検査が義務化され、当初は省略4誘導心電図、心音図検査を行っていましたが、平成15年からは心音図検査は中止され、現在は12誘導心電図による検査が行われています。
 機械の判定による一次スクリーニングの後、判定医による判読、判定、その結果、問題があると認められた例は、指定病院の専門医による診察、精密検査が行われます。


●受診状況
 北見市の過去3年間の小、中学校の受診状況を(表1)に示します。新1年生のほぼ100%近くが検査を受けています。希望者は、小、中、高校の全学年で検査を受けることができ、実際に多くの生徒が毎年検査を受けています。
●結果(表2)
 ほぼ毎年、一次スクリーニングで2〜3割がチェックされ、判定医によりその中の1〜3%が専門医による精密検査が必要と診断されています。精密検査結果を(図)に示しますが、不整脈が主であり、その中には突然死の原因となる房室ブロックやQT延長症候群なども含まれています。
 毎年、全国で学校での突然死は数十名にのぼっています。その原因の多くは心臓疾患と言われています。原因となる心臓疾患のほとんどが、普段は特別な症状がないため、早期に見つかることはまずありません。これら潜在性心疾患のほとんどが、心電図検査でわかります。学校心臓病検診は日本特有のシステムであり、全国規模で行っている国は日本以外ありません。非常に精度の高い検査ですので、必ず検査を受けるようにしましょう。
2016年11月02日(水) No.767 (秋山先生(小児科)のコラム)

「小児のマイコプラズマ肺炎」 マイコプラズマ感染の特異性


ぢ兩菌の問題
 2011年、マイコプラズマ感染の大流行がありました。その際に分離された菌のマクロライド系抗生物質(クラリス、クラリシッドなど)に対する耐性率は極めて高いもので、89.5%でした。


 このよう現象は、日本、中国などのアジア諸国のみならず欧州でもみられています。これは外来で管理できるような場合はそれほど深刻ではありませんが、入院が必要な重症例では大きな問題となります。大人でよく使用されマイコプラズマに有効とされるニューキノロン系やテトラサイクリン系などの抗生物質は、副作用のため小児では使用できません。もちろん注射薬でも適切な薬がなく、とくに年少児において治療に困ることがあります。最近小児にも適応のあるニューキノロン系の抗生物質が出てきていますが、安易に使用できません。
ツ弘く咳の原因
 肺炎にならなくても1ヶ月以上続く長引く咳の原因となります。特に年長児や大人ではこの傾向があり、自覚症状もあいまいで、微熱と倦怠感、咳が長期間続くことがあります。
重症化
 まれですが、肺炎が重症化し抗菌薬で炎症を抑えることができないことがあります。他の細菌感染は菌によって直接的に肺組織にダメージを与えるわけですが、マイコプラズマ肺炎の病態の基本は、マイコプラズマに対する生体の免疫反応といわれています。普通はマイコプラズマを抗菌薬で叩けば免疫反応も収束し改善してきますが、一部の例で菌を叩いても炎症が治まらず、過剰で有害な免疫反応のため重症となることがあります。このようなケースでは、ステロイドの全身投与が有効となります。またマイコプラズマ感染で神経系や造血系のさまざまな合併症を伴うことがあります。この場合もステロイドの投与が考慮されます。
С惺擦篳欅蕷爐悗療亶察登園は?
 マイコプラズマ感染症は学童期に感染することが多く、出席停止期間も気になります。感染経路は、おもに飛沫感染ですが感染力はそれほど強いものではありません。適切な抗菌薬が投与され、解熱し、飛沫の原因となる咳がある程度改善していれば、登校してもよいものと思われます。
2016年10月05日(水) No.763 (秋山先生(小児科)のコラム)

小児のマイコプラズマ肺炎


 マイコプラズマ肺炎は、他の細菌感染症が減っているのにもかかわらず年々増加しています(図)。これは薬が効きにくい耐性菌の増加と関係がありそうです。今話題となっている耐性菌の問題を含めて、子どものマイコプラズマ感染症は、まことにやっかいで悩みが多い疾患といえます。それは他にはないマイコプラズマという細菌の持つ特異性にあります。


‐評の特徴
 マイコプラズマは、気管支から肺にかけての気道に感染します。初発症状は咳です。はじめは乾いた咳が繰り返し起こりますが、経過とともに痰がからんでくるようになります。鼻水があまりみられないのがひとつの特徴ともいえます。微熱のことが多いのですが、肺炎を起こしてくると高熱が続くことになります。
∪伏期間が長く、しかも感染期間が長い
 感染してから発症するまでの潜伏期間は、通常1週間から3週間程度(長い時で4週間)です。発症すると回復までに1ヶ月以上かかることが多く、この間は、人に感染させてしまう可能性があります。おもに飛沫感染ですが、感染力はそれほど強くはなく、感染しても症状が出ない場合(不顕性感染)が多いことも知られています。しかし感染期間が長期に渡るため、小規模ながら地域で流行が見られる原因となります。また感染して一度免疫を獲得しても、免疫が長く続きません。そのため子どもでは、繰り返して感染することがあります。
A甦の診断が難しい
 マイコプラズマは、培養が難しく、菌の検索は一般に行いません。最近、マイコプラズマ抗原やマイコプラズマ特異的IgM抗体をベッドサイドで検出する迅速診断キットも出ていますが、インフルエンザや溶連菌ほどの有用性はなく、まだ早期診断する手段がありません。いまだにペア血清による抗体価の上昇をみて診断され、確定診断に数週間を要します。血液検査では、強い炎症反応が出ないことが特徴といえます。レントゲン所見は、スリガラス様の淡い陰影とされていますが、さまざまな像を示すことが多く、一般の細菌性肺炎との区別はできません。
2016年09月01日(木) No.755 (秋山先生(小児科)のコラム)

小児のマイコプラズマ肺炎


 マイコプラズマ感染症は4年周期(オリンピック開催年)の流行があることが知られていますが、最近は年度に関係なくみられ、一年を通して地域的な小さな流行が見られる印象があります。
 図に小児肺炎の原因となる微生物を示します。2歳未満ではマイコプラズマの占める割合は低いのですが、6歳以上では約6割がマイコプラズマが原因とされ、小児の市中肺炎で最も重要な起炎菌となっています。


 肺炎マイコプラズマは細菌ですが、その大きさは通常の細菌より小さく、通常細菌が保持している外側の壁がありません。細菌とウイルスの中間に位置する存在といっても良いのかもしれません。一般に使用されるペニシリンやセフェム系などの抗生物質は、細菌の壁を壊して菌を殺すわけですが、これらの抗生物質は外壁を持たないマイコプラズマには全く効果がありません。一般にマクロライド系抗生物質(クラリス、クラリシッドなど)が有効とされています。
マイコプラズマ感染症は、身近な疾患でありながら普通に使用される抗生物質が効かないために、うっかり見逃すといつまでたっても治らないばかりか、ひどくなると肺炎で入院が必要となることがあります。
マイコプラズマ感染症は、いろいろな検査上の問題から早期に診断がつけづらく、しかも最近はこれまで効果があったマクロライド系抗生物質が効きにくい耐性菌の占める割合が高くなっており、治療上の問題も出てきています。
次回は、いろいろやっかいで悩みが多い感染症であるマイコプラズマ感染症の特異性について述べてゆきます。
2016年08月04日(木) No.759 (秋山先生(小児科)のコラム)

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