タイトル

こどもとスマホ その 『スマホ育児』は大丈夫?


 近年、「スマホ育児」という言葉が多く聞かれるようになりました。もともとスマホを用いて知育やしつけ用のアプリを利用することを示したものでしたが、最近はスマホやタブレット端末を子どもに持たせ、アプリや動画などで自由に遊ばせたり、子守り中に親がスマホを動作している状態を示す言葉となっています。
 2013年、日本小児科医会が「スマホに子守りをさせないで」というポスター(図)を発表し話題になりました。それに対して多くの賛否の声が上がりました。一方的にスマホ子守りを悪にする感じに違和感を持たれた方が多かったようです。


 実際、どのくらいの児がスマホを利用しているのでしょうか?「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」は、平成28年に行ったアンケート調査で、1歳児の41%、3歳児の60%、6歳児の74%に利用経験があり、利用を始めた年齢は2歳が最も多く、8割の子どもが3歳までに始めていました。小さな子どもがスマホなどを使用することへの懸念(図)は、視力への影響を心配される方が6割と最も多く、9割を越える保護者は何らかの影響を心配しています。
 0〜3歳の成長に言葉による応答はとても大切です。一方的に刺激を与えてくるスマホなどは言葉や表現力の発達に影響を及ぼす恐れがあります。低年齢からスマホを持たせていることにはさまざまな危険性が潜んでいるようです。
2020年07月29日(水) No.972 (秋山先生(小児科)のコラム)

こどもとスマホ その 子どもとインターネット環境


 スマートフォン(以下スマホ)が日本に上陸したのは平成20年といわれています。それから10年余が経過し、スマホやタブレット端末は爆発的に普及しました。内閣府が毎年実施している「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、小学生(10歳以上)23%、中学生54%、高校生94%がスマホでインターネットを利用しています。その内容は、動画視聴が77%、ゲーム70%と多く、勉強などに利用しているのは33%とかなり低くなっています。インターネットの利用時間を表に示します。
 現在、ネット環境は子ども社会においても、遊び、人間関係、生活習慣において大きな変化、影響を与えています。とくに長時間の使用が、ネット依存などのさまざまな精神、健康障害を引き起こし大変危惧されています。


 2015年、小児医療保健議会は「子どもとICT(スマホ、タブレット端末など)の問題についての提言」を発表しています。
 健康への影響として、
…校間使用による影響
・VDT(Visual Display Terminals)症候群(ディスプレイなどの画像表示端末を使用した作業を長時間続けることにより、眼、体、心にさまざまな症状をきたす病気)
・睡眠、運動など生活時間が不足することによる健康障害(ネット依存症)
内容による影響
・ゲーム依存
・行動、メンタルヘルスへの影響
情報伝達手段に対する影響
・コミュニケーション能力への影響
・社会性の発達への影響
 日本小児科医会は、「スマホの時間、わたしは何を失うか」というポスターを出しました。
1、睡眠時間…夜使うと睡眠不足になり、体内時計が狂います。
2、学力…スマホを使うほど、学力が落ちます。
3、脳機能…脳にもダメージが!
4、体力…体を動かさないと、骨も筋肉も育ちません。
5、視力…視力が落ちます(外遊びが目の働きを育てます)。
6、コミュニケーション能力…人と直接話す時間が減ります。
 これから数回にわたって、スマホと子どもの関わりについて、考えてゆきます。
2020年06月30日(火) No.967 (秋山先生(小児科)のコラム)

ロタウイルスワクチン


 10月からロタウイルスワクチンが定期接種化されることが決まりました。2020年8月に生まれる0歳児から対象となります。
 ロタウイルスは、生後6か月から2歳までをピークに5歳までにはほぼ全ての子どもが感染します。感染力が非常に強いため、衛生状態が良い日本でも発症予防は難しいとされています。発症すると水のような下痢(白色便)、嘔吐、発熱が生じます。重症化(10%程度)
するとひどい脱水症状を起こすため、毎年数万人の乳幼児が入院、数人の死亡が報告されています。特に初めて罹患した乳児が重症化しやすいとされています。
 日本では、2011年に予防経口ワクチンの「ロタリックス」(2回接種)が、翌年「ロタテック」(3回接種)が承認されましたが、全額自己負担なので2〜3万円かかる接種費用は大きな家計の負担になっていました。それでも最近のワクチン接種率は、6割以上となっています。ロタリックス、ロタテック両方のワクチン効果は同等であり、どちらのワクチンを使用してもかまいません。


【接種スケジュール】
・生後6週から接種可能、初回接種は生後8〜15週を推奨
・ロタリックス(1価):4週以上空け2回接種、生後24週までに終了
・ロタテック(4価):4週以上空け、3回接種、生後32週までに終了
 嘔吐したり、吐き戻したりした場合は、再投与はしません。同じワクチン製剤で1シリーズを完了させます。すでにロタウイルス腸炎にかかった乳児もワクチンを接種すべきです。
【効果】
 一部助成制度がある名古屋市では、2015年にワクチン接種率が9割を越えました。その結果、5歳未満の入院頻度が35%減、1歳
未満に限ると72%減少、外来患者
数もそれぞれ57%、87%減少しています。ワクチンの免疫持続期間は正確には分かりませんが、2シーズン、または2歳まで?
【注意】
 以前からワクチンと腸重積との関係が危惧されていました。腸重積は、生後6か月以降に多くなります。現在、諸外国の報告から関連性は否定的ですが、生後6か月までには接種を終わらせておくのが良いでしょう。
2020年05月27日(水) No.963 (秋山先生(小児科)のコラム)

子どもの気になる病気 そのアナフィラキシー(2)


 アナフィラキシーが急速に進行してショックに至るような場合には、医療機関に搬送してから処置をしていたのでは間に合いません。そこでこの緊急時に症状の進行を一時的に緩和し、ショックの進行を防ぐための治療剤としてエピペン(アドレナリン自己注射キット)があります。ハチ毒、薬物、食物によるアナフィラキシーの既往のある人やアナフィラキシーを起こす危険の高い人は、エピペンを常備しておく必要があります。ただしエピペンはアナフィラキシーを根本的に治療するものではないので、エピペン使用後は直ちに医師による診療を受ける必要があります。
 エピペン(写真1)は、

注射針一体型の注射器にアドレナリンがあらかじめ充填されたキット製剤です。アドレナリンは、人の副腎で作られるホルモンで、交感神経を活性化させることによって血管を収縮させ、心臓から血液を送り出す機能を高める作用があります。この作用によって血圧と血流を安定させます。致死的なアナフィラキシーショックから救命できるかどうかは30分以内のアドレナリン投与の可否が重要とされています。
 エピペンは、本人もしくは保護者が自ら注射するものです。安全キャップをはずし、大腿部前外側に押しあてます。衣服の上からでも注射可能です。(写真2)

薬液は一定量しか注入できないようになっており、過剰投与の心配はありません。
 日本小児アレルギー学会は、アナフィラキシーのいろいろな症状に対して表に示す症状が一つでもあればエピペンを使用すべきとしています。


 北見市における2019年のエピペン処方患者数は0.15咼ット(体重15〜30圈砲29人、0.3咼ット(体重30〜)で133人(大人のハチ毒による処方が多い)となっています。アナフィラキシーは、自宅にいるときだけ起こるわけではありません。幼稚園、保育園、学校で発症する可能性があり、自宅用以外にも園や学校でもエピペンを常備しておく必要があります。文科省、厚労省は、園や学校の教職員のための対応マニュアルを用意してあります。エピペンの使用法を含め、アナフィラキシーに対し最善の対処ができるよう求められています。
2020年04月28日(火) No.958 (秋山先生(小児科)のコラム)

子どもの気になる病気 そのアナフィラキシー(1)


○アナフィラキシーは、食物(鶏卵、牛乳、小麦、そば、ピーナツなど)、薬物、ハチ毒などが原因で起こる即時型アレルギーの総称です。
 皮膚(発赤、かゆみ、じんましん)呼吸器(息苦しさ、口腔のかゆみや違和感、喘鳴、くしゃみ)消化器(悪心、嘔吐、腹痛、下痢)循環器(血圧低下、動悸など)神経(意識障害)など多臓器に症状が現れ、これらの中で2つ以上の重い症状が起こった場合をアナフィラキシーとします。例えば全身のじんましんと喘鳴がある場合、繰り返し嘔吐し、動悸が激しい場合などがあてはまります。さらに、血圧が下がって、意識がもうろうとし生命の危険な状態をアナフィラキシーショックといいます。
○日本におけるアナフィラキシーショックの発生は年間5、000〜6、000件といわれています。
 このうち図1に示すように毎年40〜70人の死亡が報告されています。
○症状が出るまでの時間は、アレルゲンによって異なります。薬物やハチ毒は、直接体内に入るため、時間がかかる傾向があります。しかし、アナフィラキシー発現から心停止に至った例の時間をみてみると、食物による場合でもわずか30分と短時間です。(図2)


119番通報から病院に搬送されるまでに要した時間は、全国平均で33.3分と報告されています。これでは間に合いません。アナフィラキシーになった場合、事態は緊急を要します。
 次回はその対応について考えてみましょう。
2020年03月31日(火) No.953 (秋山先生(小児科)のコラム)

子どもの気になる病気 その百日咳(3)


●百日咳への対応
 乳児期に接種したワクチンの抗体価は、月齢6〜11か月では90%に達していますが、徐々に低下し5歳くらいになると30%以下まで落ちてしまいます。2019年の百日咳の発生状況をみても、その中央年齢は10歳でした。現在も増え続けている百日咳の対応策として、以下のことが検討されています(表1)


 現在の4種混合ワクチン(DPTIPV:ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)の接種スケジュールは、2歳までの4回接種で終了となっていますが、これにもう1回、3種混合ワクチンの形で追加しようというものです。その時期は、
仝什漾11歳(小学6年生)で接種される2種混合ワクチン(DT:ジフテリア、破傷風)を、3種混合ワクチン(DPT:ジフテリア、百日咳、破傷風)に変更。


抗体価が低下し高い感染リスクがある5〜6歳の就学前の児への対応として、就学前のMRワクチン(はしか、風疹)に加え、DPTワクチンを接種する。(小児科学会が推奨)
 早急の対策として,琉討有力であり、近い将来実現するものと思われます。
 参考までに諸外国の百日咳含有ワクチン接種スケジュールを表2に示します。
 諸外国では主に思春期世代へのワクチン接種は、ジフテリアと百日咳の抗原量を少なくしたDPTワクチン(Tdap)が使用されています。
2020年02月26日(水) No.943 (秋山先生(小児科)のコラム)

子どもの気になる病気 その百日咳(2)


 最近、北見市内でも百日咳に罹患する人が目立っています。北見保健所管内の百日咳発生件数を図に示しました。2018年はわずか3例のみでしたが、2019年は27例が報告されています。当院でも7、12、12、15歳の4例を経験しました。
 いずれも咳が1〜2か月続いていましたが、小児の百日咳特有の咳(連続性の咳発作や吸気時の笛声)は認めていません。LAMP法陽性1例、百日咳IgM抗体高値3例で百日咳と診断、マクロライド系抗生剤で改善しています。4例とも乳幼児期に百日咳含有ワクチンは接種されていました。


●百日咳の診断(診断が容易に!)
 これまで急性期と回復期のペア血清の抗体価の上昇で診断していました。最近は次に示す、より簡便で早く診断可能、精度の高い検査が開発され、2016年から保険適用となっています。
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 百日咳菌LAMP法は、鼻腔ぬぐい液を検体としてDNAを増幅させる方法で、感度、特異性の高い検査法で早期診断に有用です。本法を用いた百日咳菌検出試薬キットが開発されており、検査会社へ受託、数日で結果が出ます。発病して4週間以内であれば、百日咳菌に有効な抗菌薬を服用していない限り、LAMP法はほぼ陽性となります。しかし発病して4週間を超えると気道の菌量が減るためLAMP法では検出できないことが多くなります。
百日咳IgMおよびIgA検査
 ワクチン接種の影響を受けないので、単血清すなわち1回の採血で診断が可能となります。
 百日咳IgA抗体は病日約21日、IgM抗体は病日約15日をピークに発現し、IgA抗体はIgM抗体よりも持続して検出されるとされています。
 小児は発病後4週間以内に受診することが多く、成人は発病後4週間を越えてから受診することが多いことから、小児では主にLAMP法、成人では百日咳抗体検査を行い、より正確に診断するためにはこれらを併用することが望ましいとされています。
2020年01月29日(水) No.948 (秋山先生(小児科)のコラム)

子どもの気になる病気 その百日咳(1)


 百日咳は、百日咳菌によって引き起こされる急性呼吸器感染症で、感染力が強く、咳による飛沫で感染します。潜伏期間は通常5〜10日、カゼ症状で始まりますが次第に咳がひどくなり、百日咳特有の咳(連続的な短い咳、息を吸うときにヒューと音がする)が出始めます。
 乳児がかかると重症となり死に至ることもある怖い疾患です。百日咳はワクチンで予防でき、4種混合ワクチンをしっかり受けていれば、少なくとも乳幼児期の感染はありません。
 百日咳は、以前は4歳以下が中心の「いわゆる子どもの病気」でした。しかし日本では近年、思春期〜成人で百日咳に罹患する人が増加しており、ワクチン未接種の乳児(とくに生後3か月未満)への感染源となることが大変危惧されています。思春期や成人の方が百日咳にかかっても、咳は長く続きますが小児のような特徴的な咳になることはなく、比較的軽い症状で経過します。このため百日咳と診断されないまま放置されやすく、乳幼児とくにワクチン未接種の乳児に感染させてしまう可能性があります。


●なぜ思春期以降の百日咳がふえているのでしょう?
 現行の4種混合ワクチンに含まれる百日咳ワクチンの免疫効果は6〜12年とされています。
 以前は百日咳の流行が時々みられ、発症はしなくても抗体が上がるブースター効果のため、抗体はある程度維持されていました。しかし近年は、百日咳はほとんどみられなくなり、ブースター効果が得られないため、ワクチンによる百日咳の抗体が自然に低下している人が多いとされています。この状況は最近話題となっている麻疹、風疹にも当てはまります。
●百日咳は保健所に報告
 全国で百日咳にかかる人が増え、
2018年1月からこれまで指定された医療機関のみの報告(小児科定点把握)から、すべての医師が届出を行う全数把握の対象疾患に変更されました。
2018年の1年間に全国で11、190例の百日咳の報告がありました(図)。6か月未満児(6%)5〜14歳(64%)小児科定点報告では把握できなかった30〜50代の成人(16%)、年齢中央値は10歳でした。全体の58%に当たる6518例が4回の百日咳含有ワクチンの接種歴があり、5〜14歳ではその割合は81%でした。
2019年12月25日(水) No.938 (秋山先生(小児科)のコラム)

子どもの気になる病気 そのЯ加する梅毒と先天梅毒


 梅毒は昔の病気と思われがちですが、近年再び増加しています。2017年の梅毒の感染者が44年ぶりに5千人を越えました(図)。中でも20歳代を中心とした女性の感染者が増加し、それに伴い胎児が感染する先天梅毒..
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2019年11月27日(水) No.933 (秋山先生(小児科)のコラム)

子どもの気になる病気 そのΕ劵肇僖譽灰Εルス感染症


 ヒトパレコウィルス(human parechovirus:HPeV)は、主に小さな子どもで上気道炎や胃腸炎などを起こし、咳、鼻水、発熱あるいは下痢、嘔吐などといった症状をきたします。大人も感染することがありますが、症状が..
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2019年10月30日(水) No.928 (秋山先生(小児科)のコラム)

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