タイトル

女性と漢方(84) 〜めまいに対する漢方薬①〜


 『74歳Sさん。二年前に回転性めまい、耳鳴りが起きたが自然によくなった。一ヶ月前から再び同じ症状が起こり、内科や耳鼻科を受診するが改善を認めず、漢方治療を試してみたいとの事で来院。』
 Sさんのめまい..
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2011年09月01日(木) No.499 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(83) 〜高齢女性の尿失禁を伴う頻尿に対する漢方薬〜


 体力の低下した高齢者における頻尿は、泌尿器の疾患に関係するものが多いですが、東洋医学的にはいろいろな要素が複雑に絡み合っておこる病態の一つです。
 最近の報告では、「過活動膀胱」という膀胱に尿を溜める機能障害のため、尿が溜まるときに膀胱が勝手に収縮してしまい、「尿がしたい感じが多い・何度もおしっこをする・トイレに着くまで我慢できずに尿失禁してしまう」という症状に対して『牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)』が有効である報告がされており、西洋医学的治療のみでは困難な症例にも期待されています。『牛車腎気丸』は特に高齢者の泌尿器・生殖器の機能低下に伴う排尿障害、腰や下肢のしびれ・脱力感・痛みに用いることが多いのですが、個人的には、この漢方薬に加えて『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』を併用することがよくあります。


 『補中益気湯』には「補気(気を補う)」「ものを挙げる」作用もあり、高齢女性で子宮下垂に伴う膀胱下垂による尿失禁に対して『牛車腎気丸』との併用は大変有効です。この2種類の漢方薬を用いた方全般にいえることは、「生活の質の改善」です。このような症状のある方は「生活の質の低下」が著明に認められるのですが、これは加齢による元気不足に加え、症状の不快感やとりわけ尿失禁に関しては他人に相談できないストレスにも起因すると思われます。つまり、「気うつ」「気虚」(詳細は既刊号)の「気」の異常が大いに関与しているものと推測されます。
 高齢女性の難治性の頻尿には尿失禁を伴っていることが多々あり、現代の西洋医学的治療のみでは困難な局面も稀ではありませんし、今後は高齢化社会においてさらに増加するでしょう。漢方薬は生薬の複合剤ですから、一つの症状の改善のみならず、他に「気剤」として作用し、生活力を向上させる意味でもユニークでかつ有用な治療手段と思われます。
2011年08月04日(木) No.494 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(82) 〜花粉症と漢方〜


 『30歳Aさん。5年前から花粉症となる。水様透明鼻汁が起床時から午前中によく出現し、入浴すると軽快する。寒い日には出現しやすく、咽頭痛や鼻閉はほとんどない。カゼはひきやすく、手足は冷えやすい。』
『36歳Bさん。1年前から花粉症。5月初旬より透明鼻汁が出現し、ときに黄色鼻汁となる。鼻汁時には顔面のほてりを伴う。夜間には鼻閉、くしゃみ、咽頭痛が出現。暑がり体質で、カゼもひきやすい。』


 AさんとBさんはともに花粉症ですが、東洋医学的には別な身体の状態(証)です。「寒熱」という考え方で捉えると、Aさんは「寒証」で、Bさんは「熱証」タイプです。Aさんには『小青竜湯(ショウセイリュウトウ)』を処方しましたが、1週間で鼻汁が止まりました。Aさんは、胃腸症状がなく、『小青竜湯』を飲むことができましたが、「麻黄(マオウ)」という生薬で胃腸障害を起こす人には『苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)』に変更すると有効なことがあります。ちなみに「青竜」とは季節の神(四神)の一つで、春の神と同時に水の神でもあります。『小青竜湯』は肺に停滞した冷水を春の温かさで除く効能から命名されたものです。
 Bさんは、暑がりという「熱証」でありながら、汗かきでカゼをひきやすい状態の方です。透明鼻汁は「寒証」の症状なのですが、他の症状は「熱証」なので、『清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)』を投与して効果を得ることができました。黄色鼻汁が多く、鼻閉が強ければ、『辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)』も良いかもしれません。
 古典にも「鼻きゅう(ビキュウ)」という言葉が残されており、外邪によって透明鼻汁・鼻閉・鼻腔掻痒感・くしゃみなどが突然にかつ反復性に出現する病態と記されています。
現代でいうアレルギー性鼻炎・花粉症などの季節性アレルギー疾患に相当するものが昔から存在していたのです。古人も悩ませた疾患と受け止めると、少しばかり親近感が沸きますね。
2011年07月01日(金) No.489 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(81) 〜小児アトピーと漢方薬〜


 『4歳Mちゃん。母親がアトピー性皮膚炎。カゼをひきやすく、中耳炎と扁桃炎も起こしやすい。湿疹は1歳ごろから出始めて、便秘が続いたり、汗をかくと悪化する。弟の出産前後から「赤ちゃん返り」がひどくなり、皮膚症状もますます悪化し、最近は体をかきむしって、肘関節のあたりは一部ただれて、分泌液も出ている。母親が「ステロイド外用薬は使わないで」と、漢方治療を希望して来院。』


 母親の漢方熱望?に応じて、ステロイドは使わず、『黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)』を飲んでもらうことにしました。二週間目あたりから背中・腹部の湿疹は改善し、四週目からは手足・顔面の発赤も消えてきました。そのまま継続して飲んでもらいましたが、二ヶ月ぐらいから便秘も解消し、中耳炎の再発などもみられなくなりました。
 『黄耆建中湯』の効能・効果は「虚弱体質、病後の衰弱、ねあせ」とありますが、ここで注目したいのは「汗」です。「アトピー性皮膚炎持続例の悪化因子」について調べた報告の中で「汗の成分が皮膚のバリアが脆弱な人には痒みの刺激になると考えられる」と記されています。虚弱な体質の小児には『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』がよく使われることは何度も紹介しましたが、私の使用経験では『黄耆建中湯』を使うと、特に痒みが取れてくるのが大きなポイントである印象があります。
 Mちゃんの母親のように「アトピー性皮膚炎に最も効く漢方薬は何でしょうか?どのくらい飲むと完治するのでしょうか?」というご質問は多いのですが、回答は「これがアトピー性皮膚炎に最も効くと知られている漢方薬はありません。人それぞれに合う、合わないということもありますし、漢方薬のみに頼って悪化した人も少なくありません。あくまでも漢方薬は治療の選択肢の一つであり、絶対的なものではありません。ステロイド外用薬も毛嫌いせずにうまく使っていくことが大切です。」とお話しています。
 Mちゃんのように小児アトピー性皮膚炎も漢方的視点で捉え、それに適応する症例を選べば、『黄耆建中湯』などは治療に有効な選択肢の一つとして位置づけられるのではないかと思います。
2011年06月02日(木) No.484 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(80) 〜食事が十分に摂れない女児〜


 『10歳Sちゃん。数ヶ月前から食事がのどにつかえ、飲み込みにくいという症状が出現。そのため、食事量が減り体重も減少し、小児科、耳鼻科などを受診しましたが、明らかな異常は認めないということで、当院にお母さんと一緒に来院。』
 Sちゃんの顔色はやや不良で行儀は良いのですが、少し神経質な印象でした。平日はきちんと登校できているのですが、週末になるとくたびれて家で休むことが続いているそうです。いわゆる虚弱な体質の小児には『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』がよく使われることは以前にもお話しました。Sちゃんにもこちらを飲んでもらいましたが、少しは良いようなのですが、今一歩という手ごたえでした。さらに『香蘇散(コウシサン)』を加えて、「気」をはらして元気になってもらおうとしました。こちらの反応も悪くはないようですが、劇的な効果という程ではありません。とりあえず、数ヶ月飲んでもらいましたが、腹痛とともに飲み込みにくさが再び出現したところで、神経質な点に注目して『抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)』に変更したところ、飲み込みにくさは改善し、体重も増加するようになりました。


 『抑肝散(ヨクカンサン)』は、神経症・不眠症・夜泣きなどの小児に用いられることが多いのですが、最近では高齢者の不穏・興奮などにも効果があることが実証されています。
 Sちゃんの場合は、神経質な面の他に、消化機能の衰えも考慮して、「陳皮」「半夏」を加えた『抑肝散加陳皮半夏』を処方してみました。また、『香蘇散』も紫蘇の香りがして気分が良くなるようで、本人も自ら好んで飲みたいとお母さんがおっしゃっていましたので、継続して飲んでもらうことにしました。
 お母さんが話した「ここ最近は、少し食べただけでお腹が張って食べれないことがないんですよ。」という一言の中に今回漢方薬が効いた重要なポイントが隠されていました。「気」の異常が起こるとお腹が張ったり、ガスが溜まった感じがしたりすることが多いのです。たまにお子さんのお腹を優しく触ってあげて日頃のお腹の状態を把握することはさりげないことですが、実は東洋医学的な診察にもなっているのです。
2011年04月28日(木) No.479 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(79) 〜快便感がなくて苦しい〜


 『15歳Hさん。母親が娘の朝のトイレが長く、便秘を心配して学校の帰りに本人と一緒に来院。毎朝、母親にイライラがちにトイレ時間が長いことを指摘されて、本人もうんざりのご様子。漢方薬がいいのではないかとい..
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2011年04月01日(金) No.474 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(78) 〜不安と心配のなかで〜


 世の中には「心配性」といわれる人がいます。その反応が過剰だったり、ピントがずれていたりするのですが、当人は真面目に悩んでいます。現代は情報過多で、過剰な情報の中から適切なものを取り出すのは難しいので..
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2011年03月03日(木) No.469 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(77) 〜長引くカゼの漢方薬①〜


前回に引き続き、カゼに関する漢方薬のお話です。カゼの際の咳に対する漢方薬は、乾いた咳・湿った咳などの症状によって異なるのですが、私の場合は朝・夕に『麦門冬湯(バクモンドウトウ)』を、寝る前に『竹茹温胆湯(チクジョウウンタントウ)』を処方する場合が比較的多いです。一つの理由には、自分が好きでよく分かった生薬から成り立つ薬を優先することからだと思いますが、『麦門冬湯』は「気剤」としても有効なので、よくカゼで頭がボーッとする場合にも有効だからです。
以前に、カゼの流行もおさまり気候の良くなった時期にやってきた患者さんが「眠れなくてつらいので、この前出してくれた眠れる漢方薬がほしいんですけど。」と言ってきました。「○○さんに、眠れる漢方薬は出したことがないはずだけど…」「先生が、カゼを引いたときに、寝る前にといって出してくれたアレですよ。」
なるほど、そうだったのかと気がつきました。『竹茹温胆湯』のことでした。咳き込んで数日間眠れない状態が続いたあとに受診してもらった漢方薬を飲んだら、ぐっすり眠れたので、眠れる漢方薬だと思い込んでいたようです。


寝床につくと咳き込んで寝れずに、仕方なく起きている。また、眠気がきたので寝床に入ると、しばらくして身体が温まってきた途端にまた咳き込みが強くなって眠るどころじゃない。そんなときに効果を発揮してくれるのが『竹茹温胆湯』なのです。
『麦門冬湯』は咳が出始めるともう止まらないような空咳に有効です。咳き込みの程度が強く、肋骨に響くような咳には『柴陥湯(サイカントウ)』、喘息様でヒューヒューする咳には『麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)』、胸が詰まったような息苦しさが続く咳には『半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)』『柴朴湯(サイボクトウ)』がお勧めです。
このように漢方薬には、「咳」という一つの症状に対しても豊富なラインナップが用意されています。これはいつも言うように生薬の複合剤である漢方薬の為せる技なのです。
単なる「咳き止め薬」ではないことをご承知下さい。
2011年02月03日(木) No.464 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(76) 〜カゼのひき始めの漢方薬〜


今回は、寒さも本格的になっている時期ですので、カゼに対する漢方医学的対応の方法に関して、以前にもお話した『麻黄湯(マオウトウ)』『桂枝湯(ケイシトウ)』について改めてこのお薬の違いと使い分けを説明した..
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2010年12月29日(水) No.459 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(75) 〜耐えるのは美徳?〜


『38歳Nさん。診察室に入るや、ほとんど表情を変えずに、きちんと座って私をまっすぐ見据えていました。とそのうち、みるみるNさんの目に涙が大きくふくらみ、アイラインとマスカラで強調した目から、大粒の涙が頬をつたって流れました。よく見ると、軽く唇を開いて、声を出さないで歯をくいしばって泣いているのです。このままではどうしていいか見当がつかないので、気を取り直してわが本来の医者の姿に戻り、いくつかの質問をしてみましたが、最低限しかしゃべりません。完全に事情が分かったわけではありませんが、とても大変な状況にあるのは確かなようでした。』


患者さんが目の前でポロポロと涙を流して泣いたときは、まずは『甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)』を処方することにしています。たいていの人は泣く行為自体をかなりこらえているでしょうし、Nさんのように声を出さずに歯をくいしばって耐えているには相当にキツイはずです。「かわいそうに」と同情する位しかないのですが、そこは漢方薬の出番で、『抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)』も一緒に飲んでもらうことにしました。『抑肝散加陳皮半夏』はいろいろな患者さんに飲んでもらいましたが、一人でじっと殻に閉じこもって、自分一人で大変な状況に立ち向かっているような人たちに効くようです。
Nさんは、夫の暴力と子供のことで悩んでいたようでした。日本人は「耐えるのが美徳」という考え方が根強くあります。一人で全部背負って解決するまで耐え忍ぶようなタイプの方に『抑肝散加陳皮半夏』を飲んでもらうと、少しずつ気が楽になって口に出して助けを呼びやすくなるような気持ちにさせる不思議な薬です。こういうことは、多分そういう状況なのだろうと推測して飲んでもらうしかないのですが、実際に効くときには、はたから見ていてもわかりますから「なんと不思議でありがたい薬なのだろう」と新鮮に驚いてしまいます。
すっかり同情してしまって、Nさんに『甘麦大棗湯』と『抑肝散加陳皮半夏』を二週間分処方しました。どうしたらよいかは答えてあげられませんでしたが、話くらいは短い診療時間でも聞いてあげられると思ったからです。
2010年12月02日(木) No.454 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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