タイトル

女性と漢方(94) 〜体型と漢方薬〜


『46歳Mさん。「とにかく疲れやすく、すぐに横になりたい。首から上が?いつもムカムカする。」が開口一番。また、歩くときに右膝が痛くなる。1年に易疲労感にていろいろ検査したが、異常ないとの事。漢方薬が良いとのうわさ?で来院。』
 Mさんは身長158センチ、体重85キロで典型的な水太りの体型でした。易疲労感があり、すぐに横になりたいといわれたので、まず『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』を処方しました。2週間後、ムカムカは変わらないのですが、易疲労感が良くなっていました。とりあえず、このままの処方で良いかと思ったのですが、体型とムカムカがどうも気になりまして、『防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)』を処方してみました。三ヶ月後、易疲労感も取れ、吐き気もなくとても調子が良いとの事。ついでに膝の痛みもやわらいでいるようでした。


 実はMさんには、初診時に見た印象から『防已黄耆湯』を使いたいと思ったのですが、「疲れやすさ」から『補中益気湯』にしてみました。漢方は見た目も実は大切で、大塚敬節先生という漢方の大家は『防已黄耆湯』に関して「色が白く、肉が軟らかく、俗に水太りと称する体質の人で、疲れやすく、汗の多い傾向の人に用いる。あるいは膝関節が腫れて痛がる人にも用いる。有閑夫人で肥えている人にこのタイプがよく見られる。」と解説しています。
 Mさんも、まさに『防已黄耆湯』といった体型をされていましたので、最初から『防已黄耆湯』でも有効だったかもしれません。実は、Mさんに処方しながら、体重も落ちてくれることをこっそり期待していたのですが、こちらは当てが外れてしまったようです。
2012年07月05日(木) No.549 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(93)〜緊張しやすく異常に疲れやすい〜


『24歳Nさん。北見で就職し、一人暮らしを始めた頃より体調を崩した。札幌で就職したが、辛くてたまらなく退職。この1〜2年は1日中寝たきりの生活に近く、精神科にも通院中。外出時や対人時に異常に緊張し、不安神経症やうつ症状もあると本人が訴える。家族とともに来院。』
 初診時のNさんは痩せて青白い顔で、身体はとても冷たく、むくみもありました。
 血液検査では貧血はありませんが、東洋医学の立場では、「裏寒(リカン)」(身体の内部の冷え)がしっかりと認められましたので、『真武湯(シンブトウ)』を処方し、身体を温め、代謝を高めて気分も変わることに期待しました。2週間飲んで、顔色が良くなり、足取りも良くなりましたが、相変わらず気分がすぐれず寝たきりに近い生活をしており、生理痛があり、頭痛もあるとの事でした。


 下痢はなく、食欲もあるものの、手足の冷えとお腹のガスが溜まりやすいようなので、『当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)』『大建中湯(ダイケンチュウトウ)』も一緒に飲んでもらうことにしました。3週間後、外出すると異常に疲れるとの事でしたが、身体を動かしやすくなり、頭痛はなく、気分が良いとのことでしたので、続けて飲んでもらうことにしました。数ヶ月後に来院したときは、体調も良くなり、専門職の試験勉強を始めているようで、今後も漢方薬は飲み続けたいという希望でした。
 一般的ではありませんが、温裏剤(身体の内部を温める薬)である『真武湯』がいわゆる以前の呼び方の「自律神経失調症」に効果があることがしばしばあります。Nさんのように、著しい体調不良、冷えに加えてむくみ、ふらつきに対して良い効果が得られることは私自身も多く経験しています。
2012年06月01日(金) No.544 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(92) 〜易疲労感と便秘〜


『36歳Mさん。子供の頃から疲れやすいが、最近特にひどい。夜に出かけたりすると翌日はとてもつらい。手足はいつも冷たく、寒いと皮膚が真っ白になる。内科でいろいろ検査を受けたが特に異常はなし。子供の頃から便秘で下剤を服用しているが、非常にお腹がはる。不眠で睡眠導入薬を服用しており、肩こり・頭痛で時々鎮痛剤も使用する。口の渇き、多汗、身体のほてりなどもある。漢方薬を試したい希望で来院。』
 Mさんに食事について聞くと「朝・昼はあまり食べられない。夜はたくさん食事を取り、お菓子も食べている。」という状態であったため、規則正しい食事について指導し、まず胃腸の機能を高めるため、『六君子湯(リックンシトウ)』を処方しました。


 一ヶ月後、便秘が改善し、お腹の張りも良くなったとの事で、下剤は最近使用していない様子でした。
 さらに薬を続けてもらい2ヶ月後、睡眠導入薬を使用しても夜中目が覚めて、少しうつ気味だというので『香蘇散(コウソサン)』を併せて処方しました。翌月、お腹のガスが出て、とても気分が良く、朝のだるさが少し軽くなったとの事で、外来に来られたMさんの顔の表情が今までと違って元気そうでした。いつもは午前中ボーッとしていたのが『香蘇散』を飲むようになってからかなり改善したようです。
 『六君子湯』は単なる胃薬ではない点は以前の号でもお話しましたが、さらに不眠やうつを目標に『香蘇散』を合わせたことにより、気剤(「気」の異常に対する薬)としての効果も増強したと思われます。この2種類の漢方薬の合方は有名で、パニック障害にも有効なことも知られています。
 ちなみにMさんは夜のお菓子はやっと止められ、朝は果物を食べるようになったそうで、診察室に入ってきた姿は別人のように生き生きとしていたのが印象的でした。夜のお菓子好きな私にとってはMさんをお手本としたいところです。
2012年04月27日(金) No.539 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(91) 〜水毒と片頭痛〜


 『48歳Sさん。十代からの片頭痛?との事で、閉経後から一ヶ月に一回の割合で嘔吐を伴う激しい頭痛発作が出現し、近医の病院にて入院、精査したが、異常所見なしということで来院。』
 Sさんは確かにほぼ閉経に近い状態で、頭痛・吐き気に関しては、前医で片頭痛薬・制吐剤が処方されていましたのでそちらを継続してもらい、めまいに対して『半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)』を始めてもらいました。その後、めまいはありませんでしたが、隔月で非常に激しい片頭痛発作がみられるようになり、片頭痛の漢方としては定番の『呉茱萸湯(ゴシュウトウ)』を処方しました。飲むと、胃のあたりが傷むため中止してもらいましたが、何度かお話している中で、本人が水分を取りすぎると吐き気がひどく、頭痛発作が起こりやすいし、元々汗が出にくいと言うので、「水毒(スイドク)」(以前も紹介)に注目して『五苓散(ゴレイサン)』を飲んでもらうことにしました。これが一番効いたようで、片頭痛の発作までもおさまり、吐き気も出なくなりました。


 『五苓散』は以前の号で「二日酔いの頭痛」に有効なことはお話しましたが、基本的には「裏熱(リネツ)」(身体の内部に熱がこもる)に使う薬です。Sさんも「裏熱」の症状がある場合、『呉茱萸湯』は逆に不都合なことが起こりやすい可能性があります。体質的には夏場に調子が悪い方が多いので、本人はあまり夏は水分を取らないとお話していました。
 このように、水分が身体に偏在することで、吐き気を生み、結果的に片頭痛を誘発するという東洋医学的診断になるわけですが、「水毒」の人は夏場に悪化する傾向があり、秋頃から症状が少し良くなる人もいらっしゃいます。Sさんも昨年の秋からは、手足の冷えが気になるというので、現在は「冷え」を主治する漢方薬に切り替えています。春先からは『五苓散』がまた必要になってくるかもしれませんね。
2012年04月04日(水) No.534 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(90) 〜転居と突然の下痢〜


『68歳Oさん。数年前、長年住んだ土地から、息子さんの住む北見へ転居したが、その前後から体調を崩したとの事。特に、突然起こる下痢に悩まされており、それが怖くて外出できなくなったようです。その他、食欲不振や味覚の低下、だるさ、眠気、湿疹などの皮膚のトラブルも出現し、漢方薬を希望にて来院。』
 初診時は、食欲不振や味覚の異常、全身倦怠感を特に訴えていましたので、『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』を処方し、2回目からは「抑うつ」傾向もみられたため、『香蘇散(コウソサン)』を処方しました。しかし、疲れや食欲は若干改善したものの、下痢は変わりませんでした。
 約二ヶ月の通院を通して、習い事や外出に対する予期不安が強く感じられるようになったため、『半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)』に換えてみたところ、3週間後には下痢は著しく改善し、「9割方良くなり、大分楽になった」との事。フラダンスなどの習い事や外出にも自信を持てるようになった。その後は湿疹にさらに対応するため『柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)』も一緒に飲んでもらいましたが、経過は良好のようです。


 『半夏厚朴湯』は、咽頭あたりに異常な感じがしたり、自律神経失調症などに用いる機会が多い漢方薬ですが、近年では腸管運動にも作用することが動物実験で報告があり、下部消化管症状にも応用できる可能性が示唆されています。
 Oさんは原因不明の腹痛・下痢を訴えていましたが、慣れない土地での生活にうまく適応できず、その不安やストレスが背景にあったのかもしれません。同じ気剤(「気」に作用する薬)である『香蘇散』の効果が十分でなかったことから、『半夏厚朴湯』に含まれる生薬の中でも強い抗不安作用を有する「厚朴」が有効であったのでしょう。  
 漢方薬は「気」の異常からきたす消化器症状にはとても有効なことが多く、内臓だけにとらわれずに全人的なアプローチが大切なことを実感した症例でした。
2012年03月01日(木) No.529 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(89) 〜過敏性腸症候群?と執拗な訴え〜


『73歳Nさん。過敏性腸症候群にて他院通院歴あり。便秘の薬をいろいろ試したが思わしくないようで、最近は便は非常に硬く、西洋薬の下剤を使ってひどい下痢になったとの事。漢方薬を希望して来院。』
 高齢者で便が硬いとの事で、『麻子仁丸(マシニンガン)』を2週間処方しました。1ヶ月後に来院し、「薬を飲んでいた時は良かったが、切れるとまた便が出なくなる。」
 きちんと飲み続けてくれればいいのに(苦笑)と思いながら、同じく1ヶ月処方しました。今度は「最初は良かったが、便が出た後に全身の力が抜けてしまう。しかも、げっぷがやたらと出るようになったので、別の薬に変えてほしい。」との事。たしかにお腹にガスが溜まっているようなので、『大建中湯(ダイケンチュウトウ)』に変えてみました。しばらく、2ヶ月位は調子が良かったようですが、また排便後の脱力感を訴え、「ガスもとても多くなってきたので薬を変えてほしい。」と来院。
 その後もいろいろと併用する薬を変えましたが、最初の1〜2ヶ月は良いのですが、その後悪くなることを繰り返しました。初診から1年ほど過ぎたころ、『大建中湯』に『加味逍遥散(カミショウヨウサン)』を加えてみたところ、「これまでで最も調子がよい。」との事。その後4ヶ月以上経過していますが、薬を変えてほしいという訴えはなくなりました。


 薬を変えるとしばらく良いのですが、1〜2ヶ月経つと、前よりずっと悪くなると言われ、振り回された感がありました。しかし、このような執拗な訴えも東洋医学的には『加味逍遥散』が有効なことが多いのに、なかなかそちらに思いがいかなかったのは、私がまだまだ漢方医として未熟なせいでしょう。気がつくと1年半、Nさんの方も、私に見切りをつけずによく長い間来られたものと感服いたしました。
2012年02月02日(木) No.524 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(88) 〜高齢者の夜間の冷えに伴う不眠〜


『85歳Mさん。普段から身体や足に冷えを感じており、寝つきは良いのですが、夜間に何回も眼が覚めるようです。そして、眼が覚めるとトイレに行く際に身体が冷え切ってしまい、もう眠れなくなってしまうので、何か良い治療法はないかというご相談で来院。』
 Mさんの症例は、夜間の中途覚醒時に習慣的にトイレへ行き、そのたびに冷えによって入眠が妨げられたもの、というように解釈できましたので、まず寝るときに枕元にお湯と『麻黄附子最細辛湯(マオウブシサイシントウ)』を用意してもらい、夜間に眼が覚めたらこれを飲んでもらうように指示しました。これを繰り返してもらったところ、身体がすぐに温まるようになり、トイレへ行って戻ってきてもすぐに眠れるようになったとの事でした。


 『麻黄附子最細辛湯』は高齢者には使いやすく、かつ即効性のある漢方薬です。我々は排尿した後に、あたかも寒さにあたったかのように身震いすることを度々経験しますが、高齢者ではトイレに行った後に気分が悪くなって倒れてしまう、いわゆる排尿後の迷走神経反射による失神にも似たようなことが起こっている可能性もあります。
つまり、気分が悪くなったためになかなか寝つけなかったとすると、『麻黄附子最細辛湯』を事前に飲んでもらってからトイレに行くことで、それを予防できたと考えられます。
 不眠に対しては、「頭寒足熱」つまり頭が冷えて足が温まるとよく眠れるように昔から云われており、一般的には、頭が熱くなって足が冷たくなると眠れないタイプが多いようです。このような場合は、寝る前に『酸棗仁湯(サンソウニントウ)』など飲んでもらいますが、高齢者になると、Mさんのように逆に温めて眠れるようになる症例も少なからずいらっしゃいます。
2011年12月29日(木) No.519 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(87) 〜終末医療と漢方薬〜


『87歳Nさん。高齢で寝たきりに近い状況で、風邪をひいて治りが悪いため、往診で点滴を受けているが、日に日に体力が落ちてきて食事も喉を通らなくなった。漢方薬も工夫して投与してもらっているが、はかばかしくない様子。本人は言葉を発するのも大儀なのか、ただただボーッとしている。もうダメかと思うけれど何か手だてはないものかと相談されました。』


 知り合いの娘さんからのお電話による相談でしたが、漢方医学の立場では、「裏寒(リカン)」(身体の内部が冷えている)という状態に陥ったために風邪の治りが悪いばかりか生命力が衰えているために認知症のような状況になっているのではないかと想像されました。既に投与されている漢方薬には「裏」を温める生薬は含まれていないようでしたので、以前娘さんが当院に受診していた頃に処方した『人参湯(ニンジントウ)』と『附子末(ブシマツ)』を合わせて飲んでもらい、身体を温めるようにお話しました。
 後日、喜びの連絡がありました。『人参湯』と『附子末』を飲んでからは、元気を取り戻したとの事でした。
 『人参湯』は消化器だけでなく心肺も全身も同時に温め、生命力を高め、冷えに起因する鼻水・咳・喘息にも効果のある漢方薬です。他の部位と比較して胸を触ると冷たいときは特に有効です。最近の乳幼児はよく診ると隠れた「裏寒」に陥っていることが意外に多く、乳幼児の諸疾患にも用いる医師もいます。
 Nさんの症例のような著しい体調不良に対して現代医学の立場では経過観察しか手がないときでも、漢方薬に温裏薬(内部を温める薬)があることを知っていれば、患者さんのお役に立つことがあります。漢方薬を扱っている者にとっては何とも嬉しい限りですね。
2011年12月01日(木) No.514 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(86) 〜冷え性と漢方薬②〜


 『23歳Mさん。子供の頃から寒がりで、特に手足が冷たく、腰回りの冷えも自覚する。熱い風呂を好むが長湯するとのぼせやすい。冷たいものをよく摂る。最近はめまいや立ちくらみもよく起こるようになったため、漢方薬による体質改善?を希望して当院に来院。』
 Mさんの冷えは手足や腰周りなどの局所が中心であること、冷たいものをよく摂取していること、便秘や肌荒れと比較的強い月経痛を認めることに加えて、舌が暗赤色で下腹部に圧痛を認めることなどから、「お血(オケツ…詳細は以前の号参照)」による冷えと捉えて、『桂枝茯苓丸加薏苡仁(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)』を処方しました。1週間後、「手足はあまり冷えなくなった。立ちくらみは変わらない。」3週間後も「めまい、便秘、月経痛はまだ変わらない。」という時点で、めまい・立ちくらみを目標にして、『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』を併用してみました。1ヶ月たって、「めまいも少なく、便通も良い。今回はいつもよりも月経痛が軽かった気がする。」との事。


 さらに2ヶ月飲んでもらい、暖かくなった季節の影響もあるのでしょうが、手足の冷えは消失しました。めまいも一月に数回あったものが、1回あるかないか程度にまで改善していました。その後3ヶ月分追加処方しましたが、その後は受診しておりません。
 冷えの改善を目的に漢方薬を希望される方は多く来院されますが、大部分は温める生薬が含まれた薬を用いることが多いです。しかし、Mさんのように冷えの原因が末梢の血流障害、いわゆる「お血」の場合にはそれを改善する『桂枝茯苓丸』などが適応になるわけです。実際の臨床では、なかなか判別が困難な症例もありますが、問診で「長湯するとのぼせる」「冷え性なのに冷たいものを採る」という些細な矛盾点に注意したり、実際にどれくらい冷えているのか手で触って確認することも大切です。
 意外と冷えを訴えている割には、手足はさほど冷たくない方もいらっしゃいます。このような方に温める漢方薬を処方すると逆効果になってしまうことがあり、私自身も
幾度か苦い経験をしております。
2011年11月04日(金) No.509 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(85) 〜雨降り前の頭痛と膝の痛み〜


 『77歳Sさん。歩行時に左膝の痛みを自覚するようになり、徐々に痛みが悪化してきたため、整形外科を受診し、膝関節症の診断を受けた。友人に漢方薬が良いのでは?と勧められて当院に来院。』


 当院は整形外科ではないので専門外来を継続して受診することをお勧めしましたが、何か漢方薬を試したいとの強い要望で診せていただきました。左膝の内側部を中心に痛み・腫れ・熱感を認め、風呂などで温めると痛みが軽くなるようでした。暑がりの寒がりで、冬場は腰から下の冷えを自覚するとの事。お腹はガマガエルの様(失礼!)で、皮膚はしっとりと湿っていて、口の渇きも訴えていました。舌を拝見すると歯型の痕がしっかりありましたので、「水毒(水分のバランス異常)」と解釈して『防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)』を飲んでもらいました。
 2週間後、「痛みがとれた。動かしたときに痛みは少しあるが、気にならない。」左膝に触れてみると、張れがたしかにひいていましたが、熱感はまだありました。しかしながら、自覚症状が良くなっているので、続けて飲んでもらうことにして1ヶ月後、「かなり歩けるけど、明け方冷えると膝が痛む。」というので、『附子(ブシ)』(温める・痛みをとる)を追加して飲んでもらいました。1ヵ月後、「朝方足がポカポカして、膝の痛みも無くなった。ただ、最近すこし動悸がする。」この動悸は『附子』の軽い副作用なので高齢の方には注意しなければいけません。『附子』は一度中止し、『防己黄耆湯』はそのまま飲んでもらっていますが、2年経過した現在、「雨降り前の頭痛が最近無くなった。」との事でした。
 「雨降り前の頭痛」は以前に低気圧が近づくと頭痛がする症例でもお話ししましたが、『五苓散(ゴレイサン)』という「水毒」の漢方薬がよく使われますが、Sさんも「水毒」に起因した膝の痛みでしたので、同時に「雨降り前の頭痛」も改善したのだと思われます。こういう効き方は漢方薬ならではのもので、いつも生薬の妙に感心させられますね。
2011年10月06日(木) No.504 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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