タイトル

女性と漢方(104)〜繰り返すアフタ性口内炎〜


 『41歳Nさん。数年前から口腔粘膜や舌の先にアフタ(楕円形の浅い潰瘍)ができやすく、最近は月に1〜3回位出現するようになったとの事。漢方薬が良いのでは?と友人に勧められて当院に来院。』
 Nさんは、来院時に口腔内に3か所アフタを認めました。『半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)』をまず2週間飲んでもらいましたが、初診時のアフタは3〜4日で治りましたが、すぐに新しいものが2個出現したとの事でした。さらに4週間続けて飲んでもらいましたところ、再発しなくなったようでした。追加で2ヶ月分処方しましたが、飲み終わって1週間薬が途切れた頃に、小さいものが1個できて、その後は出現していないのですが、本人は「心配だから、予備に薬をほしい」との事で久しぶりに来院してくれました。


 『瀉心』とは、「みぞおちのつかえをとる」という意味で、『半夏瀉心湯』はよく慢性胃炎などに使われますが、実は「口内炎」にも大変よく効きます。
 アフタの原因ははっきりしませんが、胃腸に炎症があったり調子が悪かったりする人に出来やすいことから、『半夏瀉心湯』に含まれている「黄苓(オウゴン)」「黄連(オウレン)」の清熱(冷やす)作用により軽い慢性胃炎の消化管炎症を抑えている点が有効性に関連がありそうです。また、ただ冷やすだけでは調子が悪くなることもあるので、「人参(ニンジン)」「乾姜(カンキョウ)」など温める作用のある生薬も配合されており、とてもバランスのよい漢方薬です。
 飲んでいると、「胃腸の調子も良くなって口内炎も治る」とおっしゃる方が多いです。早ければ数週間で調子がよくなる場合が多いのですが、難治性のケースでは何ヶ月か続けて飲んでいるうちに症状が出る回数が減ったり、軽くなったりする方もかなりいらっしゃいますので、口内炎でお悩みの方は一度試してもよろしいかと思います。
 ただし、ヘルペスで口内炎になっている方には効きませんので、ご注意を!(その方には別の漢方薬になりますので)
2013年04月26日(金) No.600 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(103)〜頭痛と漢方薬①〜


 『75歳Mさん。60歳頃よりときどき頭重感があり、数ヶ月前から朝目覚めた時の頭痛が始まった。最近は常時頭重を感じる。肩こり、手足のしびれ感もあり、熟睡ができず、朝早くから目が覚める。夜間2時間ごとに排尿し、便秘がちでもある。他院にて『八味地黄丸(ハチミジオウガン)』を処方されて飲んでいるが、最近胃が不調との事。漢方薬の相談にて来院。』
 Mさんは、48歳で脳血管障害を指摘されたことがあり、いつの頃からか軽症高血圧といわれるも降圧剤は飲んでいないとの事でした。生命の危険がある頭痛では、西洋医学的治療を優先することは当然ですが、Mさんのように高齢者の頭痛、更年期障害に伴う頭痛、月経時に悪化する頭痛、鎮痛剤で胃腸障害をきたす虚弱者や三叉神経痛などには漢方治療を試みる価値はあるかと思われます。


 Mさんには、『釣藤散(チュウトウサン)』を飲んでもらい、『八味地黄丸』に含まれている「地黄(ジオウ)」が胃を荒らしている可能性があるため、一時休薬してもらうことにしました。投与後、5日で頭痛が軽くなったようで、2週間後の来院時は「目もスッキリしてきた」との事。2ヶ月間飲んでもらい、「頭痛・頭重感ともになくなって快調です」とおっしゃるので継続してもらいました。最近薬を取りに来ないと思いきや、別の件で来院された時、「あれ以来、軽い頭重を感じることはあるが痛むことはありません」とおっしゃっていました。
 『釣藤散』には、主薬に脳血管を広げて脳循環を良くする「釣藤鈎(チュウトウコウ)」が含まれています。また、Mさんが同時に「ほてりが良くなった」と云われたのは、『釣藤散』に含まれている「石膏(セッコウ)」(冷やす作用をもつ)が効いたと思われます。ですから、「冷え症」の方にはむしろ『釣藤散』は適応にはなりません。
 中高年になり、高血圧などの生活習慣病の傾向が出てくるとともに、慢性的な頭痛がするといったことがある場合、特に起床時あるいは午前中に調子が悪い方に有効なのが『釣藤散』です。最近では、頭部の動脈硬化を改善したり、認知症の予防にも有効な点が報告されています。
2013年04月03日(水) No.595 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(102)〜陰性食品で痛みが悪化〜


『75歳Nさん。変形性腰椎症、椎間板ヘルニアにて整形外科通院歴ある方で、腰痛に効く漢方薬を試したいとの事で来院。』
 Nさんは、1年以上前に来院されている方で、実は『八味地黄丸(ハチミジオウガン)』と『苓姜朮甘湯(リョウキョウジュツカントウ)』を長年飲まれています。今回の症例を紹介する理由は漢方薬自体からは少し離れた内容です。Nさんが「最近漢方薬が効かなくなった気がする。」というので、漢方薬を替えてみましたがあまり変化はみられず、生活習慣で変えた点はないか聞いてみました。すると、「健康にいいと云われて、2〜3ℓの水を飲んでいます。果物も多く採るようにしています。」との事でした。


 東洋医学では、治療しても十分な効果が得られない場合、食事や運動などの養生にも注目します。和漢食にはいくつかの基本がありますが、その中の一つに「陰性食品(食べると体を冷やす食品…冷たいもの・生もの・砂糖・酢など)を採りすぎない」という考え方があります。Nさんは陰性食品である果物、清涼飲料水の過剰摂取にて疼痛が悪化した例でした。他に、秋になり、ぶどう・なし・りんご・柿・みかんの採りすぎで疼痛が悪化したり、喘息発作が再発した例もありました。
 Nさんは、食生活の改善後は疼痛も良くなり、結局は以前と同じ漢方薬に戻して飲んでいます。最近は健康食品の酢を常用量の2倍服用して、「冷え」を訴える外来患者さんもいらっしゃいました。
 和漢食では、基本的には「陰性食品は採りすぎない」の他に「菜食を中心」「揚げ物・油炒めは採りすぎない」「少食」が掲げられています。一般的には、食物の陰陽はあまり認識されていませんが、長期間の疼痛・冷え症などは意外と食生活が原因のこともありますので、一度ご自分の食生活を確認してみてもよろしいかもしれませんね。
2013年03月07日(木) No.590 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(101)〜慢性的な痰の少ない咳②〜


 今回も、比較的痰の少ない慢性的な咳のお話です。
『55歳Mさん。5ヶ月前から無色透明の痰と咳が持続する。他院にてCT検査から肺炎の可能性が高いと診断され、気管支鏡検査まで行うが菌の特定はできなかった..
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2013年02月07日(木) No.585 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(100) 〜慢性的な痰の少ない咳①〜


『29歳Nさん。アトピー性皮膚炎にて皮膚科通院中。春と秋になると、咳が止まらなくなる。内科を受診して、咳喘息と診断され、吸入ステロイドや抗ヒスタミン、鎮咳薬などが処方された。治療で、症状は軽減したが、完..
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2012年12月28日(金) No.579 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(99) 〜常に痰のある咳〜


『35歳M歳さん。7日前に風邪をひいた。近医にて抗生剤・去痰薬・解熱鎮痛薬を処方され、熱はすぐにひいたが、その後も咳が止まらず、咳のために夜も熟睡できない。痰がらみもあり、痰は黄色で粘っこい。咳は夜間になると悪化して、横になるとひどくなる。とにかく咳をどうにかしてほしいという希望にて来院。』
 Mさんは妊娠中で咳き込むとお腹も張るようなので、切迫早産の心配もあって来院されました。最近は「副鼻腔気管支症候群(SBS)」という概念があり、マクロライド系抗菌薬や去痰薬が有効とされてはいますが、なかなか治りきらずに苦慮されている方もいらっしゃいます。急性期を過ぎたいわゆる「慢性咳嗽(がいそう)」を漢方医学としてアプローチする場合にまず重要な点は「常に喀痰があるかどうか」です。


 常に痰がある場合は、次に「痰の性状」で処方を考えます。
①透明で多量な痰 
②黄色から白色で大量な痰 
③黄色い粘着な痰 
に分類しますと、Mさんは③に該当し、『竹筎温胆湯(チクジョウウンタントウ)』を処方しました。「夜間、寝ようとすると咳のために眠れない」点はこの漢方薬を使用する際のキーワードになります。
 一方、①の場合は、特に明け方に痰や咳が増えることが多く、『苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)』を処方したりします。②の場合は、日中・夜間かまわずに咳や痰があり、『清肺湯(セイハイトウ)』は有効です。
 このように、漢方薬は痰や咳に関しても、細かい配慮が構成される生薬によってなされています。痰が比較的少なく、「咳喘息・アトピー咳嗽」に関しては次号に解説したいと思います。慢性咳嗽で悩まれている方は漢方薬も治療の選択肢に一つに加えてもよいのではないでしょうか。
2012年11月30日(金) No.574 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(98) 〜不妊症と漢方薬①〜


『30歳Sさん。結婚5年目で子供に恵まれない。婦人科では「器質的な異常はない」と云われた。排卵誘発剤を使用すると、体調不良?となるために中止した。漢方薬を試してみたい希望にて来院。』
 Sさんは非常に冷え症で疲れやすく、多汗な方でした。5年目から季節の変わり目になると、顔が赤くなり、ブツブツとした吹き出物ができやすいようです。このため化粧ものらない。月に1回はのぼせる。口が渇く感じもすることが多い…と訴えも多い方でした。
 体格は痩せてやや小柄で、血色は蒼白で、皮膚のつやが悪い印象でした。まずは、漢方薬が希望でしたので、『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』を2週間飲んでもらいましたが、全く変化なしとの事。もう2週間辛抱して飲んでもらったところ、「手足が少し温かい感じがしてきた」と云うので、『附子(ブシ)』を加えてさらに温めてみることにしました。
 その後は、「かなり温かくていい」と3ヶ月毎に薬を取りにきていましたが、こちらもSさんのことを不妊と忘れかけていた頃(ちょうど飲み始めてから7ヶ月位)に突然「生理が遅れています」と来院され、妊娠と判明しました。


 Sさんは数ヶ月集中的に漢方薬を服用して、結果的に妊娠したケースでしたが、これをマネして同じ漢方薬で妊娠すると早合点してはいけません。要は、Sさんは「冷え」が悪さをしていたのです。この「冷え」を治す治療手段としての漢方薬が有効だったにすぎません。
 このように、漢方薬は「証」(身体の状態)を把握することが重要なカギですので、「不妊」という点より「冷え」という状態に着目することが大切なのです。よく、「妊娠できるような漢方薬はありませんか?」と問われることが多いのですが、答えは「その方の身体の状態によって、使うお薬は全く違います」というお返事になります。まずは、ご自分の「身体の状態を良くする」ことが漢方医学的な不妊治療につながるとご理解下さい。
2012年11月01日(木) No.569 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(97) 〜ストレスをのりきる②〜


『41歳Nさん。32歳で第2子出産後、実家の仕事に復帰し、実母の病死や養父の老人ホームでのトラブルで頻回の呼び出し、PTAの役員になったりで、いろいろなことが重なり、不眠がひどくなった。精神科を受診し、安..
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2012年10月04日(木) No.564 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(96) 〜しつこい咳〜


『34歳Mさん。風邪をひいて内科で感冒薬を処方されたが、咳がなかなか止まらない。寝汗が出て寝苦しいので、クーラー付けっぱなしにしている冷気のせいか?咳はさらにひどく、腹筋が痛い。食欲もなくつらい。授乳中ということで、当院に来院。授乳に影響がなくて安全な薬?を希望。』
 来院時、Mさんは咳き込むと、真っ赤な顔をしてとても辛そうでした。念のため、胸部レントゲンと血液検査を行いましたが、炎症反応も軽度で肺炎などの疑いもありません。『麦門冬湯(バクモントウ)』に去痰薬を併用してみましたが、水っぽい痰が出て咳き込み、余計苦しくなってしまうとの事でした。また、知り合いからよく効く咳止め?(リン酸コデインらしい)をもらって、寝る前までに4回飲んでみても咳は一向に収まる気配はないようでした。
 単なる夏カゼもここまでくると東洋医学では「少陽病(ショウヨウビョウ)」というややこじれたステージに進行しています。そこで「みぞおちは勿論、肋間筋も腹筋も咳で響いて痛む」という点から『柴陥湯(サイカントウ)』を飲んでもらうことにしました。


 3日後、開口一番「咳が止まったせいでよく眠れました。」というので、数日続けて飲んでもらいましたが、「2〜3日で少しずつ粘っこい痰が出るようになってかなり調子は良いです。」との事でした。
 『柴陥湯』は、「激しい咳」に効くことが多いのですが、直接「咳」そのものに効く生薬は含まれていません。しかし、Mさんの『柴陥湯』の効き方は完全に「鎮咳薬」でした。古典には「みぞおちを押すと痛みがある」ときに使うという腹証が記されていますが、激しい咳を伴うと、こういう状態になることはあるでしょう。
 日常診療で遭遇する「かぜ症候群」の中でも、「しつこい咳」には手を焼くことは多いです。このようなケースでも漢方薬が有効なことはしばしばあり、漢方薬の効き方には驚かされます。
2012年09月05日(水) No.559 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(95) 〜腰痛と漢方薬〜


『54歳Nさん。5年位前から腰痛を自覚するようになり、痛みは左臀部(お尻のあたり)から下肢外側にビリビリ感を伴い、鎮痛剤を飲んでも良くならない。夏になり暖かくなると痛みは自然と軽快し、秋から冬にかけて寒..
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2012年08月02日(木) No.554 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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