タイトル

女性と漢方(114) 〜関節痛と肥満?〜


『40歳Nさん。数か月前から手指の関節痛を感じるようになり、他院にて関節リウマチではないとの診断。漢方薬を試してみたいとの事で来院。』
 Nさんには、最初は『薏苡仁湯(ヨクイニントウ)』(ハトムギが生薬として含まれています)を、次に『防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)』を処方いたしましたが、関節痛は全く消えず、鎮痛剤を併用するに至って1年ほど経過して、朝方に手指の屈伸で痛むが後は気にならない程度のようでした。しかしながら、その頃から足底部の痛みを訴えるようになり、朝起床時の数歩が特に痛むとの事でしたので、以前からの『防已黄耆湯』に痛みを取るために『附子(ブシ)』(トリカブトを無毒化したもの)を加えてみました。痛まない日もありましたが、カゼで発熱したときは両手の小関節が全部痛むという事もありました。しかし、関節が腫れたりするような所見は一切ありませんでした。


 ある日、めずらしく?全身倦怠感を訴えて薬を取りに来院したときに、最近肥満気味(元々だと思うのですが…)というので、便秘は無かったのですが、『防已黄耆湯』を『防風通聖散(ボウフウツウショウサン)』(巷では「痩せ薬」と称されている。本当はそうではないのですが…詳細は以前の号参照)に変えて二週間だけ飲んでもらうことにしました。
こちらに変えたところ、「飲むと30分もすると尿意が起きて、顔や手足がスッキリして、顔や手足の痛みが軽くなる感じがする。」との事でしたので、本人も鎮痛剤を飲まなくなりました。
 鎮痛剤を止めて最初の一か月間余りは、痛みを訴えることもありましたが、その後は少なくなったようです。残念ながら体重の増加の歯止めにはなりませんでしたが、その後は便通も良く、体調は一層良くなり、手足の痛みを訴えることがなくなったとの事です。
 Nさんのように、『防風通聖散』が利尿効果を発揮して、結果として難治な痛みを鎮めた例は実は漢方の古典にも記載があります。痛みに対して最初から『防風通聖散』を処方することはほとんどありませんが、今回の症例を通じて、「木をみて森をみず」の治療ではいけないと反省させられました。
2014年03月06日(木) No.651 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(113) 〜東洋医学における「中庸」の意味〜


「中庸」とは、「偏りのないこと」を意味する言葉です。『論語』の中で孔子は「過不足なく偏りのない徳」を「中庸」と呼びました。また、江戸時代の有名な儒学者、貝原益軒は著書『養生訓』の中で、「養生の道は中庸..
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2014年02月06日(木) No.646 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(112) 〜慢性胃炎?に隠された瘀血(オケツ)〜


『35歳Mさん。元来、胃腸の調子はよくないようで、過敏性腸症候群の既往がある。職場でトラブルがあった後、胃痙攣で救急病院に搬送されたこともある。その後、胃もたれが持続し、内視鏡などの検査をするも異常所見はなく、一般薬を処方されたが、改善に乏しく、漢方薬を希望して来院。』
 Mさんは、来院時の印象はまず「眼の下のクマ」が目立ったことでした。また、職場のストレスが強く、常に焦燥しきっているようでした。 舌を診ると、白い苔は厚くこびりついており、舌全体は暗赤色で舌を裏返すと、「舌下静脈」が著しく紫色で怒張していました。以上の症状は「血(ケツ)」の異常の中でも、瘀血(オケツ…血の滞った状態、詳細は以前の号を参照)の典型例です。


 本人は以前に漢方薬を飲んだことがあり、『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』で胃痛が、『六君子湯(リックンシトウ)』で胃もたれがそれぞれ改善したので、できればそれを処方してほしいとの事でした。そこで、この本人の希望を尊重し、治療を開始しました。二週間後、症状は悪くはならないものの、「無理やり胃が抑え込まれているようで、胃の存在感?を感じる」といいました。
 そこで、東洋医学的に再考しても瘀血の改善がやはり優先するのではと思い、瘀血の改善薬として『桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)』を処方しました。数日で病状は好転しましたが、一応、胃もたれも考慮して、『六君子湯』より生薬を減らした『四君子湯(シクンシトウ)』を一緒に飲んでもらいました。瘀血の改善効果なのか、頭痛・肩こりや月経に関する症状も改善しました。2ヶ月飲んでからは、ほとんどの症状が消失したので『桂枝茯苓丸』のみにしましたが、以後の経過も順調でした。
 半年後に来院されたときは、ストレスのない職場に転勤されたとの事で、それを機に当院での治療も終了いたしました。Mさんにとっての一番の治療は職場を変えたことかもしれませんね。
2013年12月27日(金) No.640 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(111) 〜かぜの考え方と漢方②〜


 前回は、かぜの対応方法はまず現時点での身体の状態が、どのステージにあるかの把握が大切であることと、「かぜの引き始め」にも相当する「表寒」のステージの対応についてお話しました。かぜは病状の位置が「表」(体表)から「裏」(身体の内部)へ進んでいきますが、途中に「半表半裏」(咽頭や口腔内などの表と裏の中間位置)というステージがあります。これは、症状が「表」からやや内側に移行した状態です。咳・痰・喉の痛み・胃の不調、そしてこのステージでしか現れない「往来寒熱」(悪寒と熱感が交互に出現すること)が認められることがあります。また「胸脇苦満」と呼ばれる胸から脇にかけての不快感(吐き気などを含む)が出現することもあります。


 このステージになりますと、「柴胡(サイコ)」という生薬が治療のカギになりますが、中でも『小柴胡湯(ショウサイコトウ)』はよく用いられる漢方薬です。「喉の痛み・熱感」が強ければ、熱を収める「石膏(セッコウ)」や喉飴などによく含まれている「桔梗(キキョウ)」をこれに加えたりします。
 インフルエンザと診断され、抗ウイルス剤などで解熱を得たあと、咳や胃腸の不調が続くことがよくあります。もともと、『小柴胡湯』は感染症がこじれた場面で適応となるケースが多く、このような局面で現れる症状に対応する生薬がバランスよく配合されています。
さて、『小柴胡湯』は「柴胡(サイコ)」や「半夏(ハンゲ)」といった乾かす生薬が含まれていますから、用いる場合には「身体が渇いていない」ということが大前提になります。それでは、渇いていないことの証明はどうすればよいのでしょうか。
 それは舌をみて乾燥していないことを確認することでなされます。通常の舌には適度な粘り気がありますが、身体が渇けば舌も乾燥傾向になります。ちなみに「裏」のステージに近づくと、舌には「苔(コケ)」付着するようになります。
 舌の状態からは様々な情報が得られますので、東洋医学的診断にはかかせない手技です。風邪のこじれた状態になられた方は、ご自分の舌を一度鏡でご覧になってはいかがでしょうか。
2013年11月29日(金) No.635 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(110) 〜かぜの考え方と漢方①〜


 漢方でのかぜの対応方法は、まず現時点での身体の状態がどのステージにあるかの把握が大切です。 かぜは身体の外からやってきて、徐々に内部に侵攻すると考え、東洋医学では症状も「表」から「裏」に向かって変化..
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2013年11月01日(金) No.630 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(109) 〜PMS(月経前症候群)と漢方薬〜


『32歳Mさん。24歳ごろから、月経前のイライラがあった。2年前に出産して月経が再来して以来、月経3〜4日前から怒りっぽくなり、過食による体重増加、眠気と倦怠感などの症状が強くなった。最近は料理を作るのが苦痛でたまらない。PMS(月経前症候群)ということを知人から聞いて、当院に来院。』
 PMSの本質は、東洋医学的には「気滞(キタイ)」(気がスムーズに流れない状態)がベースにあることが多く、当然「イライラ感・怒りっぽい」といった精神症状が出るのですが、「気滞」により「水・血」のバランスの乱れも引き起こします。それにより、「頭痛・めまい・頭重感」や「むくみ・体重増加・尿量減少」などの症状が出現します。
 Mさんは、下半身の冷えが強く、秋口からカイロを使うそうです。また、PMSによくみられる偏頭痛もあり、軟便傾向でむくみやすいとの事でした。PMSの第一選択薬ともいえる『抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)』を飲んでもらいましたが、一ヶ月でイライラは消失しました。三ヶ月経過してむくみが出てきたというので、『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』を併せて飲んでいただきました。その後、月経周期も安定し、調子は良いようです。


 「気滞」になると「うつ状態」もよく現れますが、Mさんの場合のキーワードは「料理を作る気がしない」でした。実は「うつ状態」を見極めるポイントで「日頃できていたことができなくなる」という点は大変重要で、Mさんの『家事ができなくなる』は見逃してはなりません。
 PMSとは、月経の2週間ないし1週間位前からおこり、月経開始とともに消失する、周期性のある一連の身体的、および精神的症状を示す症候群(いろいろな症状の集まり)です。PMSの多彩な不定愁訴は①抑うつ気分、イライラ、怒り易い、ののしり ②頭痛、めまい、ふらつき、転倒 ③浮腫(むくみ)、体重増加、尿量減少 ④過食、眠気、倦怠感などがあります。周囲の方は、女性にはPMSという病気があるということをふまえて接してあげる気持ちも大切です。女性には男性にはない特有の病気があることを理解してあげましょう。
2013年10月04日(金) No.625 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(108) 〜夏になると胃腸が弱って倦怠感がひどくなる〜


『18歳Nさん。色白で普段は丈夫であるが、毎年6〜7月頃になると、からだがだるく、食欲もなくなり、下痢することが多い。今年は特に、だるさがひどく、やせてくるのが目立ち、母親とともに漢方薬を希望して来院。』
 Nさんには『真武湯(シンブトウ)』を処方してみましたが、一週間位で何となく力がついた感じがしたとの事。その後は下痢もおさまり、二か月後には体重はかなり?増えていました。
 Nさんには『真武湯』がよいのか『人参湯(ニンジントウ)』がよいのか迷うところでしたが、「おなかが冷える」という訴えを参考にして『真武湯』にしました。後で聞いた話ですが、夏場は冷たいアイスキャンディーが大好きで、日課のように食べていたようです。『真武湯』はむしろ冬になると下痢をするようなタイプに有効なことが多いのですが、最近は冷たいものをとる機会があるせいか、夏でも冷たいものを過剰に摂取して、冬のようなお腹になったりするので、『真武湯』も結構外来でよく処方します。
 以前に多汗症で『防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)』が全く効かない方に『真武湯』にしてうまくいったケースがありました。結局、裏(お腹)が冷えて表面に熱が押し出されてきたような形で、本人は冷えてる、冷えてるというんですが、汗がだらだらと出るタイプの女性でした。『真武湯』には温めて水をさばく生薬が含まれていますので、水が順調にめぐるようになったと思われます。


 私が子供の頃は、アイスキャンディーは勝手に食べると親によく叱られたものですが、最近は冷蔵庫も大容量で好きなときに好きなだけ冷たいものがとれる環境です。
 古典では冬に頻用されていた漢方が、現代では夏にも使われる状況に時代の流れを感じますね。
2013年09月05日(木) No.620 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(107) 〜小児の便秘と漢方薬〜


 便秘は、成人のみならず小児にもありふれた症状ですが、何日間排便が無ければ便秘なのか明確な定義はありません。2011年に行われた調査によると、小学生の約4割が排便1日1回未満である結果が出ており、一方..
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2013年08月01日(木) No.615 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(106) 〜老化と漢方薬〜


 お年寄りの治療ではもちろん基礎疾患の治療と管理が最優先ですが、一段落してくると治療内容もマンネリ化しがちです。プライマリーケアを担う医療スタッフとしても、患者さんにはますます元気になって「元気で健康..
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2013年07月04日(木) No.610 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(105) 〜漢方薬の服用方法〜


 今回は、漢方薬の服用について患者さんからのご質問も多いので、少し解説したいと思います。
『Q1…疲労倦怠感、食欲不振改善のために漢方薬を飲んでいるが、仕事が多忙なため、昼間の服用は困難です。3回服..
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2013年06月06日(木) No.605 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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