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女性と漢方(148)〜認知症に対する漢方薬〜


 「財布がなくなった」「赤いヤッケを着た女の人がいる」「私はどこも悪くない」「家族がみんなだらしないので気合いをいれている」「どうもお邪魔しました」。これらはレビー小体型認知症と画像診断された82歳の女性の言動です。正常な方でも発する言動ですが、時と場合によっては、周辺の人もおかしな言動と感じることがあります。
 当院には老健施設に入所中の方も婦人科のトラブルでよく来院されますが、認知症が進行してくると介助されるスタッフや家族の方もいろいろな意味で大変です。数年前から認知症に対する漢方薬として『抑肝散(ヨクカンサン)』が注目され、最近使用されている方も多いようですが、今回はこの薬に関してお話いたします。


 『抑肝散』は「釣藤鈎(チョウトウコウ)」と「柴胡(サイコ)」という生薬の組み合わせで鎮静の効果が強い漢方薬です。もともとは小児の夜泣きやひきつけに用いられていましたが、最近の研究では特にレビー小体型認知症の不眠・徘徊・不安・焦燥感・食行動異常・幻覚・妄想・暴言・暴行などの周辺症状にも有効なことが分かってきました。
 以前に認知症の女性に使用しましたが、数週間後には全般的に「落着き」が現れてきたようでした。その後、その方のご主人が妻の認知症を受け入れることができずに怒鳴り散らすことが多くなるという家族の訴えで、今度はご主人にも『抑肝散』を処方しました。
 夜泣きの子供には母親のストレスを考慮して母親も同時に服用(母児同服)することが効果的であることは古来から知られています。先の症例では夫婦同服によりご主人も妻の認知症の理解と「落着き」が現れてきたようです。
 『抑肝散』は近年になって頻用され、その有用性が特に「レビー小体型認知症の緊張状態を緩和する」という点で認められていますが、記憶障害、認知機能障害などの中核症状の改善には至っておりません。すなわち『抑肝散』は認知症そのものを治す漢方薬ではなく、日常生活動作の改善、介護者の負担の軽減につながる有用な漢方薬として位置づけられます。漢方薬の効果を過度に期待するのではなく、この点を理解して使うことが重要です。
2016年12月29日(木) No.776 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(147)〜インフルエンザに対する漢方薬〜


 抗インフルエンザ薬が十分に供給される保険システムを有する日本においては、2010年の新型インフルエンザ流行期には世界で最も死亡例が少ない国でした。症状の早期軽快、重症化の回避などの最近の薬の治療効果..
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2016年12月01日(木) No.772 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(146)〜慢性疲労症候群(CFS)と漢方薬(その2)〜


 慢性疲労症候群(CFS)は原因不明かつ難治性の疾患で発症すると長期にわたり疲労・倦怠感が持続し、日常生活にかなりの支障をきたしている方も多いです。残念ながら未だに西洋医学による効果的な治療法も少なく..
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2016年11月02日(水) No.768 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(145)〜産後の精神トラブルと漢方薬〜


『31歳Mさん。第2子の出産後から不眠が続き、突然イライラして物を投げつけたりすることもあり、来院されました。初診時は何もする気にならない状態や、突然悲しい気分になり涙を流したり、家族に暴言を吐くといっ..
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2016年10月05日(水) No.765 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(144)〜漢方薬解説(3)白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)〜


 今回は『白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)』についてお話します。「白虎」とは秋をもたらす神の名です。この漢方薬には、鉱物の「石膏」が使用され重要な役割りをはたしています。「石膏」は白い色でギブスや石膏像でおなじみですが、漢方薬としては身体にこもった熱を冷ます働きがあります。『白虎加人参湯』は熱中症に使われる漢方薬として有名ですが、熱中症のみならず「口渇」や「身体のほてり」のある症状にも全般的に有効です。口渇をきたす疾患は心因性のものが多い傾向がありますが、シェーグレン症候群などの口内乾燥症や薬剤性の口渇にも有効なことがあります。また、糖尿病性の口渇にもよいのですが、原疾患の治療が最優先であることは言うまでもありません。ほてりや発汗では、更年期症状のそれにも効果がみられます。私自身の経験では、ほてりのために不眠になった方に何度か用いて有効だった症例があります。また、皮膚の熱感を抑えるので、アトピー性皮膚炎にも用いることもあります。


 有名な詩人北原白秋の名前のように、白色は秋を象徴する色です。実は『白虎加人参湯』は秋をイメージし象徴した薬なのです。つまり暑さのために火照った体を、秋の涼しさのようにさわやかにする働きからの命名であります。『白虎加人参湯』は体の熱感やほてり、発汗、口の渇き、頭痛といった熱中症特有の症状が出現した時によく使用されますが、ペットボトルなどに溶かして少しずつ飲用すると熱中症の予防にもなります。
 いずれにせよ、『白虎加人参湯』は発汗しているもの・熱(熱感)のあるものに有効です。舌を診る場合には、舌が赤く、乾燥しているのが使用目標の特徴です。アトピー性皮膚炎の中でも皮膚の赤みが強く、熱をもっている状態の場合には『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』(清熱作用が強い)と組み合わせて用いるとさらに効果が高まり、私は皮膚炎の漢方治療の初期にこの組み合わせを用いることがあります。『黄連解毒湯』はもっぱら熱を取る薬であるのに対し『白虎加人参湯』は潤いをもたらす作用があります。ですから、乾燥しているときや脱水に近い状態に有効なのです。
2016年09月01日(木) No.756 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(143)〜夏場の冷えと漢方薬〜


 『40歳Nさん。最近、知人に勧められ水を多く飲むようになった。元々やせ型で冷え症だが、夏に入り夏バテ気味なので、栄養をつけようとこの1週間スイカなどの果物を連日食べ、昨日はかき氷を食べたところ、胃がつまった感じで苦しくなり、シクシク痛むようになり、内科で以前もらった薬を飲んだが、効果が今一つで来院時についでに?漢方薬を希望。』
 Nさんの場合、元々冷え症で胃弱の人が冷たい物を摂り過ぎた結果、漢方医学でいう「胃寒証」の状態と思われたので、こういう場合の第一選択薬である『人参湯(ニンジントウ)』を処方しました。結果は1週間で症状は改善したようでした。
 最近は血栓予防のため水をいっぱい飲むことを推奨し、体質に関係なくドンドン水分を採る人が増えてきました。漢方医学的には「熱証」または多血症傾向にあれば、ラジエータの役割として水を多く採ることは理にかなっていますが、「虚証」タイプ(詳しくは以前の号)で冷え症の人の場合はどうでしょうか?


冷え症で悩む方は一年を通じて絶えないようですが、特に夏場は体温を超える暑い戸外と冷房の効きすぎた室内などの激しい温度差、冷たい飲み物の摂り過ぎ、暑い夜の睡眠不足などの外的要因によって体温の調節をしている自律神経がバランスを崩し、冷え症になる人が多くなりがちです。
 冷たいものを摂取したことによる胃腸障害には『人参湯』『六君子湯(リックンシトウ)』などの「人参」を含む漢方薬が有効ですし、クーラー病としての冷えなどには『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』『五積散(ゴシャクサン)』などが用いられます。
 現代人は外の暑さから身を守る知恵と技術を持ち、外に対してはより涼しい場所へ、最終的にはクーラーの効いた部屋で過ごし、内に対しては身体の芯を冷やすために冷たい物を多く採るようになり、その結果として、夏なのに「冷え」という病態が特に「虚証」傾向の人には起こりやすくなります。
 体質に合わせた避暑法を取りたいものですが、私自身「虚証」タイプではありませんが、クーラーの効いた部屋でアイスキャンディーを2本食べた後は、こっそり『人参湯』を一包飲んでいます(笑)。
2016年08月04日(木) No.760 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(142)〜漢方薬解説(2)五苓散(ゴレイサン)〜


 今回は、幾度か取り上げたことのある『五苓散(ゴレイサン)』についてお話します。『五苓散』は「沢瀉(タクシャ)・猪苓(チョレイ)・茯苓(ブクリョウ)・白朮(ビャクジュツ)・桂枝(ケイシ)」の5つの生薬..
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2016年06月30日(木) No.752 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(141)〜いわゆる虚弱児と漢方薬〜


 今回は女性に限ったお話ではありませんが、お子さんをもつ母親に関連した内容です。「虚弱児」とは、医学上の明確な定義はなく、多くは体調不良などの理由で学校を休みがちな児童・生徒に対して使われてきた言葉です。病気にかかりやすく治りにくい、発熱・頭痛・腹痛などの症状をしばしば訴える、疲れやすく回復が遅い、神経質、無気力、発育不良などがみられる児童を身体虚弱児としてきました。


 漢方医学では身体を養う働きを「気・血・水」に分けてとらえますが、このうちの「気」(目にはみえない生命エネルギーのようなもの)が何らかの理由で減少した状態(「気虚」といいます)になるとウイルス感染やストレスなどの攻撃を受けやすくなり、風邪をひきやすくなったり、疲れやすくなったりします。「気」の供給は、出生前に親から受け継いだ生命力としての「先天の気」と、出生後に食事や呼吸によって外から取り込む「後天の気」に大きく分けられます。
 出世後早期から成長障害がみられるなど、先天的に虚弱な状態が考えられる場合には『六味丸(ロクミガン)』などを使用しますが、胃腸虚弱による吸収障害などが考えられる場合には、胃腸の働きを補う『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』は第一選択としてよく用いられます。一方、胃腸虚弱などはなく、咽頭炎・中耳炎などを繰り返したり、扁桃腺やリンパ節の腫脹を繰り返したりする子どもには、『柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)』をはじめとする「柴胡剤(柴胡という生薬が配合された漢方薬)」がよく用いられます。
小児は、成人と比べて体内水分量が比較的多いため、時に「水」のバランス異常による症状(「水毒」といいます)として、乗り物酔い・めまい・ふらつき(特に天候不良時に悪化しやすい)などが起こりやすいです。この場合には、「水毒」を改善する生薬が配合された『五苓散(ゴレイサン)』『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』『半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)』などの漢方薬を使用します。
 入園や入学してから少し経ちましたが、お子さんがこのような症状で該当してお悩みの場合は、漢方薬も一つの治療の選択肢として考慮されてもよろしいかと思います。
2016年06月02日(木) No.748 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(140)〜鼻炎に小青竜湯プラス〜


 『小青竜湯(ショウセイリュウトウ)』は花粉症などのアレルギー性鼻炎や鼻かぜに多用される漢方薬で有名ですが、鼻の症状でも鼻づまりよりは鼻汁がひどく、特に透明でサラサラとした鼻汁でくしゃみを伴う場合に有..
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2016年04月28日(木) No.744 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(139)〜『葛根湯(カッコントウ)』の使い勝手〜


 『葛根湯(カッコントウ)』はいまやドラッグストアにも配置されており、漢方薬をあまり知らない方でも「かぜの漢方薬」といった印象でご存じかもしれません。しかしながら、実際に『葛根湯』が「かぜ」に対して発..
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2016年03月31日(木) No.740 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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