タイトル

女性と漢方(39)〜冷え性と漢方薬(1)〜


『23歳Fさん。やせ型の色白な方で、これからの季節は特に手足が冷たく、寒いとお腹まで痛くなり、指先なんかは氷みたいになるとの事。以前は当帰芍薬散を処方されましたがあまり改善されなかったようです。どういう漢方薬が良いのかご相談に来院されました。』
Fさんが処方された『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』は「婦人の聖薬」という別名があるくらいに有名な漢方薬です。たしかにこの方は色白で古人のいう「芍薬美人」タイプで、いかにも『当帰芍薬散』が効きそうな印象を受けました。でも、以前飲んでイマイチだったとの事。


そこで手足の冷えに有効な生薬の「附子(ブシ)」が含まれる生薬で、水をさばく利水剤も含む『真武湯(シンブトウ)』を飲んでもらうことにしました。2週間後は「少し、前よりは暖かい感じはします。」との返事でしたので、「附子」の粉末をさらに加えて飲んでもらい、冷えてお腹が痛くなったら『大建中湯(ダイケンチュウトウ)』を追加して飲んでもらうことにしました。
一ヶ月後、「身体はだいぶ温かくなり、以前にような我慢の出来ない冷えは無くなりました。お腹はほとんど痛くなかったんですけど、前に外に居る時間が長くて、冷えてお腹が痛くなったので、云われたとおり『大建中湯』を飲みましたが、すぐに良くなりましたよ。即効性があるんですね。」との事。
『大建中湯』は、以前も紹介しましたが、イレウス(腸閉塞)対策で有名になった薬なのですが、元々は「お腹の痛みを温めて治す」薬です。つまり「冷えたときの腹痛」が使用するときのキーワードなのです。
若い女性の頑固な冷えは、強力な温薬(オンヤク)の代表選手である「附子」などで一度温めてあげないと、なかなか改善しないようです。つまり、身体が自らを温めることを忘れてしまった状態なのでしょうね。また、現代人の冷えは「水」も関わることが多く、お水の取りすぎも要注意なのです。
2007年11月30日(金) No.276 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(38)〜アトピー性皮膚炎を漢方薬で治す(3)〜


『29歳Uさん。アトピー性皮膚炎で皮膚科の受診歴ある方で、汗をふきふき診察室に入ってきました。体重?キロの肥満体で今年の夏は暑くて大変だったとの事。季節の変わり目にアトピー?が悪化するのか時々激しく痒くなり、皮膚症状も出やすいようです。ここ数年ステロイド軟膏のお世話にはなっていないものの何か漢方薬で体質改善?ができるのかとの相談で来院。』
とはいえ、皮膚のトラブル以外はとても楽天的な方で快活な印象を受けました。体質改善まではいかなくとも、Uさんは体型的にはいわゆる固太りタイプでしたので『防風通聖散(ボウフウツウショウサン)』を服用してもらいました。また、時々出現する皮膚症状に対しては、ジクジクをとる『消風散(ショウフウサン)』、熱を冷ます『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』を合わせて処方しました。(前々号でも紹介済み)
2週間後には、皮膚症状が4日に一度位となり、2ヶ月後には月に2〜3回ほどに軽快。6ヶ月の服用で、熱がりや汗も減り、身体も軽くなった感じなするとの事でした。体重は3キロ減のようです。


東洋医学では、肥満は余分な水分や血が停滞した状態と考えます。これらの停滞が病気をもたらし、身体の表面に現れ、さらに熱をもった結果として、皮膚症状が出現したのがUさんなのでしょうね。ですから、その治療はこれらの体内の停滞を取り除き、熱を冷ませばよいことのなります。Uさんの場合に特に大切なことは、肥満の解消です。
『防風通聖散』の名前の意味ですが、「防風」は生薬名で、風を防ぎ、痒みを消す働きがあります。「聖」とは耳からまっすぐに通るのが元の意味で、そこから、ものわかりが良い、さらに優れた人(聖人)という意味にもなりました。つまり、「通聖」とは体内に詰まったものを除去して、通りを良くし、その結果、身体が優れた状態になるという意味なのです。
ここで、一言注意を。『防風通聖散』は、熱がりの肥満体質の体調改善が目的であり、決して痩せるための薬ではありません。服用で体重が2〜3キロほど減量することもありますが、減量はあくまでも食事・運動療法等が大切ですので・・・
2007年11月06日(火) No.271 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(37)〜アトピー性皮膚炎を漢方薬で治す(2)〜


『32歳Tさん。幼少からのアトピー性皮膚炎で、さまざまな治療を重ねて症状は一進一退を繰り返しています。現在はリバウンドの急性期の症状である「全身が真っ赤でまぶたや湿疹部にむくみがあったり、汁がにじみ出してジクジクしている」わけではなく、少し落ち着いて、くすんだ赤みを伴ったカサカサの時期に入ってきているようです。漢方薬に興味?があり、試してみたいとの事で来院。』
Tさんのような「赤くてカサカサ」といった亜急性期の皮膚に対しては、基本薬としては『三物黄ごん湯(サンモツオウゴントウ)』を使うことが多いです。この薬には、「赤みをとる作用」「痒み止め作用」「体に潤いを与える作用」を持つ三種類の生薬を含んでいます。しかし、Tさんは顔中心に赤くてカサカサしている状態でしたので、『辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)』を処方してみました。この薬は鼻炎や副鼻腔炎の薬としては有名な漢方薬ですが、実は鼻の通りを良くする働きのほかに、清熱作用と皮膚に栄養を与えて水分を補うという作用ももっているのです。さらには、これらの効果を上半身(とくに首から上)に運ぶ作用のある生薬が配合されているので、顔中心のカサカサに効果があるのです。


さらにこの方はむくみも出やすいタイプ(実はぽっちゃりしています)なので、『防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)』も併用しました。これは大変有効でして、Tさんからは喜ばれました。皮膚症状の改善だけでなく、下肢のむくみも取れたようです。
アトピー性皮膚炎の場合は、「むくみ」にも注目して、基本になる薬にプラスしてあげることは漢方医学的にはとても重要なことなのです。
2007年10月04日(木) No.267 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(36)アトピー性皮膚炎を漢方薬で治す(1)


『28歳Sさん。2歳からアトピー性皮膚炎で26年間悩まされてきた女性で、いくつもの皮膚科を渡り歩き、いろいろな民間療法も試してみましたが、満足のいく結果は得られなかったようです。学生時代は比較的よかったのですが、働き始めてここ数年間は悪化して、体中が痒くて眠れないとの事。』


Sさんの皮膚は以前はジクジクしていつも顔にはかさぶたができていて、ステロイド軟膏を使うようになってから治まるようになったものの、今度はカサカサになってしまいました。つまり、元々はジクジクしてかさぶたが出来やすく、皮膚が赤く熱感をもつタイプのようでした。ステロイド軟膏を使っていると本来の皮膚の状態がわからなくなってしまうので、このように使う前の状態を聞くのは漢方薬を選ぶときにはとても大事な情報になります。
Sさんには、ジクジクをとるために『消風散(ショウフウサン)』、熱を冷ますために『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』を合わせて処方しました。この薬を飲んで2週間で何となくジクジク感は無くなってきたものの効果がはっきり出てきたのは約2ヶ月後でした。Sさん曰く「先月からステロイド軟膏を止めているんです。最近は表面に自分の皮膚ができてきた感じがします。
お風呂にはいるとまだ真っ赤になりますけど、ポロポロと皮がむけることが無くなって、痒み止めも使わなくてすんでいます。」との事。
保湿のために使っていたワセリン軟膏は半年で不要になり、夏場に汗で少し痒みが出たものの、十ヶ月で目の周りに軽い色素沈着を残すだけに改善しました。仕上げには体力を補う『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』という薬に変えて、半年後にはすべての薬を中止しました。
「ジクジクタイプ」と「カサカサタイプ」では、漢方薬の処方も変わります。Sさんは前者のタイプで湿気の多い夏場には悪化することが多いようです。今のところSさんは来院してないですが、今年の夏はうまくしのげたのでしょうか?
2007年09月06日(木) No.262 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(35)〜身体に熱がこもる〜


『32歳Rさん。がっちりとした体型のスポーツウーマンという印象の女性で、仕事から帰ってくると、頭痛に悩まされる。元来健康で、疲労感もないし、病気はほとんどしませんとの事です。脳神経外科でも異常は認められず、友人に漢方薬でも試してみてはと紹介されて当院来院。』
頭痛の時に、吐き気・めまいなどがあるか、イライラするか、といった質問を東洋医学では重要なのですが、Rさんは全く無くて期待?を裏切られました(笑)。ここでくじけては漢方を扱っている医者とはいえませんので、「頭痛の時に頭や身体は冷えますか?ほてりますか?」と『寒熱(カンネツ)』(詳細は以前の号参照)に関する質問をしてみました。すると「頭痛がひどくてわかりません」と素っ気無い返事でした。「温まるとひどくなるとか、逆に温かい食べ物が好むとか?」と聞くと、「のどが渇き、冷たい水をよく飲みます。風呂に入るとひどいです。」との事。


やっと手がかりが見えてきました。Rさんはどうも熱証タイプ、つまり身体が熱をもった状態の頭痛のようです。この熱は体温計で測れる熱ではありません。ただし、これだけでは状態が明確ではありませんので、どのような状態で起きるのか、あるいは悪化するのかを聞いてみました。「お仕事は?」「ゴルフのキャディーです。」日中に日当たりのいい場所で仕事をして帰宅しても熱が身体にこもって、頭痛の引き金になる、つまり軽い熱中症様による頭痛が本態だったのです。しかもRさんは、この仕事について間もないとの事でした。
この方には『白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)』を服用してもらい、翌日からは頭痛が軽くなり、2週間後の来院時には完全に軽快していました。この漢方薬は、身体の熱を冷ます作用があり、熱中症(日射病)や小児の高熱などによく使用されます。夏の暑い季節に外での行動が多い方は、身体と気候のバランスに注意された方がいいですね。ちなみにゴルフ好きの友人には当日『白虎加人参湯』を携帯させて、スコアをあげるのに一役買っています(笑)。
2007年08月02日(木) No.258 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(34)〜治ったはずの胃潰瘍?〜


『46歳Qさん。消化器科で胃潰瘍を指摘されて十数年経つ。胃潰瘍は内服治療で経過を年2回内視鏡(胃カメラ)で診てもらっており、「潰瘍はほとんど治っているから、そんなに痛むはずない。少し神経質になっているせいもあるのでは?」と主治医に指摘されるが、実際に痛いのだからどうしようもない。知り合いに紹介されて当院受診。』
Qさんの自覚症状は、空腹時に胃が痛み、寒いと胃がカチカチ?になる感じがして、お腹全体が張り、食べ過ぎなくても胃がもたれて胸やけがするということでした。この症状は季節の変わり目に特に悪化するらしく、他には生理不順はないが生理痛がひどく、出血量も多いようです。
舌をみるとうすいピンク色で、お腹は胃のあたりを押しても痛がりませんが、左右の腰の骨の内側あたりを押すとかなり痛がりました。血液検査では軽い貧血も認められましたが、とにかくQさんには東洋医学的には「お血(オケツ)」(詳しくは前号参照)が背景にある症状でした。そこで、『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』と『人参湯(ニンジントウ)』を処方しました。
効果は消化器科の先生に申し訳ないくらいに劇的でした。十五年間も続いた痛みが飲み始めて三、四日で消えてしまったのです。胃の重苦しさも胸やけもない。要するに、何ともなくなったのです。さすがに私も「ほんまかいな?(なぜか関西弁)」と思いましたが、『当帰芍薬散』の効果は1ヶ月後の生理ではっきり表れました。生理痛も弱くて出血量も少なく、胃痛のみならずこんなにラクな生活は久しぶりとの事でした。


Qさんは、その後順調に良くなり、『当帰芍薬散』は4ヶ月で飲まなくなり、止めた後も生理の調子は悪化せず、『人参湯』だけは本人も食欲が出ると気に入ってその後の転居先でも飲み続けているようです。
漢方薬を使っていますと、ときどきこのような「1発OK!」という劇的な効果にめぐりあいます。他の治療法では、こういう切れ味はちょっと味わえませんね。こういう症例を経験すると、劇的な効果を求めて私たちは懸命に効きそうな薬を探す努力を惜しまなくなります。患者さんからは感謝されるし、いわゆる「医師冥利に尽きる」気分を味わうときなのです。
2007年07月05日(木) No.253 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方33〜ストレスが原因の病気(その2)〜


『42歳Pさん。生来、神経質なところがあり、胃腸をこわしやすいタイプ。半年前、職場の配置換えがあって、それ以来体調不良が続く。同じ職場内とはいえ、新しい部署の人間関係にうまくとけ込めず、それを契機に不安..
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2007年06月10日(日) No.249 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方32〜高齢者のからだから潤いがなくなる?〜


『71歳0さん。最近皮膚がカサカサして乾燥する感じがあり、だんだんと身体に痒みを覚えるようになり、性器の周辺も痒いとの事で来院。本人曰く、皮膚科で老人性皮膚炎といわれて軟膏を塗っていたが、ちょっとはいいけどあまり効かない。年のせいだから仕方ないのかねーという話。』
加齢に伴う変化の一つに「潤」から「燥」への変化があります。お年寄りの皮膚はごわごわと乾燥して皺だらけであることは誰もがよく知っていますね。0さんの日焼けした顔は一見元気そうに見えますが、皮膚が全体的にカサカサして潤いがありません。口内も乾燥していて、舌には厚く乾いた苔がベットリと付いていました。


このような方を漢方で治療するときには、「薬で痒みを無理やり抑え込む」のではなく、「乾燥した皮膚を潤すことで、みずみずしい皮膚に戻す」ということを考えます。0さんには『当帰飲子(トウキインシ)』を処方しました。二週間後、「痒くて眠れなかったのがおかげでぐっすり眠れるようになった。」との事で、もう二週間続けてもらったところ、「最近皮膚がしっとりして、艶がでてきたよ。先生、これは若返りの漢方薬かい?」とおっしゃっていました。
乾燥するといっても皮膚だけではありませんね。
身体のどこの部分が乾燥するかによって、現れる症状も用いる漢方薬も変わってきます。
例えば、のどの奥が乾燥してカラカラになると、特に夜間に空咳が出るようになり、布団に入ると咳き込んで眠れないことを訴える方もいます。これも高齢者にときどき見られる症状で、これにはのどを中心に潤してくれる『滋陰降火湯(ジインコウカトウ)』という漢方薬がよく効きます。
腸が乾燥する(あまり適切な表現ではないですが)と、便がちょうどウサギの糞のようにコロコロと硬くなってしまいます。こういうときも漢方医学では「腸を潤して便に湿り気を与える」考え方で、『麻子仁丸(マシニンガン)』という薬をよく使い、便がつるっと気持ちよく出ることを目標にします。
このように、「乾いているものを潤す」という考え方はとても大切で、特に高齢者にはこの考えで上手く漢方薬を使用すると症状が軽快して大変喜ばれることがよくあります。
2007年05月10日(木) No.244 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方31〜慢性疲労?(その1)〜


『34歳Nさん。二人目の子供がほしく、元々生理も不順なので産婦人科でいろいろ治療を受けたが、はかばかしい結果は得られず。友人に紹介され、他院で当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)と小建中湯(ショウケンチュウトウ)を処方されて1年間飲んだが生理の具合もよくならず、妊娠もしなかった。最近はひどく疲れやすく、下痢もしやすく、体重は5キロ減ってしまった。妊娠も希望されて、かつ体調不良もあり、当院に受診。』
Nさんは、来院時にかなり妊娠にこだわりを持っていたので、『温経湯(ウンケイトウ)』(以前に紹介)を2週間処方してみましたが、何の変化もみられませんでした。そこで体力低下と下痢に加えて、めまいがよくあるというので、『人参湯(ニンジントウ)』と『真武湯(シンブトウ)』に変更してみました。


この処方に変えて2週間でめまいが治まり、下痢も良くなり、クタッとした疲れやすさが減り、家事もかなりこなせるようになったとの事。現在、薬を飲み始めて半年ほど経過しましたが、いつのまにか生理不順は解消されていました。妊娠はまだしておりませんが体調はいいようです。
『人参湯』の効く人は、いかにも力のおぼつかない印象はたしかにありますが、あまり「スタミナのなさ、体力のなさ」を強調して処方すると、こういう方はたいていイヤな顔をします。
多分、自分でもこの点は十二分に承知していて愛想がつきているのでしょうね。『人参湯』は、古来は下痢や嘔吐などで体力消耗した人を回復させるところに目的がありましたが、人参が今やいわゆる滋養強壮薬の代名詞のように扱われているのも事実です。
Nさんのケースは全体の効果が目に見えるようになるのに半年かかったことになります。よく「漢方薬はゆっくり効く。効果がわかるのに半年かかる」というのはこのことだろうと思います。これは「手応えがみつかるのに半年」ではありません。最近は効かなくても平気で飲み続けさせる治療法が多いせいか、効いても効かなくても同じ薬を疑問を持たずに飲み続けている人が多いような気がするのは私だけでしょうか?
2007年04月10日(火) No.239 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方30〜ストレスが原因の病気(その1)〜


『58歳Mさん。中肉中背。49歳頃から不整脈に気づき、52歳のときに発作に襲われ、内科にて心臓弁膜症と診断されて治療を開始した。しかし、症状は次第に悪化し、動悸がひどくて息苦しく階段も上がれない。調子が悪い..
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2007年03月10日(土) No.234 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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