タイトル

女性と漢方(48)〜寝起きの腹痛と登校拒否?〜


『小学校4年生Jちゃん。2年生の頃からしょっちゅう頭痛がおこり、朝起きるとおなかが痛くなり、学校へ行く前にはいつも泣きべそをかいている。学校に行ってしまうと学校内では全く問題はない様子との事。お母さんが登校拒否ではないか?と相談のために来院。』
おなかの調子が悪く、よく下痢をするお子さんということでまずは『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』を処方しましたが、こちらはうまくいきませんでした。夏バテもあってかフラフラするという訴えをキーワードに『真武湯(シンブトウ)』に変更してみました。効果はすぐに現れて、朝泣かずに起きるようになったようです。下痢も軟便程度になり、気にならなくなったとの事。しかし、気温が下がる日があると(北見のように暑い日と寒い日に極端なギャップがある街は大変ですが)咳がてきめんに出現し、再び下痢にもなってしまうようでした。


以前より症状は確実に良くはなっているのですが、Jちゃんも私も何となくしっくりきません。そこで、Jちゃんのおなかを触って見ることにしました(腹診です)。みぞおちのあたりが少し硬くなっていたので、『六君子湯(リックンシトウ)』に変えてみたところ、今度は確かな手ごたえがありました。「頭痛も腹痛もなくなり、朝の起き方がしっかりしてきました。最近は全然泣きべそではなくなりました。」とお母さんがおっしゃっていました。
いまや子供もストレス社会です。子供にも泣くにはそれなりの泣く理由があるのでしょう。『六君子湯』は単なる胃薬ではないことは以前にも紹介しました。「気剤」(気の巡りを正す生薬)がしっかり配合されています。
漢方薬は、まずくて?子供にはどうも飲ませにくいし、私自身もあまり無理矢理飲ませることはしないのですが、Jちゃんはちゃんと飲んでくれています。小学生でも自分にとって必要な薬と認めると不思議に飲めるもので、効く薬は飲むのを嫌がらない傾向は確かにあるようですね。野生動物がふだん食べないような苦い植物を自ら積極的に食して体内の解毒をするという話もまさしく同じでしょうね。
2008年09月04日(木) No.317 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(47)〜じとじと汗に黄耆建中湯〜


『3歳Iちゃん(女児)。生後からしょっちゅう風邪を引きやすく、一度かかると長引いて咳や鼻水がなかなか良くならない。序弱体質で食も細い。ふだんから汗っかきで特に寝汗をよくかいている。パジャマが夜間に汗で..
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2008年08月06日(水) No.314 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(46)〜癒着?による腹痛に大建中湯〜


『80歳Hさん。30歳代に腸閉塞を含めて3回の開腹手術の既往のある方で、以来腹痛が持病?との本人の弁。お腹が張ってシクシクと痛み、便通はすっきりせず残便感が常にある。下剤を飲むと痛みが強くなるばかりでかえ..
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2008年07月03日(木) No.309 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(45)〜抑肝散が効く親子?〜


漢方医学における「肝(カン)」は、興奮や怒りなどの精神神経症状を司るところと考えられており、西洋医学における「肝臓」とは意味が異なります。今回紹介する『抑肝散(ヨクカンサン)』は「興奮や怒りを鎮める」という意味から名付けられました。
『33歳Gさん。3歳のお子さんの育児に疲れ、最近夜泣きでイライラすることが多い。マンションの隣室にも聞こえるのではないかと思うと、気を遣ってしまう。日中子供にもあたる自分が怖いとの事。友人に漢方薬も効くことがある?と聞いて来院。』
Gさんは本当に育児疲れの典型で、イラつく自分自身に困惑していました。話を聞くとお子さんもいわゆる「疳の虫」の症状でしたので、ご本人と一緒に『抑肝散』を飲んでもらうことにしました。『抑肝散』は、もともとは小児に使うことが多かった薬ですが、中国の古典にも、母子が同時に服用することで(母子同服)、母子ともに気の高ぶりを鎮める効果があるとされています。
最近は『抑肝散』が高齢者疾患にも応用も報告され、有効な治療手段が確立されていない認知症や脳血管障害後遺症患者に現れる、徘徊・暴言・暴力といったいわゆる問題行動に対して有効なことが報告されています。


私の友人の精神科医師も「暴力で手に負えない高齢者に『抑肝散』を処方したら、ふつうのやさしいおじいちゃんに戻ったよ。」という症例について先日話していました。
『抑肝散』が効く症状には、その基盤に「うつ傾向」があることがポイントですが、ストレスが加わると誰しもがその傾向が出現することは皆さんも経験があると思います。
つまり、日常誰にでも起こりうる症状であることを周囲の方も理解してあげなければなりません。Gさん親子にも効果があったようで、その後外来にお子さんと一緒ににこやかな顔で来院されました。前回も母子同服のお話でしたが、小さなお子さんがいる女性は育児を含めて精神的ストレスが多いのですから、皆さん、いたわってあげましょうね。
2008年06月05日(木) No.305 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(44)〜小建中湯が効く親子?〜


『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』は以前の号でも紹介した漢方薬ですが、昔からよく子供に使われていた薬です。食が細く、しょっちゅうお腹が痛いと云っては、学校や幼稚園に行く前にぐずるような子によく効きます。子供に効く場合は飲み始めると数日で食欲が出て、ぐずぐずいわなくなるから不思議です。
この薬は甘くて漢方薬の中では飲みやすいので、よく親が子供を連れてきて「漢方薬で治したい」(時には無理難題もありますが)という場合に、まず飲んでもらわなければ話になりませんから『小建中湯』を処方することがあります。こういう処方の仕方は不本意なのですが、意に反してよく効いてしまう症例が多いですね。
『小建中湯』を飲んでもらっているお母さんが「アレルギー性鼻炎で耳鼻科に通院中。とにかくお腹が痛がるし、食べない。おねしょが治らない。風邪もひきやすい。」という8歳のお子さんを連れてきました。以前、風邪を引きやすい子に最初に出した漢方薬がなかなか効かなくて、『小建中湯』を出して有効だった症例をふと思い出しました。


この親子は共に「食が細い、お腹をこわしやすい」という共通点があったので、まさしくこの漢方薬がよく効くタイプでした。数ヶ月たって「お子さんのアレルギー性鼻炎の具合はいかがですか?」と何気なく聞くと、「食欲がでてきて最近よく食べるようになってから症状もいいんですよ」との事。ふつうはアレルギー性鼻炎を『小建中湯』で治そうという先生はあまりいないとは思いますが、やはり「食べる」ということの重要性なのでしょうね。それ以来、この薬で「風邪が引かなくなった」とか「生理痛がよくなった」とか「口内炎がよくなった」など様々な効果を実感します。
二年もたつとこの親子も自分のペースを獲得したようで、勝手に症状にあわせて分量も調節して飲んでいるようで、今では私は薬を処方するだけです(苦笑)。

2008年04月30日(水) No.300 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(43)〜2月の中旬になると動悸がする?〜


『31歳Kさん。2月の中旬に「今頃の季節になるときまって動悸がします」と当院来院。
札幌で仕事をしていましたが、仕事のストレスから軽いうつになり、半年前から北見に戻ってきたようです。病気になって以来、疲れやすく気力もなく、食欲不振・胃もたれ・便秘があり、とかく家にこもりがちだと…2年くらい前から2月中旬になると、夜の動悸・顔や手足の軽いほてり・不眠などの症状が起こってくるとの事。』
紀元節というのをご存知でしょうか?これは建国記念日と名を変えて2月11日で、神武天皇が即位した旧暦の1月1日で、1年の内一番寒い頃となります。Kさんの症状は、この紀元節の頃から出現したと考えることができますね。北海道はこの時期はまだまだ寒い時期ではありますが、確実に冬至から徐々に日照時間は長くなりつつある時期です。日光があふれ出ようとする季節が春とすれば、2月中旬は春の息吹が潜んでいる時期ともとれますね。
東洋医学では、陰(イン)・陽(ヨウ)という考え方があり、季節に対応させると冬・夏になります。この陰・陽の変わり目は病気が悪化しやすいことは古来から知られていますし、現代でも花粉症など例にとるとお分かりのように該当する点があるのは事実でしょう。
とすれば、Kさんの症状は身体が春の気配を無意識に感じたからだという一つの見方もできます。

事実、東洋医学では、動悸・不眠・ほてりなどは、身体が熱をもったために起こることが多いという考え方があります。
「熱のためですかね」というと「私は冷え性です。それに今は一番寒いときでしょう」と反論してきたKさんに処方したのは『桂枝加竜骨牡蠣湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)』でした。その結果、動悸は鎮まり、眠りもよくなり、うつ的な気分も快方に向かいました。この薬は『桂枝湯(ケイシトウ)』に化石の粉末である「竜骨」とカキの殻である「牡蠣」を加えたものです。
『桂枝湯』は冷え性で虚弱な人の初期の感冒によく使用されますが、身体を温めて全体的に元気にする作用があります。「竜骨」「牡蠣」は共に気持ちを鎮め、上昇した熱を冷まして降ろす作用があります。つまり、『桂枝加竜骨牡蠣湯』は身体の虚弱な冷え性の人向けの精神安定剤的な働きをしているのです。身体は冷えているが軽度の熱もあるという状態は、寒い季節にありながら、その中に春の日差しを含んでいる2月中旬に似ているわけですね。
2008年04月03日(木) No.295 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(42)〜不定愁訴?実は疲労の蓄積?〜


『48歳Iさん。約5年前から疲れが取れず、いつもだるい。疲れるとイライラしたり、動悸がしたりするし、カゼをひくと治りにくい。最近は頑固な便秘になり、市販の下剤を飲まないと何日も出ない状態。神経科を受診し..
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2008年03月06日(木) No.290 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(41)〜水太りタイプの女性の膝関節痛〜


『58歳Hさん。半年前から膝の痛みで歩行困難となり、数ヶ月で症状が悪化。整形外科では変形性膝関節症の診断で注射を定期的に施行しているとの事です。特に立ち上がるときと階段を降りるときが辛く、鎮痛剤で何とか痛みは和らいでいるものの腫れはひかないようです。当院に漢方も試してみたいとの理由で来院されました。』
Hさんは、色白でもち肌、ぽっちゃりとしたいわゆる「水太り」体型の方でした。ご本人曰く、「水を飲んだだけでもすぐ太りやすく、最近は身体も重く感じて疲れやすいです。」漢方医学的には、「水太り」は重要なキーワードになります。このようなタイプの方は「多汗」の症状も多くみられます。


『防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)』はHさんのような方のためにあるような薬でして、まずこちらを処方しました。ただ、膝関節の熱感も訴えるので、熱をさばく意味で『越婢加朮湯(エッピカジュツブトウ)』も少量足して飲んでもらうことにしました。飲み始めて一ヶ月後には膝の痛みと腫れは確かに良くなっていました。鎮痛剤をあまり飲まなくなった点がその効果のようです。その後は長時間の歩行などでは症状が悪化するときもあるとの事ですが、比較的調子は良く、汗もあまりかかなくなった点も喜んでいました。
調子が良いと積極性もでてくるものです。本人はその後は食事などにも気をつけて体重を5キロ減らすのに成功しました。当然ながら膝関節の負担も減りますね。
今も半年以上経ちますが、『防己黄耆湯』はときどき飲んでもらっています。このように『防己黄耆湯』がよく効く方には長期に飲んでもらうことにより、膝関節痛がかなりラクになる場合が多いですね。ただし、『越婢加朮湯』は「麻黄(マオウ)」が含まれているので、胃腸の弱い方や高齢者、心臓・腎臓疾患のある方に注意して使用しなければなりません。Hさんには少量で使用しましたが、『防己黄耆湯』とはとても相性のよい薬でして、うまく使うと熱感をもつ腫れには大変有効です。
2008年02月06日(水) No.286 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(40)〜更年期障害と漢方薬(1)〜


『46歳Gさん。最近、熱くなったり、寒くなったりと体温調節がうまくいかない感じがする。頭もボーッとするし、職場の友人からは「ちょっと早いけど、更年期の症状なんじゃないの?」と云われ、ショックをうけて(笑)当院に来院。』


自覚症状は「胃が弱く、のぼせて、頭痛、立ちくらみがある。手足の冷えは特にひどい。疲れやすい、生理痛も強い。よく、青アザができる…」と多彩でした。Gさんには、以前にも紹介したことがありますが、『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』をまず処方いたしました。飲み始めて比較的早くに効果がみられ、「あまり疲れやすくなくなり、身体が軽く動くようになった」との事でした。生理痛も出血量が減り、以前よりも楽になって大変喜んでいらっしゃいました。ただ、「まだ、頭がボーッとするのと、毎日1、2回は急に体温が上がったのかと思うくらいに身体が熱くなって汗が吹き出ます。」が悩みのようでした。
これはいわゆる典型的な「冷えのぼせ」の症状です。そこで「突然カーッと熱くなって、汗だらけになる」という言葉をキーワードに『五積散(ゴシャクサン)』を追加処方したところ、実にうまく効いてしまいました。一ヶ月後は調子がいいので、「のぼせを感じたらのむように」と指導しましたが、本人は真面目に休み無くのんでいたようでした。
あるとき、Gさんは「一日三回はのめなくて、お昼を忘れて二回になることが多いのですが、調子はいいです。この前の生理もラクでしたし、三回のまなくてもいいのでしょうか?」との事。
回数を減らして大丈夫ならばそれでいいに決まっているのに、患者さんはよくこういう質問をされます。どうも「医者でもないのに自分勝手に判断するな」と怒られた経験がある人はおそるおそる報告する方が多いですね。
私は患者に「あなたの身体が一番正直に答えてくれるので、調整してのんで下さい。」というようにしています。のむのを忘れるのは体調がよくなった証拠ですから。
2008年01月02日(水) No.281 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(39)〜冷え性と漢方薬(1)〜


『23歳Fさん。やせ型の色白な方で、これからの季節は特に手足が冷たく、寒いとお腹まで痛くなり、指先なんかは氷みたいになるとの事。以前は当帰芍薬散を処方されましたがあまり改善されなかったようです。どういう漢方薬が良いのかご相談に来院されました。』
Fさんが処方された『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』は「婦人の聖薬」という別名があるくらいに有名な漢方薬です。たしかにこの方は色白で古人のいう「芍薬美人」タイプで、いかにも『当帰芍薬散』が効きそうな印象を受けました。でも、以前飲んでイマイチだったとの事。


そこで手足の冷えに有効な生薬の「附子(ブシ)」が含まれる生薬で、水をさばく利水剤も含む『真武湯(シンブトウ)』を飲んでもらうことにしました。2週間後は「少し、前よりは暖かい感じはします。」との返事でしたので、「附子」の粉末をさらに加えて飲んでもらい、冷えてお腹が痛くなったら『大建中湯(ダイケンチュウトウ)』を追加して飲んでもらうことにしました。
一ヶ月後、「身体はだいぶ温かくなり、以前にような我慢の出来ない冷えは無くなりました。お腹はほとんど痛くなかったんですけど、前に外に居る時間が長くて、冷えてお腹が痛くなったので、云われたとおり『大建中湯』を飲みましたが、すぐに良くなりましたよ。即効性があるんですね。」との事。
『大建中湯』は、以前も紹介しましたが、イレウス(腸閉塞)対策で有名になった薬なのですが、元々は「お腹の痛みを温めて治す」薬です。つまり「冷えたときの腹痛」が使用するときのキーワードなのです。
若い女性の頑固な冷えは、強力な温薬(オンヤク)の代表選手である「附子」などで一度温めてあげないと、なかなか改善しないようです。つまり、身体が自らを温めることを忘れてしまった状態なのでしょうね。また、現代人の冷えは「水」も関わることが多く、お水の取りすぎも要注意なのです。
2007年11月30日(金) No.276 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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