タイトル

女性と漢方(159) 〜月経困難症と漢方薬〜


 いわゆる生理痛のひどい症状を月経困難症といいます。その中でも子宮筋腫や子宮内膜症などの器質的異常のないものである機能性月経困難症に関しては60〜70%の症例に対し鎮痛剤の頓服で即効性はありますが、一時的..
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2017年11月29日(水) No.820 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(158) 〜手術後の「冷え」に漢方薬〜


 『32歳Mさん。2回流産後に、月経痛がひどく、子宮内膜症の診断を受け、他施設にて両側の卵巣嚢腫を摘出し、手術後の癒着も指摘されていた。現在は「冷え」に困っており、漢方薬を試してみたいとの事で、当院受診。』
 Mさんには「冷え」がとにかくつらいという症状から『当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)』をまず飲んでもらいましたが、一時的に温かくなる感じはするもののイマイチの反応でした。症状をよく聞いてみると、「冷え」ばかりではなく、「お小水をした後に不快感が残り、また全身が疲れやすい。」との事でした。尿検査では異常所見はありませんでした。


 そこで、Mさんには『真武湯(シンブトウ)』に変えてみたところ、「今度の薬は身体の芯から温まる感じがする。冷えがひどいときの腰痛にも効いている。最近は疲れもとれて食欲があるし、冷えによって起こっていたのか分からないが、膀胱の症状も良くなった。」との事。
 東洋医学では「冷え」という症状を非常に重要に考えます。「冷え」があるとないかでは漢方薬も根本的に大きく変わってきます。『真武湯』は、冷え症で虚弱な体質の諸症状に用いられますが、胃腸が弱く疲れやすく、やや尿の出が悪いような方にはより有効です。「冷え」には『真武湯』にも含まれている「附子(ブシ)」という生薬が有効です。「附子」はトリカブトの根で、昔アイヌ人が毒矢として矢の先に塗っていたといわれる毒性の強いものです。しかし、漢方薬ではこういうものまでうまい使い方をして身体を温めて「冷え」を治す妙薬にしてしまうのです。
 その後、Mさんは胃腸の症状に重点を置いて、『六君子湯(リックンシトウ)』に「附子」の粉末を加えて飲んでもらい、日常生活が快適になったようです。さらにMさんは散歩をしたりして積極的に身体を動かすように心がけるようになり、その点も症状の改善に大きく貢献しているように感じました。
2017年11月01日(水) No.816 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(157) 〜美味しい漢方薬は効果がある〜


 「良薬は口に苦し」という孔子の名言がありますが、特に漢方薬は苦くて飲みにくいという印象を持っている方は多いと思います。
 以前に子供の「寝冷え」に対する漢方薬で味を本人に飲んでもらってその場でお薬を決める方法を試みている先生(大阪の開業医)のお話を思い出しましたのでご紹介いたします。
 親子で来られて、本人が「漢方薬なんか飲めるわけないやん」というのを『人参湯(ニンジントウ)』をお湯に溶かしてスプーンで味見(テイスティングですね)してもらいました。「あれ?これやったら飲めるわ」という反応で、次に『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』を試したところ、「飲めるけど、いまひとつやな」(生意気な小学生ですね)との弁。そこで、先生は本人が飲みやすいという『人参湯』を処方して、寝冷えは数日で解消し、「おなかがあったかい感じがする」との事でした。


 漢方薬の味に関する評判は、よく耳にします。『小建中湯』はうるち米から作った「飴」が含まれていて甘味があるので、比較的飲みやすい薬なのですが、逆に「甘くて飲みにくい」ことがあったり、『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』という炎症を抑える場合に使う薬は苦くて有名ですが、症状が強い方は子供でも意外とあっさり飲めたりもします。
 漢方薬には味にも薬効があることはいわれています。例えば、酸味は粘膜などを収縮させたりしますし、苦味は乾燥させたり、下に降ろす作用があります。甘い物は「補う」働きがあるため、普段から摂取する必要や場合により身体の方から要求してくることもあります。苦い物は摂り過ぎると体内の必要なものを体外に排出してしまうので、苦い物をあまり好まないのは自然の摂理にかなっているのでしょうか。ただし、病気になって体内の悪い物を排出させるのに苦味のものが必要になることがあるのです。不思議なことに苦い物が必要なときは意外と苦い物がそれほど苦ではなくなりますし、普段甘い物が好きなのに逆に苦手になるときもあります。そのときの証(身体の状態)により「味証」が変化するものなのでしょう。
となりますと、孔子の「良薬は口に苦くして、病に利あり。」は「良薬は口に美味にして、病に利あり。」が正しいのではないかと思ってしまいますね。
2017年10月01日(日) No.812 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(156) 〜食欲不振に対する漢方薬〜


 夏場が過ぎてどうも食欲がないということはよく耳にしますが、食欲不振に関しても漢方薬は西洋薬にはない視点で捉えることができます。食欲不振の漢方治療では、消化機能そのものが低下した「脾虚(ヒキョ)」という概念がありますが、消化管の問題であっても「気」の問題を考慮しながらの漢方薬の選択となります。
 「気」の異常では、「気虚」(「気」の減少…無気力、元気がない、疲れやすい、日中から眠いなど)の場合には『六君子湯(リックンシトウ)』『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』が、背景に「気逆」(「気」の上昇:冷え・のぼせ、ほてり、頭部発汗、イライラ、発作性の頭痛など)が疑われれば、『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』が適応になります。風邪や熱中症などの熱性疾患の後に食欲不振が出現した場合には『小柴胡湯(ショウサイコトウ)』などの「柴胡」を含む漢方薬が有効です。「気うつ」(「気」の滞り…不安感、憂うつ感、胃のつかえ感など)の状態がはっきりとある場合には『平胃散(ヘイイサン)』『半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)』『香蘇散(コウソサン)』が適応です。


 便秘と食欲不振が併発している場合には『大承気湯(ダイジョウキトウ)』『三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)』を、急性感染胃腸炎など急性の下痢を併発している場合には『半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)』『五苓散(ゴレイサン)』がよく用いられます。下痢が慢性的であり、「脾虚」の状態に陥った場合には『人参湯(ニンジントウ)』といった「人参」を含む漢方薬が有効です。
 また、妊娠悪阻(つわり)や抗がん剤を使用した場合で嘔気・嘔吐を伴う場合には『小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ)』がよく用いられますが、先に述べた状態があれば漢方薬を適宜変更または併用することになります。
 西洋薬ではいわゆる「胃薬」しかありませんが、食欲不振でもそれぞれの状態にしたがった選択で漢方薬の効果が実感できることがあります。
2017年09月01日(金) No.808 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(155) 〜グループをなす漢方薬 (建中湯類)〜


 漢方薬は基本骨格となる生薬の組み合わせにさらにいくつかの生薬を重ねることでバリエーションを増やしていきます。これらはグループをなす処方群として認識することができます。今回は『桂枝加芍薬湯(ケイシカシ..
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2017年08月02日(水) No.804 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(154) 〜水毒に対する漢方薬(熱中症)◆


 今回は前回に引き続き「水毒」の症状の一つとして東洋医学ではとらえられる「熱中症」の漢方薬についてまとめてみます。「水毒」とは西洋医学の「水中毒」とは別の概念で「体内の水分のアンバランス(過不足)」であることは前回述べましたが、「水分の過剰」だけではなく、熱中症・激しい下痢・乾燥気候による水分の喪失は「水分の不足」として「水毒」の範疇としてとらえます。


 熱中症でよく使われる漢方薬は『清暑益気湯(セイショエッキトウ)』『五苓散(ゴレイサン』『白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)』があります。基本的には発汗・熱感・口渇・悪心・嘔吐・尿量減少・下痢のうちいくつか該当するものがあれば『五苓散』が有効です。甚だしい発汗があり、今まさに発熱・口渇の症状があれば『白虎加人参湯』、わずかな発汗・食欲不振・倦怠感があれば『清暑益気湯』となります。また、『五苓散』を使用するようなケースでも、その後の症状が穏やかで軽い食欲不振、下痢があれば『胃苓湯(イレイトウ)』、軟便〜下痢が持続している場合は『六君子湯(リックンシトウ)』『人参湯(ニンジントウ)』『真武湯(シンブトウ)』などにします。熱中症の後で気力がなくなれば『補中益気湯(ホチュウキトウ)』、同時にめまいなどを感じれば『半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)』を選択します。
数年前ですが、知り合いの中学生のお子さんが合宿で熱中症に罹ってしまい、救急外来でビタミン剤を入れた電解質輸液をして帰宅したが、水分を飲むと吐いてしまうというので『五苓散』を溶かして少しずつ口に含んでもらいました。翌日は平熱で悪心・嘔吐もなく病院にも行かなかったようです。この症例では若さと体力に負うところが大きかったと思われますが、漢方薬にはいつもお話しするように即効性が期待できます。
 熱中症に対する西洋医学的対応は予防と脱水に対する補液で当然ながら重要な対応になりますが、漢方治療を介入させることで個々に合わせた幅広い対応が可能になり、漢方薬の存在意義を感じます。私自身も夏場の暑いところに長時間居ることが予想される場合には、ペットボトルに『五苓散』『白虎加人参湯』を携帯するようにしています。
2017年07月05日(水) No.800 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(153) 〜水毒に対する漢方薬(めまい・ふらつき) 


 「水毒」とは西洋医学の「水中毒」とは別の概念で「体内の水分のアンバランス(過不足)」としてとらえます。例えば、二日酔い・熱中症・激しい下痢は脱水による「水毒」で、逆にむくみ・胸水・胃内停水(おなかがチャポチャポする)などは水分過剰として、ほかに水様性鼻汁・喀痰などの分泌異常も「水毒」としてとらえます。重要なことは「利水剤」(水をさばく生薬)として知られている漢方薬で改善が見込める症状を「水毒」と称していると理解していただけるとよろしいかと思います。
 利水剤の基本生薬は「茯苓(ブクリョウ)」「蒼朮(ソウジュツ)」で、「水毒」に対する代表的な漢方薬は『五苓散(ゴレイサン)』です。特にめまいのときによく使われる漢方薬は『五苓散』『真武湯(シンブトウ)』『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』『半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)』『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』があります。
 ちなみに良性頭位性眩暈の急性期には『苓桂朮甘湯』がよく使われます。気力・体力が低下して慢性的なふらつきが起こる場合は『半夏白朮天麻湯』が比較的長期にわたって使われます。この2剤でうまく効かない場合には『五苓散(感染症などの脱水など)』『真武湯(脳動脈硬化?などの一瞬のめまいなど)』『当帰芍薬散(生理中のめまいなど)』に変更または併用したりします。
 西洋医学的には不定愁訴と診断された方で胃腸虚弱と「水毒」に注目して『半夏白朮天麻湯』の処方により倦怠感・ふらつき・目の奥の痛みが改善した例や、数年前から続くアルコール依存症の方の「水毒」によるめまい・頭痛に『苓桂朮甘湯』の処方で改善した症例も私自身経験しています。


 最近で驚いたのは、めまいで利水剤を使っている患者さんが数年間悩まされていた花粉症を回避できたとおっしゃっていたことです。花粉症も一種の「水毒」ととらえることもできますので同時に効果があったのかと思われます。漢方治療では西洋医学の視点では考えられない効果が得られることがしばしばあり、漢方理論が机上の空論ではないことを実感させられます。
2017年05月31日(水) No.796 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(152)〜不眠と漢方薬〜


 世間では不眠を訴える人は約20%も存在し、やや女性に多い傾向があります。また高齢者では30〜40%と頻度が高く、特に中途覚醒と早朝覚醒は高齢者に多くみられます。西洋医学的には様々な睡眠導入薬がありますが、..
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2017年04月26日(水) No.792 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(151)〜更年期のめまい発作〜


 『47歳Gさん。1年位前より特に誘因なくめまいが出現。ぐるぐる回るようなめまいで、一度回ると一日中船酔い状態で、気持ちが悪くなり吐くこともある。ひどいときは近医で点滴治療を受けて改善。軽い時は横になって一晩休むと回復する。耳鼻科で精査し、著明な異常なく「良性発作性めまい症」と診断され、投薬されて服用するも効果が得られず、当院受診。』
 回転性のめまいなので、頻用される『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』を処方しましたが、やや軽快はするものの十分な効果は得られませんでした。月経の周期は不規則であり、めまいの発作がよく出現するパターンは、.好肇譽垢魎兇犬謄ぅ薀ぅ蕕垢觧、不規則な月経の前後、2鴇譴僚襪て、冬場の室内で暖房が強い時、などでした。


 「気」や「血」の異常の関わりが認められるため、それに伴う「水毒」によるめまいも考慮して、『加味逍遥散(カミショウヨウサン)』に変更してみました。3週間後、生理前後のめまい発作が軽くなり、発作が数時間で消えるとの事でした。継続して飲んでもらったところ、最近はイライラも良くなったようでした。その後は普段、朝一回のみ内服してもらい、生理前後にめまい感があるときは、2〜3回頓用してもらっています。
 一般的に、めまいは脳の血流低下や、様々な精神症状によって起きる、女性に多くみられる症状です。Gさんのめまいは、前述の,筬△離僖拭璽鵑肪輒椶垢襪函更年期障害に関連していると思われます。更年期障害には様々な漢方薬が処方されますが、Gさんにはストレスを感じてイライラする時によく処方される『加味逍遥散』を用いました。
 漢方薬の処方は、有効性の程度に応じて、薬を変更していくことが重要です。今回は更年期障害に伴うめまいという点ではまさに「木を見て森を見ず」ということが実感させられた症例でした。
2017年03月30日(木) No.788 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(150)〜呼吸器症状を伴う更年期障害〜


『53歳Fさん。51歳で閉経し、その頃より寝つきが悪くなった。1年前から冷えのぼせを感じることが多くなり、市販の更年期に良いといわれている漢方薬を4ヶ月位服用したが、効果がみられないため、漢方治療を希望し..
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2017年03月01日(水) No.784 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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