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女性と漢方(169)〜漢方薬解説シリーズ「排膿散及湯」〜


 今回は『排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)』という漢方薬についてお話します。この漢方薬は『桂枝湯(ケイシトウ)』の「桂枝」を「桔梗(キキョウ)」「枳実(キジツ)」に代えたような内容で発散力が強められ、さらに「芍薬(シャクヤク)」が加わって膿を強力に排出する構成になっています。なお、「桔梗(キキョウ)」「甘草(カンゾウ)」にはこの二剤で『桔梗湯(キキョウトウ)』という咽頭が腫れて痛むときによく用いる漢方薬の構成になっており、炎症を抑える作用も有しています。


 私自身は個人的にはとても好きな漢方薬の一つで、とくに皮膚疾患に用いていますが、『葛根湯(カッコントウ)』との併用で「乳腺炎」に使用したり、口腔内・鼻腔内の化膿性疾患にも使用します。副鼻腔炎では『葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)』が有効でない場合に用いて有効であったケースもあります。婦人科的には「外陰炎」(とくにバルトリン腺膿瘍)で患部は腫れて化膿している場合は抗生剤単独よりも治りが早い印象でよく使用します。
 先日の漢方研究会では、がん治療後の後遺症であるリンパ浮腫患者の蜂窩織炎(ホウカシキエン)や、骨盤腔内の膿瘍にも抗生剤単独よりも有効であるとの報告がありました。
『排膿散及湯』は単独でも十分有効なことが少なくないのですが、とくに発赤が強い場合には『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』を併せて使用したりもします。また、腫れが強いときには『猪苓湯(チョレイトウ)』を併用してうまくいくことが多いようです。
 また、化膿性疾患の再発防止効果もあるので、しょっちゅう外陰炎を繰り返す方には、治癒してもしばらく飲み続けてもらうと、再発しにくくなったり、再発しても軽症ですんだりします。
 現代医学では、抗生剤という良いお薬がありますが、抗生剤の乱用、耐性化が問題になている最中、漢方医学的に『排膿散及湯』の役割は有用かと思われます。
2018年09月26日(水) No.859 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(168)〜漢方薬解説シリーズ「白虎加人参湯」〜


 今回は『白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)』という漢方薬についてお話します。古典によれば、何らかの病気にかかった後に発汗したがまだ治らず、体の芯に熱をもって、しかも口渇がひどいような場合に用いられ..
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2018年08月29日(水) No.854 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(167)〜浮腫と漢方薬◆


 今回は前回に引き続き「浮腫」いわゆる「むくみ」に関してお話します。「むくみ」は東洋医学では「水毒(スイドク)」という体内の水分の偏在として解釈し、その原因が「気」「血(ケツ)」の異常や「水」をコントロ..
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2018年08月04日(土) No.847 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(166)〜浮腫と漢方薬 


「浮腫」いわゆる「むくみ」は体内に増えた水分がうまく排出されなかったり、滞ることでおこります。腎臓病・心臓病・ホルモンの異常・薬の副作用など西洋医学的な診断で原因を究明することが重要ですが、原因不明の..
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2018年06月28日(木) No.850 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(165)〜高齢者にみられる腰痛・夜間頻尿に対する漢方薬〜


 『73歳Cさん。数年前より腰痛があり、整形外科に通院中。変形性脊椎症との診断で湿布や鎮痛薬が処方されており、腰痛は入浴や温めると軽快する。最近は夜間に排尿のために3〜4回起きるようになり、熟睡できない..
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2018年06月04日(月) No.843 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(164)〜花粉症に「竜虎湯(リュウコトウ)〜


 花粉症に対して『小青竜湯(ショウセイリュウトウ)』は「うすい鼻水が出るタイプのカゼ」によく用いられますし、アレルギー性鼻炎にも漢方薬としては頻用され、最近はドラッグストアにも見かけるほど有名です。しかしながら、スギ花粉症に対する『小青竜湯』の治療効果を検討した報告例では有効率は45%でした。
 今回は花粉症の辛い急性期を乗り切るために大阪の耳鼻咽喉科の今中先生が開発された『竜虎湯』に関してご紹介します。『小青竜湯』単独では有効で効かないに対して、「麻黄(マオウ)」「石膏(セッコウ)」が配合された『五虎湯(ゴコトウ)』を併用すると有効率が87%と飛躍的に向上したことで、『小青竜湯』と『五虎湯』の同時併用を『竜虎湯』と命名したそうです。
 ただし、この漢方薬は「麻黄」の量が多くなるため、「麻黄」で胃腸障害や動悸などが現れやすい方には不向きであるという欠点もあります。胃もたれタイプの方には『六君子湯(リックンシトウ)』+『麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)』や『苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)』に変更してみるとよいでしょう。以前漢方研究会で、「麻黄」の量が増えると副作用でどうしても飲めない方に『竜虎湯』の『五虎湯』を『釣藤散(チュウトウサン)』に切り替える方法について発表がありました。その先生は重症の高血圧症の方に『釣藤散』(早朝時の頭痛や高血圧によく用います)を服用してもらっていたところ、「最近、花粉症に悩まされない」というお話を聞いてから、「おや!」と思ったそうです。確かに『釣藤散』には、アレルギーの炎症に効きそうな生薬が実は含まれているのです。


 花粉症で目のかゆみを訴える方には『越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)』が頻用されますが、こちらにも「麻黄」が多く含まれていますので、『釣藤散』単独や『釣藤散』+『小青竜湯』(『小青竜湯』の「麻黄」の量は少な目です)にするのも有効かもしれません。
 花粉症のシーズンには『竜虎湯』が登場する機会が多くなるかもしれませんが、ちなみに大阪の今中先生が阪神ファンにも関わらず、『虎竜湯』と命名しなかったのは、韓国の処方ですでに『虎竜湯』があるとのことで避けられたそうです。
2018年04月25日(水) No.840 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(163)〜打撲と漢方薬〜


『16歳女子学生Dさん。体育の授業中に外陰部を打撲。腫れと痛みのため、当院に来院。』
 来院時のDさんの外陰部は紫色でピンポン球大に腫れていました。痛みが強く、座るのも大変そうで排便も痛みのため思わしくないとの事。そこで『治打撲一方(ジダボクイッポウ)』という漢方薬を鎮痛剤とともに処方しました。5日後に診たところ、腫れと痛みは軽快し、本人と母親が曰く「こんなに早く治るとは」との事で、もう一週間漢方薬のみ続けてもらいました。
 『治打撲一方』は江戸時代の香川修庵が考案した民間薬として使用された漢方薬です。打撲症の場合には基本的には「瘀血(オケツ)」(詳細は以前号)の状態を改善する薬が使用されますが、『治打撲一方』には鎮痛効果に加え、組織を修復する作用をもつ生薬も含まれています。また、下剤の際によく使われる「大黄(ダイオウ)」という生薬も含まれていますが、この場合は瀉下(シャゲ)作用よりも清熱作用すなわち抗炎症作用が期待されます。


 打撲直後には『三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)』や『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』なども用いられますが、大きな皮下出血がある場合には『通導散(ツウドウサン)』を用い、当院でも重度の分娩時外傷の際によく使用します。『治打撲一方』は急性期を過ぎた時期にも有効で日を経た打撲症で痛みや違和感の残った場合にも用いられますが、打撲後の比較的早期にも疼痛・腫れに対してかなり有効である印象は使用経験から感じます。
 打撲というと湿布という印象がありますが、打撲後の疼痛・腫れ・紫斑(皮下血腫などで皮膚が紫色に変色した状態)に対する漢方薬のアプローチは意外にも西洋薬を凌駕する側面をもつと思います。即効性も期待できますので、打撲の際は一度お試しください。
2018年03月28日(水) No.836 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(162)〜不眠に対する補中益気湯の効果〜


『48歳専業主婦Cさん。更年期障害に伴い、動悸や疲れやすいなど症状に対して当院で『柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)』を処方しており、比較的良好な状態であった方で、最近1ヶ月前頃から不眠(寝つ..
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2018年02月28日(水) No.832 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(161) 〜貧血に伴う症状に漢方薬〜


『34歳Bさん。食欲がなく、疲れやすく、めまいや立ちくらみが頻回におこるので近医受診したところ貧血と診断された。婦人科受診を勧められ、当院に来院。』
 貧血とは、血液中の赤血球やそこに含まれる血色素(..
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2018年01月31日(水) No.828 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(160) 〜朝起きれない女子中学生〜


『14歳Aさん。小学6年生のころから朝起きにくくなった。近医にて起立性調節障害(以下ODと略)と診断され、内服薬(ミドドリン塩酸塩)などで軽快したことがあるものの、その後頭痛・倦怠感にて他院で『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』を処方され症状は一時改善した。中学1年の夏休み前から、朝起きられず登校できなくなり、ミドドリン塩酸塩と『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』を処方されたが、改善されず当院に来院。』
 ODは思春期初期にみられる自律神経失調症とされ、不登校の原因の一つにもなっています。起立時の血圧低下にはミドドリン塩酸塩などの昇圧剤がよく用いられますが、動悸などの副作用のため治療困難な例は少なくありません。


 Aさんの症状で「口渇、立ちくらみ、心下部振水音(みぞおちのあたりを揺らすとポチャポチャと音がする状態)」は「水毒」、「疲れやすい、身体が「だるい、体が重い、食欲がない」は「気虚」と漢方医学的にとらえらえましたが、「朝起きられない」症状をODとみるか、うつ症状とみるかが問題でした。気分の抑うつなどは明らかでなかったため、基本病態を「気虚」ではなく「水毒」とみて『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』を処方しました。
 二週間後、「朝起きやすくなり、学校へは週2回午前中行けるようになった。」との事。頭痛がひどいときには『五苓散(ゴレイサン)』を併用してもらいました。4週間後、「午前中は毎日登校できた。」母親がかわりに来院したので追加処方し、良くなれば廃薬としました。
 「朝起きられない」という主訴に対しては、うつ症状との鑑別が重要になります。Aさんの場合には明らかな精神症状や学校でのいじめなどのエピソードを認めなかったのでODを主とした病態を考えました。もしメンタルヘルス的不調が主となる場合であれば、「気虚」に対しては『補中益気湯』『六君子湯(リックンシトウ)』が有効でしょうが、ODに類似したうつ症状に対する効果は期待しがたいと思われます。
 今回の「朝起きられない」原因を精神面・身体面のいずれに求めるかは他の症状と合わせた総合的な判断が必要です。
2017年12月27日(水) No.824 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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