タイトル

女性と漢方(186) 〜過敏性腸症候群と漢方薬〜


『17歳女子Sさん。高校入学して列車通学をするようになってから、下痢とガスでお腹が張ることが激しくなり、授業中も下痢やガスで我慢できず、授業を休むこともしばしばあった。いろいろな病院で治療はしたが、漢方薬を試したいとの事で来院。』
 Sさんは、他院にてすでに漢方処方を受けており、少しは良い程度であった様子でしたので、足やお腹の冷えが強い点に注目し、『桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)』と『大建中湯(ダイケンチュウトウ)』を併せて処方しました。一か月飲んで効果を実感されて、「お腹が温かくて気持ちいい」との事で、三か月続けて飲んでもらうことにしました。
 飛び散るような、ヒリつくような炎症性下痢やヒステリー型には『半夏瀉心湯」(ハンゲシャシントウ)』に『甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)』を併せたもの(『甘草瀉心湯(カンゾウシャシントウ)』という漢方薬になります)などを使いますが、他院で『半夏瀉心湯』が既に処方済みでしたので、先ほどの内容にしてみました。


 過敏性腸症候群には主に腸の異常運動であり、「気滞(キタイ)」(「気」の巡りが滞っている状態)であることが多いため、多くは『桂枝加芍薬湯』をベースにして他剤を加えることをします。ストレスやイライラなどがあると『四逆散(シギャクサン)』、冷えが強いと『人参湯(ニンジントウ)』や『大建中湯』を、ガスが多いと『大建中湯』を加えたりします。
 『桂枝加芍薬湯』が有効な人は消化管が過敏で、痙攣様運動を起こしやすいタイプで、胃の緊張も強いために逆に胃壁は伸展しにくく、食べるとすぐに膨満感がおきて一度に多量に食べられない、そして腸の蠕動運動は亢進するため、すぐに空腹感を覚え、少しずつ頻回に食べる傾向が多いようです。
 過敏性腸症候群には、便秘型・下痢型・下痢便秘交代型・ガス型があり、腹痛を伴うことが多く、特に下痢型・ガス型で症状がひどいとSさんのように日常生活に支障をきたします。通学だけではなく、受験や就職を断念したりするなどの深刻な状況がしばしば見受けられます。
2020年02月26日(水) No.944 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(185) 〜補血剤とは〜


 今回は前回の「補腎剤」に続いて「補血剤」についてお話します。「血(ケツ)」とは「血液」という概念ではなく、東洋医学では血および血によりもたらされる栄養分のことを指します。「血」によって運ばれるべき栄..
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2020年01月29日(水) No.949 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(184)〜補腎剤とは〜


 前回の「補気剤」に続き、今回は「補腎剤」についてお話します。東洋医学の五臓という考え方の一つに「腎」というものがあります。これは西洋医学の「腎臓」とは少し異なり、さまざまなことが言われますが、特に重..
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2019年12月25日(水) No.939 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(183)〜補気剤とは〜


 気力が衰えた状態(漢方では「気虚」といいます)に対応する処方のグループを「補気剤」と呼びます。漢方医学では、気の取り込みは消化器官で行われると考え、消化吸収機能の低下を改善する『四君子湯(シクンシト..
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2019年11月27日(水) No.934 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(182) 〜生薬解説シリーズ 大黄(ダイオウ)・芒硝(ボウショウ)〜


 今回は漢方薬を構成している生薬のうち、「大黄」「芒硝」についてお話いたします。「大黄」は代表的な瀉下(シャゲ)剤(過剰なものを捨てる方剤)で、いわゆる下剤として多用されます。しかしながら、下剤として..
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2019年10月30日(水) No.929 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(181) 〜生薬解説シリーズ 半夏(ハンゲ)〜


 今回は漢方薬を構成している生薬のうち、「半夏(ハンゲ)」についてお話いたします。「半夏」は嘔気や嘔吐によく使われる生薬ですが、「生姜(ショウキョウ)」(いわゆるショウガです)と組み合わせるとその作用..
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2019年09月25日(水) No.924 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(180) 〜漢方薬解説シリーズ 五苓散〜


 今回は『五苓散(ゴレイサン)』についてお話します。『五苓散』は何回も登場している漢方薬ですが、生薬の構成は「蒼朮(ソウジュツ)」「茯苓(ブクリョウ)」「沢瀉(タクシャ)」「猪苓(チョレイ)」「桂皮(..
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2019年08月28日(水) No.919 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(179) 〜パニック障害(奔豚気)と漢方薬〜


 『16歳高校2年生の女子Sさん。部活動を終えてから急に胸がドキドキして息苦しくなる。夜間救急外来にて心電図も異常なく、他院にて甲状腺機能も正常といわれ、漢方薬を試したいとの事で来院。』
 部活について詳しく聞くと大会の重圧がストレスになってSさんを苦しめていたようでした。そこで緊張とストレスを取るために『桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)』と『甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)』を飲んでもらいました。投与後2週間で部活後の呼吸困難はなくなり、呼吸苦は学校行事に数回のみでした。その後、『甘麦大棗湯』は甘くて飲みやすく、練習前に頓用すると調子がよいとのことでしたので『甘麦大棗湯』のみの処方にしました。


 このようないわゆるパニック発作は漢方医学の先人たちは「奔豚気(ホントンキ)」という名前でほぼ同じ病態をとらえていました。患者さんに症状を訊ねると、一様に「おへそのあたりからドキドキが駆け上がってきて、喉を通り過ぎ、最後に顔がカーッと熱くなる」と言います。これは、通常は上から下へ流れるべき「気」が瞬間的に逆流すること(気逆)によって起こるとされています。(子豚が身体の中を走り回っているイメージからこの名前がつけられたようです。)
 「奔豚気」は恐怖や驚きなどストレスが加わって起こります。Sさんにとってはキャプテンとしてチームを率いることがストレスだったようです。なぜ、練習中ではなく練習後に症状が出るのか最初は理解できませんでしたが、最近の研究で胃ゾンデより空気を注入することで「奔豚気」を誘発することが示唆された文献をみて思いつきました。おそらく水分を十分に取れないような激しい練習後の急な水分補充で胃が拡張されることで「奔豚気」のスイッチが入ったのではないでしょうか。
 「奔豚気」の治療には本来は『苓桂甘棗湯(リョウケイカンソウトウ)』という漢方薬があるのですが、エキス製剤にはないので、『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』に『桂枝加竜骨牡蛎湯』や『甘麦大棗湯』などを加えた処方がよく使われます。他に『人参湯』や『呉茱萸湯(ゴシュウトウ)』を加えたり、『柴胡加竜骨牡蛎湯』や『桂枝人参湯』なども使われます。
2019年07月31日(水) No.914 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(178)〜「熱証」とは〜


 漢方では熱の概念を「発熱」と「熱証」(「証」とは身体の状態)に分けて考えます。
 例えば、「発熱」があっても感染症の初期で悪寒などがあれば、「熱証」ではなく「寒証」と判断して、むしろ温めて体温を上..
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2019年06月26日(水) No.909 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(177)〜蕁麻疹(じんましん)と漢方薬〜


 蕁麻疹は、ありふれた疾患でありながらその病態には未知の部分も多く、症状の現れ方や治療の内容にも大きな違いがあります。一般には皮膚マスト細胞から放出されるヒスタミンなどの活性物質が組織に作用して知覚神..
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2019年05月29日(水) No.904 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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