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女性と漢方(172)〜漢方薬を使うときの問診ポイント〜


 漢方診療では舌を診たり(望診)、脈やお腹を触ったり(切診)、患者さんの声のはりや大きさを聞く(聞診)以外に西洋医学と同様に患者さんに直接問う(問診)という診察過程がありますが、特徴は「医師が積極的に聞か..
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2018年12月26日(水) No.876 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(171)〜感染性胃腸炎と漢方薬〜


 嘔吐と下痢あるいはそのいずれかを訴えて救急外来を受診する機会も増えてきました。その多くは軽症の感染性胃腸炎で、ウイルス性胃腸炎が最も多くを占めます。ウイルス性胃腸炎や消化不良、水分の摂取過剰による下痢や嘔吐の場合には抗生剤は使用しませんが、中等度以上の脱水に必要に応じて輸液を行います。
 漢方治療で下痢や嘔吐に最も使用されているのは幾度となく紹介している『五苓散(ゴレイサン)』です。喉の渇きを訴える患者さんには特に有効です。当院は小児科も併設しており、乳幼児には『五苓散』を水に溶かして肛門から直腸の中に注入したり、坐剤にして使用したりしています。『五苓散』は特に冬場の症状に有効です。効きが悪い場合や発症して数日経過して症状が改善しない場合には『五苓散』に『小柴胡湯(ショウサイコトウ)』を加えた『柴苓湯(サイレイトウ)』を用いたりします。
 重症の脱水になると、口渇もなくなり、水様下痢とともに手足が冷えてくる場合があります。このような場合には輸液と同時に『真武湯(シンブトウ)』を服用させると効果的です。同様の症状で嘔気・嘔吐もひどい場合には『人参湯(ニンジントウ)』を併用したりもします。いずれにせよ、体力が消耗しきっているときこそ、輸液だけでなく、漢方薬の併用はかなり有効と実感しています。


 最近、漢方薬の講演会でウイルス性胃腸炎に『桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)』がかなりの即効性があるとのお話がありました。使用法は1回目は2包で、以後1時間ごとに治るまで1包ずつ内服を続けるという手法です。ノロウイルスの場合ですと、100個以下のウイルス数で感染し、あっという間に感染が拡大してしまう状況ですので、それを抑え込むための服用の継続なのでしょう。その講演会の先生曰く、患者が途中で眠ってしまえば、効果は出ている(?)との事でした。
 私自身も『五苓散』と『桂枝人参湯』の併用は好んでよく使います。特に嘔気が強いときは「人参」が含まれた漢方薬を選択すると良い感じはします。
2018年11月28日(水) No.870 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(169)〜漢方薬解説シリーズ「排膿散及湯」〜


 今回は『排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)』という漢方薬についてお話します。この漢方薬は『桂枝湯(ケイシトウ)』の「桂枝」を「桔梗(キキョウ)」「枳実(キジツ)」に代えたような内容で発散力が強められ、さらに「芍薬(シャクヤク)」が加わって膿を強力に排出する構成になっています。なお、「桔梗(キキョウ)」「甘草(カンゾウ)」にはこの二剤で『桔梗湯(キキョウトウ)』という咽頭が腫れて痛むときによく用いる漢方薬の構成になっており、炎症を抑える作用も有しています。


 私自身は個人的にはとても好きな漢方薬の一つで、とくに皮膚疾患に用いていますが、『葛根湯(カッコントウ)』との併用で「乳腺炎」に使用したり、口腔内・鼻腔内の化膿性疾患にも使用します。副鼻腔炎では『葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)』が有効でない場合に用いて有効であったケースもあります。婦人科的には「外陰炎」(とくにバルトリン腺膿瘍)で患部は腫れて化膿している場合は抗生剤単独よりも治りが早い印象でよく使用します。
 先日の漢方研究会では、がん治療後の後遺症であるリンパ浮腫患者の蜂窩織炎(ホウカシキエン)や、骨盤腔内の膿瘍にも抗生剤単独よりも有効であるとの報告がありました。
『排膿散及湯』は単独でも十分有効なことが少なくないのですが、とくに発赤が強い場合には『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』を併せて使用したりもします。また、腫れが強いときには『猪苓湯(チョレイトウ)』を併用してうまくいくことが多いようです。
 また、化膿性疾患の再発防止効果もあるので、しょっちゅう外陰炎を繰り返す方には、治癒してもしばらく飲み続けてもらうと、再発しにくくなったり、再発しても軽症ですんだりします。
 現代医学では、抗生剤という良いお薬がありますが、抗生剤の乱用、耐性化が問題になている最中、漢方医学的に『排膿散及湯』の役割は有用かと思われます。
2018年10月31日(水) No.865 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(169)〜漢方薬解説シリーズ「排膿散及湯」〜


 今回は『排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)』という漢方薬についてお話します。この漢方薬は『桂枝湯(ケイシトウ)』の「桂枝」を「桔梗(キキョウ)」「枳実(キジツ)」に代えたような内容で発散力が強められ、さらに「芍薬(シャクヤク)」が加わって膿を強力に排出する構成になっています。なお、「桔梗(キキョウ)」「甘草(カンゾウ)」にはこの二剤で『桔梗湯(キキョウトウ)』という咽頭が腫れて痛むときによく用いる漢方薬の構成になっており、炎症を抑える作用も有しています。


 私自身は個人的にはとても好きな漢方薬の一つで、とくに皮膚疾患に用いていますが、『葛根湯(カッコントウ)』との併用で「乳腺炎」に使用したり、口腔内・鼻腔内の化膿性疾患にも使用します。副鼻腔炎では『葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)』が有効でない場合に用いて有効であったケースもあります。婦人科的には「外陰炎」(とくにバルトリン腺膿瘍)で患部は腫れて化膿している場合は抗生剤単独よりも治りが早い印象でよく使用します。
 先日の漢方研究会では、がん治療後の後遺症であるリンパ浮腫患者の蜂窩織炎(ホウカシキエン)や、骨盤腔内の膿瘍にも抗生剤単独よりも有効であるとの報告がありました。
『排膿散及湯』は単独でも十分有効なことが少なくないのですが、とくに発赤が強い場合には『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』を併せて使用したりもします。また、腫れが強いときには『猪苓湯(チョレイトウ)』を併用してうまくいくことが多いようです。
 また、化膿性疾患の再発防止効果もあるので、しょっちゅう外陰炎を繰り返す方には、治癒してもしばらく飲み続けてもらうと、再発しにくくなったり、再発しても軽症ですんだりします。
 現代医学では、抗生剤という良いお薬がありますが、抗生剤の乱用、耐性化が問題になている最中、漢方医学的に『排膿散及湯』の役割は有用かと思われます。
2018年09月26日(水) No.859 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(168)〜漢方薬解説シリーズ「白虎加人参湯」〜


 今回は『白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)』という漢方薬についてお話します。古典によれば、何らかの病気にかかった後に発汗したがまだ治らず、体の芯に熱をもって、しかも口渇がひどいような場合に用いられ..
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2018年08月29日(水) No.854 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(167)〜浮腫と漢方薬◆


 今回は前回に引き続き「浮腫」いわゆる「むくみ」に関してお話します。「むくみ」は東洋医学では「水毒(スイドク)」という体内の水分の偏在として解釈し、その原因が「気」「血(ケツ)」の異常や「水」をコントロ..
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2018年08月04日(土) No.847 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(166)〜浮腫と漢方薬 


「浮腫」いわゆる「むくみ」は体内に増えた水分がうまく排出されなかったり、滞ることでおこります。腎臓病・心臓病・ホルモンの異常・薬の副作用など西洋医学的な診断で原因を究明することが重要ですが、原因不明の..
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2018年06月28日(木) No.850 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(165)〜高齢者にみられる腰痛・夜間頻尿に対する漢方薬〜


 『73歳Cさん。数年前より腰痛があり、整形外科に通院中。変形性脊椎症との診断で湿布や鎮痛薬が処方されており、腰痛は入浴や温めると軽快する。最近は夜間に排尿のために3〜4回起きるようになり、熟睡できない..
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2018年06月04日(月) No.843 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(164)〜花粉症に「竜虎湯(リュウコトウ)〜


 花粉症に対して『小青竜湯(ショウセイリュウトウ)』は「うすい鼻水が出るタイプのカゼ」によく用いられますし、アレルギー性鼻炎にも漢方薬としては頻用され、最近はドラッグストアにも見かけるほど有名です。しかしながら、スギ花粉症に対する『小青竜湯』の治療効果を検討した報告例では有効率は45%でした。
 今回は花粉症の辛い急性期を乗り切るために大阪の耳鼻咽喉科の今中先生が開発された『竜虎湯』に関してご紹介します。『小青竜湯』単独では有効で効かないに対して、「麻黄(マオウ)」「石膏(セッコウ)」が配合された『五虎湯(ゴコトウ)』を併用すると有効率が87%と飛躍的に向上したことで、『小青竜湯』と『五虎湯』の同時併用を『竜虎湯』と命名したそうです。
 ただし、この漢方薬は「麻黄」の量が多くなるため、「麻黄」で胃腸障害や動悸などが現れやすい方には不向きであるという欠点もあります。胃もたれタイプの方には『六君子湯(リックンシトウ)』+『麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)』や『苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)』に変更してみるとよいでしょう。以前漢方研究会で、「麻黄」の量が増えると副作用でどうしても飲めない方に『竜虎湯』の『五虎湯』を『釣藤散(チュウトウサン)』に切り替える方法について発表がありました。その先生は重症の高血圧症の方に『釣藤散』(早朝時の頭痛や高血圧によく用います)を服用してもらっていたところ、「最近、花粉症に悩まされない」というお話を聞いてから、「おや!」と思ったそうです。確かに『釣藤散』には、アレルギーの炎症に効きそうな生薬が実は含まれているのです。


 花粉症で目のかゆみを訴える方には『越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)』が頻用されますが、こちらにも「麻黄」が多く含まれていますので、『釣藤散』単独や『釣藤散』+『小青竜湯』(『小青竜湯』の「麻黄」の量は少な目です)にするのも有効かもしれません。
 花粉症のシーズンには『竜虎湯』が登場する機会が多くなるかもしれませんが、ちなみに大阪の今中先生が阪神ファンにも関わらず、『虎竜湯』と命名しなかったのは、韓国の処方ですでに『虎竜湯』があるとのことで避けられたそうです。
2018年04月25日(水) No.840 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(163)〜打撲と漢方薬〜


『16歳女子学生Dさん。体育の授業中に外陰部を打撲。腫れと痛みのため、当院に来院。』
 来院時のDさんの外陰部は紫色でピンポン球大に腫れていました。痛みが強く、座るのも大変そうで排便も痛みのため思わしくないとの事。そこで『治打撲一方(ジダボクイッポウ)』という漢方薬を鎮痛剤とともに処方しました。5日後に診たところ、腫れと痛みは軽快し、本人と母親が曰く「こんなに早く治るとは」との事で、もう一週間漢方薬のみ続けてもらいました。
 『治打撲一方』は江戸時代の香川修庵が考案した民間薬として使用された漢方薬です。打撲症の場合には基本的には「瘀血(オケツ)」(詳細は以前号)の状態を改善する薬が使用されますが、『治打撲一方』には鎮痛効果に加え、組織を修復する作用をもつ生薬も含まれています。また、下剤の際によく使われる「大黄(ダイオウ)」という生薬も含まれていますが、この場合は瀉下(シャゲ)作用よりも清熱作用すなわち抗炎症作用が期待されます。


 打撲直後には『三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)』や『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』なども用いられますが、大きな皮下出血がある場合には『通導散(ツウドウサン)』を用い、当院でも重度の分娩時外傷の際によく使用します。『治打撲一方』は急性期を過ぎた時期にも有効で日を経た打撲症で痛みや違和感の残った場合にも用いられますが、打撲後の比較的早期にも疼痛・腫れに対してかなり有効である印象は使用経験から感じます。
 打撲というと湿布という印象がありますが、打撲後の疼痛・腫れ・紫斑(皮下血腫などで皮膚が紫色に変色した状態)に対する漢方薬のアプローチは意外にも西洋薬を凌駕する側面をもつと思います。即効性も期待できますので、打撲の際は一度お試しください。
2018年03月28日(水) No.836 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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