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女性と漢方(165)〜高齢者にみられる腰痛・夜間頻尿に対する漢方薬〜


 『73歳Cさん。数年前より腰痛があり、整形外科に通院中。変形性脊椎症との診断で湿布や鎮痛薬が処方されており、腰痛は入浴や温めると軽快する。最近は夜間に排尿のために3〜4回起きるようになり、熟睡できない..
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2018年06月04日(月) No.843 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(164)〜花粉症に「竜虎湯(リュウコトウ)〜


 花粉症に対して『小青竜湯(ショウセイリュウトウ)』は「うすい鼻水が出るタイプのカゼ」によく用いられますし、アレルギー性鼻炎にも漢方薬としては頻用され、最近はドラッグストアにも見かけるほど有名です。しかしながら、スギ花粉症に対する『小青竜湯』の治療効果を検討した報告例では有効率は45%でした。
 今回は花粉症の辛い急性期を乗り切るために大阪の耳鼻咽喉科の今中先生が開発された『竜虎湯』に関してご紹介します。『小青竜湯』単独では有効で効かないに対して、「麻黄(マオウ)」「石膏(セッコウ)」が配合された『五虎湯(ゴコトウ)』を併用すると有効率が87%と飛躍的に向上したことで、『小青竜湯』と『五虎湯』の同時併用を『竜虎湯』と命名したそうです。
 ただし、この漢方薬は「麻黄」の量が多くなるため、「麻黄」で胃腸障害や動悸などが現れやすい方には不向きであるという欠点もあります。胃もたれタイプの方には『六君子湯(リックンシトウ)』+『麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)』や『苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)』に変更してみるとよいでしょう。以前漢方研究会で、「麻黄」の量が増えると副作用でどうしても飲めない方に『竜虎湯』の『五虎湯』を『釣藤散(チュウトウサン)』に切り替える方法について発表がありました。その先生は重症の高血圧症の方に『釣藤散』(早朝時の頭痛や高血圧によく用います)を服用してもらっていたところ、「最近、花粉症に悩まされない」というお話を聞いてから、「おや!」と思ったそうです。確かに『釣藤散』には、アレルギーの炎症に効きそうな生薬が実は含まれているのです。


 花粉症で目のかゆみを訴える方には『越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)』が頻用されますが、こちらにも「麻黄」が多く含まれていますので、『釣藤散』単独や『釣藤散』+『小青竜湯』(『小青竜湯』の「麻黄」の量は少な目です)にするのも有効かもしれません。
 花粉症のシーズンには『竜虎湯』が登場する機会が多くなるかもしれませんが、ちなみに大阪の今中先生が阪神ファンにも関わらず、『虎竜湯』と命名しなかったのは、韓国の処方ですでに『虎竜湯』があるとのことで避けられたそうです。
2018年04月25日(水) No.840 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(163)〜打撲と漢方薬〜


『16歳女子学生Dさん。体育の授業中に外陰部を打撲。腫れと痛みのため、当院に来院。』
 来院時のDさんの外陰部は紫色でピンポン球大に腫れていました。痛みが強く、座るのも大変そうで排便も痛みのため思わしくないとの事。そこで『治打撲一方(ジダボクイッポウ)』という漢方薬を鎮痛剤とともに処方しました。5日後に診たところ、腫れと痛みは軽快し、本人と母親が曰く「こんなに早く治るとは」との事で、もう一週間漢方薬のみ続けてもらいました。
 『治打撲一方』は江戸時代の香川修庵が考案した民間薬として使用された漢方薬です。打撲症の場合には基本的には「瘀血(オケツ)」(詳細は以前号)の状態を改善する薬が使用されますが、『治打撲一方』には鎮痛効果に加え、組織を修復する作用をもつ生薬も含まれています。また、下剤の際によく使われる「大黄(ダイオウ)」という生薬も含まれていますが、この場合は瀉下(シャゲ)作用よりも清熱作用すなわち抗炎症作用が期待されます。


 打撲直後には『三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)』や『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』なども用いられますが、大きな皮下出血がある場合には『通導散(ツウドウサン)』を用い、当院でも重度の分娩時外傷の際によく使用します。『治打撲一方』は急性期を過ぎた時期にも有効で日を経た打撲症で痛みや違和感の残った場合にも用いられますが、打撲後の比較的早期にも疼痛・腫れに対してかなり有効である印象は使用経験から感じます。
 打撲というと湿布という印象がありますが、打撲後の疼痛・腫れ・紫斑(皮下血腫などで皮膚が紫色に変色した状態)に対する漢方薬のアプローチは意外にも西洋薬を凌駕する側面をもつと思います。即効性も期待できますので、打撲の際は一度お試しください。
2018年03月28日(水) No.836 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(162)〜不眠に対する補中益気湯の効果〜


『48歳専業主婦Cさん。更年期障害に伴い、動悸や疲れやすいなど症状に対して当院で『柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)』を処方しており、比較的良好な状態であった方で、最近1ヶ月前頃から不眠(寝つ..
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2018年02月28日(水) No.832 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(161) 〜貧血に伴う症状に漢方薬〜


『34歳Bさん。食欲がなく、疲れやすく、めまいや立ちくらみが頻回におこるので近医受診したところ貧血と診断された。婦人科受診を勧められ、当院に来院。』
 貧血とは、血液中の赤血球やそこに含まれる血色素(..
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2018年01月31日(水) No.828 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(160) 〜朝起きれない女子中学生〜


『14歳Aさん。小学6年生のころから朝起きにくくなった。近医にて起立性調節障害(以下ODと略)と診断され、内服薬(ミドドリン塩酸塩)などで軽快したことがあるものの、その後頭痛・倦怠感にて他院で『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』を処方され症状は一時改善した。中学1年の夏休み前から、朝起きられず登校できなくなり、ミドドリン塩酸塩と『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』を処方されたが、改善されず当院に来院。』
 ODは思春期初期にみられる自律神経失調症とされ、不登校の原因の一つにもなっています。起立時の血圧低下にはミドドリン塩酸塩などの昇圧剤がよく用いられますが、動悸などの副作用のため治療困難な例は少なくありません。


 Aさんの症状で「口渇、立ちくらみ、心下部振水音(みぞおちのあたりを揺らすとポチャポチャと音がする状態)」は「水毒」、「疲れやすい、身体が「だるい、体が重い、食欲がない」は「気虚」と漢方医学的にとらえらえましたが、「朝起きられない」症状をODとみるか、うつ症状とみるかが問題でした。気分の抑うつなどは明らかでなかったため、基本病態を「気虚」ではなく「水毒」とみて『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』を処方しました。
 二週間後、「朝起きやすくなり、学校へは週2回午前中行けるようになった。」との事。頭痛がひどいときには『五苓散(ゴレイサン)』を併用してもらいました。4週間後、「午前中は毎日登校できた。」母親がかわりに来院したので追加処方し、良くなれば廃薬としました。
 「朝起きられない」という主訴に対しては、うつ症状との鑑別が重要になります。Aさんの場合には明らかな精神症状や学校でのいじめなどのエピソードを認めなかったのでODを主とした病態を考えました。もしメンタルヘルス的不調が主となる場合であれば、「気虚」に対しては『補中益気湯』『六君子湯(リックンシトウ)』が有効でしょうが、ODに類似したうつ症状に対する効果は期待しがたいと思われます。
 今回の「朝起きられない」原因を精神面・身体面のいずれに求めるかは他の症状と合わせた総合的な判断が必要です。
2017年12月27日(水) No.824 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(159) 〜月経困難症と漢方薬〜


 いわゆる生理痛のひどい症状を月経困難症といいます。その中でも子宮筋腫や子宮内膜症などの器質的異常のないものである機能性月経困難症に関しては60〜70%の症例に対し鎮痛剤の頓服で即効性はありますが、一時的..
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2017年11月29日(水) No.820 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(158) 〜手術後の「冷え」に漢方薬〜


 『32歳Mさん。2回流産後に、月経痛がひどく、子宮内膜症の診断を受け、他施設にて両側の卵巣嚢腫を摘出し、手術後の癒着も指摘されていた。現在は「冷え」に困っており、漢方薬を試してみたいとの事で、当院受診。』
 Mさんには「冷え」がとにかくつらいという症状から『当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)』をまず飲んでもらいましたが、一時的に温かくなる感じはするもののイマイチの反応でした。症状をよく聞いてみると、「冷え」ばかりではなく、「お小水をした後に不快感が残り、また全身が疲れやすい。」との事でした。尿検査では異常所見はありませんでした。


 そこで、Mさんには『真武湯(シンブトウ)』に変えてみたところ、「今度の薬は身体の芯から温まる感じがする。冷えがひどいときの腰痛にも効いている。最近は疲れもとれて食欲があるし、冷えによって起こっていたのか分からないが、膀胱の症状も良くなった。」との事。
 東洋医学では「冷え」という症状を非常に重要に考えます。「冷え」があるとないかでは漢方薬も根本的に大きく変わってきます。『真武湯』は、冷え症で虚弱な体質の諸症状に用いられますが、胃腸が弱く疲れやすく、やや尿の出が悪いような方にはより有効です。「冷え」には『真武湯』にも含まれている「附子(ブシ)」という生薬が有効です。「附子」はトリカブトの根で、昔アイヌ人が毒矢として矢の先に塗っていたといわれる毒性の強いものです。しかし、漢方薬ではこういうものまでうまい使い方をして身体を温めて「冷え」を治す妙薬にしてしまうのです。
 その後、Mさんは胃腸の症状に重点を置いて、『六君子湯(リックンシトウ)』に「附子」の粉末を加えて飲んでもらい、日常生活が快適になったようです。さらにMさんは散歩をしたりして積極的に身体を動かすように心がけるようになり、その点も症状の改善に大きく貢献しているように感じました。
2017年11月01日(水) No.816 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(157) 〜美味しい漢方薬は効果がある〜


 「良薬は口に苦し」という孔子の名言がありますが、特に漢方薬は苦くて飲みにくいという印象を持っている方は多いと思います。
 以前に子供の「寝冷え」に対する漢方薬で味を本人に飲んでもらってその場でお薬を決める方法を試みている先生(大阪の開業医)のお話を思い出しましたのでご紹介いたします。
 親子で来られて、本人が「漢方薬なんか飲めるわけないやん」というのを『人参湯(ニンジントウ)』をお湯に溶かしてスプーンで味見(テイスティングですね)してもらいました。「あれ?これやったら飲めるわ」という反応で、次に『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』を試したところ、「飲めるけど、いまひとつやな」(生意気な小学生ですね)との弁。そこで、先生は本人が飲みやすいという『人参湯』を処方して、寝冷えは数日で解消し、「おなかがあったかい感じがする」との事でした。


 漢方薬の味に関する評判は、よく耳にします。『小建中湯』はうるち米から作った「飴」が含まれていて甘味があるので、比較的飲みやすい薬なのですが、逆に「甘くて飲みにくい」ことがあったり、『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』という炎症を抑える場合に使う薬は苦くて有名ですが、症状が強い方は子供でも意外とあっさり飲めたりもします。
 漢方薬には味にも薬効があることはいわれています。例えば、酸味は粘膜などを収縮させたりしますし、苦味は乾燥させたり、下に降ろす作用があります。甘い物は「補う」働きがあるため、普段から摂取する必要や場合により身体の方から要求してくることもあります。苦い物は摂り過ぎると体内の必要なものを体外に排出してしまうので、苦い物をあまり好まないのは自然の摂理にかなっているのでしょうか。ただし、病気になって体内の悪い物を排出させるのに苦味のものが必要になることがあるのです。不思議なことに苦い物が必要なときは意外と苦い物がそれほど苦ではなくなりますし、普段甘い物が好きなのに逆に苦手になるときもあります。そのときの証(身体の状態)により「味証」が変化するものなのでしょう。
となりますと、孔子の「良薬は口に苦くして、病に利あり。」は「良薬は口に美味にして、病に利あり。」が正しいのではないかと思ってしまいますね。
2017年10月01日(日) No.812 (山内先生(産婦人科)のコラム)

女性と漢方(156) 〜食欲不振に対する漢方薬〜


 夏場が過ぎてどうも食欲がないということはよく耳にしますが、食欲不振に関しても漢方薬は西洋薬にはない視点で捉えることができます。食欲不振の漢方治療では、消化機能そのものが低下した「脾虚(ヒキョ)」という概念がありますが、消化管の問題であっても「気」の問題を考慮しながらの漢方薬の選択となります。
 「気」の異常では、「気虚」(「気」の減少…無気力、元気がない、疲れやすい、日中から眠いなど)の場合には『六君子湯(リックンシトウ)』『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』が、背景に「気逆」(「気」の上昇:冷え・のぼせ、ほてり、頭部発汗、イライラ、発作性の頭痛など)が疑われれば、『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』が適応になります。風邪や熱中症などの熱性疾患の後に食欲不振が出現した場合には『小柴胡湯(ショウサイコトウ)』などの「柴胡」を含む漢方薬が有効です。「気うつ」(「気」の滞り…不安感、憂うつ感、胃のつかえ感など)の状態がはっきりとある場合には『平胃散(ヘイイサン)』『半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)』『香蘇散(コウソサン)』が適応です。


 便秘と食欲不振が併発している場合には『大承気湯(ダイジョウキトウ)』『三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)』を、急性感染胃腸炎など急性の下痢を併発している場合には『半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)』『五苓散(ゴレイサン)』がよく用いられます。下痢が慢性的であり、「脾虚」の状態に陥った場合には『人参湯(ニンジントウ)』といった「人参」を含む漢方薬が有効です。
 また、妊娠悪阻(つわり)や抗がん剤を使用した場合で嘔気・嘔吐を伴う場合には『小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ)』がよく用いられますが、先に述べた状態があれば漢方薬を適宜変更または併用することになります。
 西洋薬ではいわゆる「胃薬」しかありませんが、食欲不振でもそれぞれの状態にしたがった選択で漢方薬の効果が実感できることがあります。
2017年09月01日(金) No.808 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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