タイトル

ばね指


 指は腱によって曲げ伸ばしをする事ができます。曲げ伸ばしをする筋肉は前腕にあり、その力を腱が指先まで伝えます。その通り道で腱が浮き上がらないように押さえつけているのが腱鞘です。この腱鞘は指から指の付け根にかけて存在していますが、指のつけね部分は特に力がかかるため炎症を起こしやすくなっています。指を動かす度にその部分の腱と腱鞘の間で摩擦が起こり、指の付け根が痛みます。腱が腫れ、腱鞘が肥厚してさらに通りが悪くなり悪循環となり、さらに進行すると引っ掛かりが生じて指が曲がったまま伸ばせなくなる「ばね現象」が起こります。
 症状は朝方に強く、日中に手を使っている時は症状が軽減することもあります。更年期や、妊娠出産期の女性に多く、また手の使い過ぎやスポーツをする人などに多いのも特徴です。糖尿病、リウマチ、透析患者にもよく発生します。
 保存療法としてはシーネなどによる手指の安静や、内服、炎症を抑える腱鞘内のステロイド注射が行われます。ステロイドの注射は一旦は改善するものの、時間が経つと再発することも多くみられます。


 また「とくなが法」というストレッチが有効です。
ー蠎鵑鯣燭蕕擦疹態で、もう一方の手で指を最大限に反らせます。
 これは腱のストレッチと、関節の可動域を改善する目的があります。
⊆蠎鵑魴敕挌燭蕕擦疹態でブロックなどをぐっと握ります。
 指を曲げる力がかかることで、腱鞘を引き上げてその内腔を広げる目的があります。
 これはやったその場ですぐにばね現象が改善されることがあります。
 それぞれ一回につき30秒、1日10回行います。指を反らす際には炎症、痛みが悪化することがあるので、痛みが許容範囲を超えない程度のストレッチとしましょう。正しく継続すると一ヶ月ほどで効果が現れます。
 これらで改善しない場合は手術を行います。手術は、腱鞘を切開して通りをよくするもので、一度手術を行うと再発はほぼありません。
2020年06月30日(火) No.970 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

ドケルバン病


 ドケルバン病とは手首に痛みがでる腱鞘炎です。1985年にスイスの外科医ドケルバンによって報告されました。
 親指を動かす二つの腱と腱鞘との間に炎症が起こった状態で、親指や手首を動かすと痛みが生じます。腱は筋肉と骨とを繋ぐ丈夫な紐のような組織です。腱鞘はバンドのようなループになっていて腱が骨から浮き上がらないように押さえつけており、その中を腱が行き来することで指の曲げ伸ばしを滑らかに行うことができます。
 親指の使い過ぎによる負荷のため腱鞘が肥厚して硬くなったり、腱の表面が傷んで腫れたりして動きがスムーズでなくなり、さらにそれが刺激となって悪循環になります。超音波検査では腱の腫れ・腱鞘の肥厚などが確認できますが、生まれつき二つの腱の間に隔壁や骨の盛り上がりがある方がいて、その場合痛みを起こしやすいと言われています。
 慢性的な刺激が原因であり、手をよく使う仕事の人やスポーツをする人、スマートフォンの使い過ぎなども原因となります。妊娠・出産期の女性、中高年の女性に多く生じますが、解剖学的な男女差や、女性ホルモンのバランスが乱れることで腱がむくむことが炎症と関係すると考えられています。


 治療はまずは安静です。痛みがでる動きを避け、包帯やサポーターで親指・手首の動きを制限します。痛み止めの内服や腱鞘内へのステロイド注射を行う事もあります。また閉経後の女性の場合、エクオール(女性ホルモン類似物質)含有サプリメントが有効である可
能性があります。
 これで改善しなかったり再発を繰り返す場合は手術を行います。手術では、厚くなった腱鞘を切開し腱を開放します。
 ドケルバン病の発症や再発を防ぐためには、日頃から予防を心がけた生活をすることが大切です。スマートフォンやパソコンの操作、楽器演奏、スポーツなど、親指や手首を使った動作をする時には、長時間の作業は避けて定期的に手を休ませることを習慣づけるようにしましょう。
2020年05月27日(水) No.965 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

母指CM関節症


 母指CM関節症は母指(親指)の付け根が痛くなる疾患です。
 母指の手首に近い関節をCM関節といいます。この関節は、他の指の関節と比べて多方向に動き、可動域が大きいのが特徴です。これにより母指は他の指との間で「つまむ」動作ができるのですが、このときにCM関節には大きな力がかかります。物を強くつまむ時には120圓領呂かかるそうです。元々靱帯の支持性が弱く不安定であることに加え、日常生活で負担がかかることが母指CM関節症の原因です。
 中高年の女性に多く、閉経後の女性の1/3、90歳以上の女性では
全例で関節変形がみられるという報告があります。女性に多いのは、日常生活の中で長年にわたり家事を続けることでいつのまにか負担が蓄積している事が多い為と考えられます。また女性ホルモンは骨や関節を柔軟に保つという作用があるので、閉経後の女性は関節の炎症・変形を起こしやすくなります。
 症状は圧痛に加え、ビンの蓋を開ける、物を持つ、字を書く、洗濯バサミをつまむ等、日常の様々な動作で痛みが生じます。痛みによりつまむ、握ることが困難になり、細かい作業ができなくなります。利き手でない方に多いとされますが、利き手でない方の手が担当する動作の方がCM関節への負担が大きい可能性があります。
 レントゲンでは関節の隙間が狭くなったり、骨が変形したり、時には亜脱臼を認めることがあります。


 治療は、まず母指を動かさない
ことです。装具をつけることで関節が安静に保たれますが、3ヶ月ほど、炊事・入浴以外は常時しっかり着用を続けることで痛みが改善する方が多いです。他には痛み止めの内服、関節内の注射があります。
 これらで症状の改善がなく、日常生活への影響が大きい場合は手術を考慮します。手術は靱帯再建、骨を切って固定する、関節自体を固定するなど様々な方法があり、程度や年齢、術後の手の使用状況などを考慮して手術方法を決めます。
 母指CM関節症は重症化を防ぐためのセルフケアが大切です。親指は他のどの指より使用頻度が多く完全な予防は難しいのですが、痛みが出てきたら悪化する前にテーピングや装具で固定し安静にしてください。
2020年04月28日(火) No.961 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

ヘバーデン結節


 ヘバーデン結節とは、指の第1関節(DIP関節)が変形して曲がってしまう疾患です。この疾患の報告者ヘバーデンの名前にちなんでいます。心臓の血管が細くなり胸痛を起こす「狭心症」を命名したのもヘバーデンです。
 原因は不明ですが、40歳以降の女性に多く発生します。手指などの関節が痛むリウマチとは別の疾患です。人差し指から小指にかけてDIP関節が赤く腫れて痛んだり曲がったりします。動きも悪くなり、痛みのために強く握ることが困難になります。これが原因で前回お話しした「指粘液のう腫」ができることもあります。初期には起床時に手指の違和感やこわばりがあり、日によって感じる指や程度が異なりますがしばらくすると治ります。この症状が出ては治るという波が7〜10年ほど繰り返され、やがて関節の変形に至ります。レントゲンでは骨が棘のように変形したり、関節の隙間が狭くなったりする変化がみられます。
 第2関節(PIP関節)におこる場合はブシャール結節といい、ヘバーデン結節よりも稀ですが、より生活に支障が大きい場合があります。


 つまむ動作や、物があたったときに痛みがでるため、治療はまずはテーピングや装具で固定をし関節を安静にします。テーピングは、伸縮性のない医療用テープを背側あるいは全周性に巻き付けます。これだけでも関節の安定化と保護
になり痛みは和らぎます。関節内へのステロイド注射も有効です。痛みが改善しない時や、変形がひどくなり日常生活に支障をきたす場合は手術を考慮します。手術は、軟骨がすれる痛みを抑えるために関節を固定するのですが、痛みがよくなるかわりに関節は動かなくなります。
 近年、エストロゲンと似た働きを持つ「エクオール」含有サプリメントがヘバーデン結節に有効であると話題になっています。ヘバーデン結節の発症には女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量の減少が関わっている可能性があると考えられており研究が進んでいます。
2020年03月31日(火) No.956 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

指粘液のう腫


 指粘液のう腫は、指の関節に発生する良性の腫瘍です。
 加齢により指の関節の骨が変形して棘のように尖り、関節に炎症が起こった結果、関節液が関節の外にでてきて腫瘤を作ります。また組織の変性により粘液が過剰につくられて腫瘤を作ることもあります。
 爪と関節の間の部分に水ぶくれのような腫瘤ができます。皮膚は薄くなり、自然に潰れて中の透明なゼリー状の粘液が出てくることがあります。痛みがでることもありますが、腫瘤が周囲の組織を圧迫することが痛みの原因である場合や、関節の変形自体も痛みの原因となります。
 腫瘤がつぶれて感染を起こし炎症が関節の中に及び関節が固まって動かなくなることや、また、爪母という爪の根元にある爪を作る組織が腫瘤で圧迫されたり炎症が及んだりすると、爪の変形が起きることがあります。


 治療は、関節痛がある場合は関節をテーピングや装具で固定することで関節の炎症が改善し、副次的に粘液のう腫も治まることがあります。しかし装具を中止すると再発する可能性があります。
 腫瘤は潰れたりまたふくらんだりを繰り返しますが、まずは注射器で中の粘液を抜きとります。
 関節内にステロイドを注射して関節の炎症を治めることも有効です。繰り返す場合や、爪の変形がある場合は手術を行います。
指粘液のう腫の根本的な原因は関節の変形なので、手術では関節が変形して棘になった部分や、滑膜を除去します。腫瘤の部分の皮膚は薄くなっていることが多く、縫い閉じることが難しい場合には、皮弁といって皮膚を大きく切って回して皮膚を閉じるような工夫をします。
 爪の変形があった場合、爪母が腫瘤で圧迫されていただけならば治りますが、炎症がおよんでいた場合には変形が残ることがあります。
2020年02月26日(水) No.946 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

ガングリオン


 ガングリオンとは、手の腫瘍のなかで最も多い良性腫瘍です。「ガングリオンですね」と言うとガンの仲間かと思ってびっくりされる方がいますが、ガンではありません。
 袋の中に透明なゼリー状の物質が詰まった腫瘍で、手首周辺の関節包(関節を含んでいる袋)や手のひらの腱鞘(腱の周りにある浮き上がり防止の鞘)部分から発生します。腱の摩擦や機械的な変化などが発生の原因の可能性はありますが、はっきりとした原因はわかっていません。ゼリー状の物質は、関節液や腱と腱鞘の潤滑油である滑液がガングリオンの袋に送られ、濃縮したものです。関節からできるものは関節包と茎でつながっていることがほとんどです。
 大きさは1〜2冂度で、硬い腫瘤を触れます。若い女性に多く見られますが、必ずしも手をよく使う人にみられるわけではありません。多くは無症状ですが、押すと痛みがでたり、神経を圧迫して痛みやしびれを生じることがあります。


 特に症状がない場合は放置しても問題はありません。自然に消失する場合もあります。大きくなるもの、痛みやしびれが強いもの、見た目が気になるものは治療を行いますが、一番簡単な方法は穿刺です。注射器で中身のゼリーを抜き取ります。この方法は再発することが多いのですが、何回か穿刺を行ううちに治ることもあります。ガングリオンに力を加えて押し潰す方法もあります。それでも再発を繰り返す場合は手術を行いま
す。局所麻酔下に皮膚を切開しガングリオンの茎を含めて摘出します。内視鏡を用いた鏡視下切除術も行われます。しかし手術をしても1〜2割ほどは再発してしまうことがあります。
2020年01月29日(水) No.951 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

褥瘡(じょくそう)(床ずれ)


 褥瘡は、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなることでその部分の組織が死んでしまい傷ができることです。「褥」とはふとんのこと、「瘡」とは傷のことで、「長時間寝込んでいる時に生じる傷」と言う意味です。
 私たちは無意識のうちに寝ている時は寝返りをうったり、長時間座っている時にはお尻を浮かせる等して、同じ部位に長時間の圧迫が加わらないようにしています。しかし寝たきりや麻痺など自分で体を動かせない方は、圧迫された組織に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり褥瘡が生じます。骨折などで装着したギプスや、強く巻いた包帯などが原因になることもあります。
 褥瘡のできやすい場所は体の向きによって違ってきますが、骨が飛び出た場所は強く圧迫されてできやすくなります。深さは皮膚がむける程度のものから筋肉や骨に達する深いものまで様々です。


 治療はまず第一に、創部の荷重を軽減して血流の改善を図ることです。圧迫の強さにより褥瘡の発生時間は異なりますが、通常2時間以内に除圧することで発生が予防できます。2時間ごとに規則的に体位変換を行い、またクッションやエアマットなどを用いて荷重の分散を図ることも大切です。ずれや摩擦なども褥瘡を悪化させる原因となるので、体位変換の際には工夫が必要です。褥瘡ができやすい部分は、赤くなったりしていないかどうか着替えや入浴時に観察しましょう。
 オムツを使用している方では、皮膚が排泄物にさらされて脆弱に
なり傷ができやすくなります。洗浄、保湿などの皮膚保護のケアが重要となります。
 栄養状態が悪い場合は傷の治りが悪くなるため、栄養の改善を図ることも大切です。傷の治りに必要な栄養素は、タンパク質、亜鉛、鉄、ビタミンCなどです。
 傷の処置は軟膏や創傷被覆材などを用います。傷が深く軟膏等だけで治癒が難しい場合は、壊死した組織を除去したり植皮術や皮弁術など外科的治療が必要になることがあります
 予防とケアをきちんとすれば褥瘡の発生は抑えられます。一昔前と比べて褥瘡はかなり減っていますが、これは各病院の褥瘡対策が充実してきているからです。褥瘡は、作らないことが何よりも大切です。
2019年12月25日(水) No.941 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

脂肪腫


 脂肪腫とは、皮下にできる腫瘍のなかではいちばん多い良性の腫瘍です。
 脂肪細胞が増殖する腫瘍で、皮下脂肪組織の中、筋肉の中、筋肉の下など、からだ中いろいろな場所にでき、背中、肩、首などに多い傾向があります。幼少期に発生すると考えられていますが、成長がゆっくりなため発見は遅く、20歳以下にはまれで、40歳代から多くみられます。女性、肥満者に多いと言われています。はっきりした原因はわかっていません。
 大きさは、数ミリ程度の小さなものから10センチ以上に及ぶものまで様々です。皮膚がドーム状に盛り上がり、やわらかいしこりとして触れます。直上の皮膚に異常は見られません。通常は痛み・しびれなどの症状はありませんが、できる場所によっては組織が圧迫されることによる痛みや圧迫感を伴うことがあります。


 臨床症状と画像検査から診断します。画像検査では超音波、CT、MRIなどがあります。
 脂肪腫は成長はゆっくりでも徐々に大きくなり、自然になくなることはありません。特に問題を起こしていない脂肪腫であれば積極的に治療を行わず様子をみることもあります。しかし、見た目が気になるもの、大きなものや、短期間に大きくなるものは手術を行います。
 手術では皮膚を切開し、腫瘍を摘出します。腫瘍は薄い膜に包まれて周りの組織に癒着しているので、絞り出したり、注射器などで中
身を抜き取るといったことはできません。皮膚を切開し、かたまりごと摘出します。
 小さなものであれば局所麻酔で行いますが、大きなものや場所によっては全身麻酔が必要になることもあります。
 稀ですが、脂肪腫のように見てえても脂肪肉腫のような悪性腫瘍が混じっていることもあります。臨床検査、画像検査でも良性の脂肪腫との鑑別が難しい場合があり、正確に診断するためには摘出して病理組織の検査を行う必要があります。
2019年11月27日(水) No.936 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

ほくろ


 ほくろは良性の母斑細胞(ほくろ細胞)のかたまりです。メラニン色素を有するため、茶色〜黒色を呈します。
 ほくろには色々な種類があります。生まれつきあるもの、成長途中に現れてくるもの、平らなほくろや、盛り上がったほくろ、茶色や黒色のほくろ、肌色のほくろ、毛が生えているほくろなどです。昔からあったものが大きくなってきたり盛り上がってきたり、色が変わってきたり、かゆみがでたりする場合もあります。
 ほくろのようにみえても、シミや脂漏性角化症などの他の良性の腫瘍だったり、なかには基底細胞癌や悪性黒色腫などの悪性の腫瘍の場合もあります。
 普通の人が見ただけでは良性のものなのか、悪性のものなのか、放っておいてよいのか、治療すべきなのかわからないことが多く、時には医師がみても判断が難しいこともあります。
 次にあげるポイントをチェックしてみてください。2つ以上あてはまるようなら一度病院で診てもらうことをおすすめします。



・左右対称でない。
・周りがギザギザしている。
・色が均一でなく濃淡が混じっている。
・6舒幣紊△
・大きさや色、形が変化する

 これらが1〜2年の経過で変化するようなら要注意です。
 一年に一回は全身のほくろやシミをチェックしてみてください。自分で見えない頭髪部や背中はご家族にみてもらいましょう。また、ほくろをいじると変化することがあるのでできるだけ刺激をしないようにしましょう。
 良性のものであれば見た目が気にならなければ治療の必要はありません。目元や口元など場所によっては魅力的に見えたり、肌を白く見せたりすることもあります。治療法は、手術で切り取る方法とレーザーを使うものがあります。手術では単純にほくろの周りを切って縫合することがほとんどですが、大きさや場所によっては皮弁や植皮などの工夫が必要になることもあります。メスのかわりに炭酸ガスレーザーを用いる場合もあります。各々長所と短所があり、大きさや場所、組織検査の必要性などで治療法が異なります。
2019年10月30日(水) No.931 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

外反母趾


 外反母趾とは、足の親ゆびが外側に変形して足の付け根が内側にせり出した状態です。変形がひどくなると、飛び出た部分や足の裏が痛くて靴がはけなくなり、その上痛くて無理な歩き方になって脚が疲れやすく、膝や股関節まで痛むこともあります。
 外反母趾は女性に圧倒的に多く、これは関節の柔らかさなどが関係していると言われます。しかし、一番の原因は合わない靴です。特にハイヒールなど先の細い靴は外反母趾の最大の原因です。
 予防と治療は、まず靴を見直すことです。先が広くて指の運動を妨げない、踵の低い、柔らかい素材の靴が推奨されます。ハイヒールほどではありませんが、ストッキングも外反母趾を進行させる一つの原因と言われています。また、子供のころに小さい靴を履いていると外反母趾になりやすいので、成長期の子供の靴は定期的に見直してください。


 次に、足指の運動やストレッチを行い関節や筋肉の拘縮を予防することが重要です。
●ホーマン体操
 幅広のゴムひもを両方の親ゆびにかけ、足を伸ばして踵を合わせた状態で足先を外側に広げます。5〜10秒保ち、元に戻します。
●タオル寄せ運動
 椅子に座った状態で床にタオルを置き、指でタオルをたぐり寄せます。
●グーチョキパー体操
 足の指でグーチョキパーをします。
 少しずつ進行する外反母趾を食い止めるために、これらの運動を毎日数分続けることが肝心です。
 足底板(インソール)や矯正装具なども用いられます。足底板を用いることにより、痛みやしびれなどの改善、変形の進行防止になります。親ゆびに装着するバンドや趾間に挟む器具もありますが、痛みは改善しても変形を矯正するまでの効果は期待できません。
 これらで痛みが改善しない場合は、薬物療法や手術を行うことがあります。
 先日、足と靴の先進国であるドイツの整形外科靴職人から聞いた話では、ドイツでは外反母趾の手術件数が日本より圧倒的に少ないのだそうです。自分に合った靴を選ぶことで変形の予防ができているので、手術に至る変形を起こすことが少ないのです。
 外反母趾は、これ以上変形させないことがなにより重要です。まずは靴を見直してみてください。
2019年09月25日(水) No.926 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

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