タイトル

慢性膿皮症


 慢性膿皮症とは、頭、首、わき、臀部、外陰部などに細菌感染による炎症を繰り返す難治性の病気です。
 汗腺や毛包の機能障害により毛包が閉塞することから発症します。多くはニキビのような化膿巣があり、徐々に拡大してくるようです。
 皮膚の下で炎症が長期間持続し、トンネル状に膿の溜まりを作り広がっていきます。皮膚の外に悪臭を伴う膿が出てくることもあります。肛門周囲に病変が生じることと関連して痔瘻を伴うことがあります。痛みを伴い、連日の処置が必要となり、また整容面での問題もあるため精神的にも大きな負担となります。
 原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因が指摘されています。環境的要因としては喫煙、肥満がリスク因子としてあげられています。また、長時間座ることが多い方や、局所が不潔であるといった環境要因も関与すると考えられています。中年男性に多く発症します。


 稀ではありますが、長く炎症を繰り返している場合、瘢痕から皮膚がんが発生する場合もあるので、しっかりとした治療が必要です。
 軽症なものであれば局所の
清潔を保ち、抗菌薬の内服と外用で改善することもあります。
 病変が広がってしまった難治性の場合のものは外科的に切除を行います。皮膚を全層で大きく取り除きますが、範囲が広い場合には植皮術などが必要になる場合があります。また分子標的薬の研究も進められています。
2021年09月29日(水) No.1023 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

毛巣洞(もうそうどう)


 毛巣洞とは、お尻の割れ目の少し上に生じるしこりで、中に毛が入っているという不思議な病気です。
 普段は無症状ですが、感染が起こると痛みや腫れがあったり、膿が出てきたりすることがあります。


 この病気の原因は不明ですが、先天性説と後天性説があります。前者では、お母さんのお腹のなかで体がつくられる過程で、体毛の原基が皮膚に潜り込んでいて歳をとるにつれて毛が伸びてきて発症するという考え方です。後者では慢性刺激によって体毛が皮膚に入り込むように伸びることによって生じるという考え方です。体毛が含まれるものの、毛根がなく発毛の状態がみられないことから、現在はこちらの説が有力です。
 男女ともに発生しますが、長時間の運転などで座っている時間が長く、かつ毛深い肥満の男性のお尻に多くみられます。アメリカでは、振動するジープに乗る軍人に多いことからジープ病とも呼ばれています。シートに接触する部分に力がかかりやすくなり、その部分の毛が皮膚に潜りこんでしまうために発症しやすくなると考えられています。
 感染が起こった場合は、皮膚を切開して膿を洗い流します。根本的には毛が皮膚に入り込んだところを含めて一塊に切除することが必要です。ときには深くまでトンネルが続き、皮膚を閉じることが難しい場合もあります。その場合は皮膚をずらして縫合するなどの工夫をします。
 術後は、手術の前と同様に座っている時間が長いと再発することがあるために日常生活の工夫も必要です。剃毛やレーザー脱毛によって発生や再発の予防ができる可能性があるといわれています。
2021年09月01日(水) No.1020 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

臍ヘルニア・臍突出症


いわゆる 「でべそ」には、「臍ヘルニア」と「臍突出症」があります。
 泣いたりして腹圧がかかった時に腸管が飛び出して突出するものを臍ヘルニア、皮膚の余剰が多くて盛り上がっているだけのものを臍突出症と言います。
 赤ちゃんは、お母さんのお腹のなかにいるときはへその緒でお母さんと繋がっています。産まれた直後にへその緒は切り離されますが、切れ端はゆっくり乾燥していき、かさぶたとなって脱落します。その痕がおへそです。お母さんと繋がっていた腹壁の穴は徐々に閉じていきますが、その穴が大きかったり、閉じるのが遅いと臍ヘルニアになります。
 成人でもまれに臍ヘルニアになることがありますが、小児とは違いその理由は高度の肥満や、妊娠、腹水などの理由によります。


 赤ちゃんの約10人に1人が、へその緒のかさぶたが取れる生後1ヶ月くらいからへそが突出し始めますが、基本的には何もしなくても2歳頃には9割以上が正常のへそになります。生後2〜3ヶ月頃には最も大きくなり、腹圧がかかった時の突出は4〜5cmほどにもなることがあります。生後4ヶ月頃から腹直筋が発達して穴が小さくなっていくことが多いようです。スポンジやテープで圧迫することでやや早く治るとされています。
 まれに改善しないことがあり、3歳を過ぎると自然に治る可能性はほとんどなくなるので手術の対象となります。
 臍突出症の場合は見た目だけの問題になりますが、保育園や幼稚園でいじめの対象となることもあるため手術を検討します。
2021年07月28日(水) No.1017 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

耳介血腫


耳介血腫は、ギョウザ耳、カリフラワー耳とも呼ばれ、柔道、相撲、レスリング、ラグビーなどのコンタクトスポーツの選手で多くみられます。
 床に耳を押し付けたり、相手の頭が当たったりするなどの強い刺激を繰り返すことにより、皮膚や軟骨の間で出血し、血液がたまった状態です。
 格闘技などの強い刺激ではなくても、アトピー性皮膚炎や、虫刺されなどで、無意識に耳を掻いたり擦ったりする事が誘引になる場合もあります。
 受傷後早期であれば血液を抜き取る事で一旦は治りますが、血液や浸出液が再び溜まって再発してしまう事も多いので、しっかりと圧迫をすることが大切です。
 血腫をそのままにしておくと、盛り上がったまま固まってしまいます
 また、耳の軟骨は薄いため、細菌感染を起こしてしまうと軟骨が壊死したり変形してしまうことがあります。


 耳介血腫は厳しいトレーニングのたまものであり、強さの象徴ではありますが、耳の穴の方まで変形が及ぶと、イヤホンが入らなかったり、耳掃除が難しくなったりと日常生活で不便な面があります。
 女性の選手には少ないようですが、女性の方が見た目を気にしてしっかりと治療を行なっているためと考えられます。逆に、男性の場合はあまり気にしないために変形が残ってしまうことが多いようです。
 耳介血腫は再発しやすいため、耳に刺激を受けやすい競技をするときは、ヘッドギアなどで耳を守ると良いでしょう。
2021年06月30日(水) No.1014 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

耳のかたち


 耳はお母さんのお腹の中にいる間に作られます。複雑な過程を経て作られるため、先天的に異常が表れやすい場所のひとつです。
 その過程で何らかの問題が起きた場合、色々な変形が見られます。
 重症なものは耳のかたちだけではなく耳の穴、音を感じる部分、場合によっては顔の骨、筋肉、神経にも異常が見られることがあります。
 色々な変形がありますが、問題点は「機能の問題」と「見た目」に分けられます。
 マスクやメガネがかけられないなどの問題の他に、聴力の異常を伴うことがあり、その場合は耳鼻咽喉科の先生と協力しながら治療を行なっていきます。
 見た目に関しては、生後すぐであれば場合によっては矯正治癒が有効なこともありますが、矯正治療が功を奏しなかった場合や、年齢的に矯正治療が難しい時期であれば手術治療の対象となります。


 顔や体が同じ人は一人としていないように、耳のかたちも千差万別です。
 大きさ、長さ、角度など様々な違いがありますが、個性と捉えるかどうかは人それぞれです。また国によっても印象の違いはあるようです。
 病的な状態なのか判断が難しい場合は、病院で相談すると良いでしょう。
2021年05月26日(水) No.1011 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

ピアスケロイドと耳垂裂


今回は耳たぶ(耳垂)のお話です。

●ピアスケロイド
 ピアスケロイドとは、ピアスの穴からケロイドができてしまう状態です。
 ケロイドとは、組織が過剰に反応してしまうことにより本来の傷の大きさを超えて傷あとが大きく盛り上がり、痛みや痒みを伴うものです。
 傷の治り方などの影響もありますが、遺伝や人種、体質によるところが大きいと考えられています。
 耳たぶのピアス穴から発生することが多いですが、軟骨ピアスなどの耳たぶ以外の場所でも起こります。小さい場合には塗り薬、注射、貼り薬などで改善することもありますが、写真のように大きくなってしまうと手術が必要になります。
 ただ手術で切除をしただけでは再発することも多いので、放射線治療を組み合わせて行います。
 ケロイド体質の人は、注射のあとや虫刺されなど通常では問題にならないような小さな傷からケロイドになってしまうことがあるので、ピアスは避けたほうがよいでしょう。


●耳垂裂 
 耳垂裂とは耳たぶが割れてしまっている状態です。
 生まれつきの場合もありますが、多くはピアスをひっかけて組織が引きちぎれた後に左右がくっつかない状態で治ったために起こります。
 また、太く大きなピアスを開けていたような場合、大きな穴が残ります。しばらくピアスをしない
でいると穴が若干収縮することもありますが、基本的に穴が塞がることはありません。一生大きなピアスを付けるつもりがなければ、やりすぎは禁物です。
 これらも治療は手術となります。
2021年04月28日(水) No.1008 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

副耳と耳瘻孔


耳はお母さんのお腹の中にいる間に作られます。複雑な過程を経て作られるため、先天的に異常が表れやすい場所のひとつです。中でも副耳と耳瘻孔は多く見られる疾患です。
 副耳(ふくじ)は、耳の前や頬にイボ状の突起物としてみられます。片方の耳の前に一個あることがほとんどですが、時には両側に存在する場合や複数個ある場合もあります。
 皮膚だけでなく軟骨を含むことが多く、耳に近い場合には耳の軟骨と深いところで繋がっていることもあります。首にできることもあり、頸耳(けいじ)と呼ばれます。
 治療は手術です。小さいものや軟骨を含まないものは糸で根元を縛り、壊死させて自然に脱落させることもあります。軟骨を含むものはこの方法では不完全に隆起が残ることがあるので皮膚と軟骨を含めて切除をします。


 耳瘻孔(じろうこう)は、耳の周囲に小さな穴が開いていて、その下方に管(瘻孔)があるものをいいます。管の長さや深さは様々で、袋状や枝分かれをしていたりブドウの房のような複雑な形をしている場合もあります。穴から臭いのある分泌物が出てくることがありますが、これは垢です。多くは無症状で一生を経過しますが、この小さい穴から細菌が入って感染すると赤く腫れ上がり痛みを伴うため、感染を起こして初めて気付く場合もあります。
 一度感染を起こすと、腫れた部分を切開して膿を出すなどの治療が必要になります。感染を起こしたことが無ければそのまま様子をみても差し支えがありませんが、一度感染を起こした既往があれば再感染を繰り返す確率が高いので、手術による摘出をお勧めします。
2021年03月31日(水) No.1005 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

しもやけと凍傷


寒冷による局所傷害は、「しもやけ(凍瘡)」と「凍傷」とに分けられます。「しもやけ」は組織の血行障害によるもので、組織が凍結しないものです。「凍傷」は組織が凍結するもので、氷点下、特にー4℃以下の環境で発生します。防寒具の発達により近年では稀となりましたが、依然としてウィンタースポーツや冬山登山、液化ガスなど超低温物質の取り扱い、社会的弱者や精神疾患患者、ドラッグ常習者、アルコール中毒者などでみられます。
 好発部位は手足、特に足趾で、ついで耳・鼻などの末端部や、頬などの曝されやすい部分にも起こります。


 しもやけでは、冷えやすいなどの体質に加え、繰り返し寒冷刺激に曝露することで発生します。血管の収縮、末梢循環不全が生じ、皮膚の痒みや赤み、腫れが起こります。
 凍傷では、組織の凍結が起こり、血管収縮や血管内の氷の結晶による塞栓、寒冷刺激により放出された化学伝達物質による二次的傷害などが加わって、組織の変性・壊死が引き起こされます。
 皮膚から皮下組織、骨まで至る場合もあり、疼痛や腫れ、皮膚の色調の変化、感覚低下、水疱、壊死がみられます。
 治療は程度によらず共通で、まずは凍結した組織を温めることです。濡れている衣服や手袋、靴などを脱がせ。直ちに急速解凍を行います。40〜42度のお湯に15〜30分浸けます。組織の障害を最小限にと留めるためには、徐々に温めるより急速に温める事が推奨されています。指輪などをしている場合は直ちに外します。マッサージは組織の損傷を悪化させるためしてはいけません。火や暖房による加温は不均一となりやすく、さらに感覚がない部分の熱傷の原因になるので使用してはいけません。
 解凍後は少なくとも3〜4週間は保存的に加療します。血管拡張作用のある薬剤を投与したり、軟膏で創部の処置をします。この後に組織の壊死などがある場合は皮弁形成術や切断を行います。
 凍傷の治療は、初期の治療を早期に始めることが重要となります。なにより一番大切なのは予防であり、状況に合わせて手袋や耳当て、厚い靴下、カイロなどを使いましょう。
2021年03月03日(水) No.1002 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

逆さまつげ


 まつげは本来、まぶたの縁から眼球とは反対側へ自然にカールし、眼球に当たらないように生えています。しかし何らかの原因でまつげが眼球の方へ向かってしまう状態が逆さまつげです。
 逆さまつげは睫毛乱生、眼瞼内反症、睫毛内反症の大きく三つに分けられます。同じようにまつげが眼球に当たる状態ですが、原因が微妙に異なっています。
 睫毛乱生は、まつげの生える場所が眼球に近かったり、まつげの生える方向が不揃いになったりして、まぶたの状態に関係なくまつげの一部が眼球に当たってしまう状態です。 
 眼瞼内反症は、加齢によってまぶたを支えている組織や、まぶたを閉じる筋肉や皮膚が緩むことが原因で、まぶたが内側にひっくり返りまつげが眼球に当たります。70歳代の約3%、80歳代の約5%に眼瞼内反が見られると言われています。


 睫毛内反症は、幼少時特有の下まぶたの皮膚や皮下脂肪のボリュームが多いことが原因で、まつげが眼球の方向へ向いてしまう状態です。
 どのタイプの逆さまつげでも、まつげが眼球に当たることで角膜や結膜を傷つけてしまうことが問題になります。常時当たっている場合や、眼球の動きやまばたきの強さにより当たる場合など程度は様々ですが、目がゴロゴロする、痛い、涙が出る、目やにが出る、などの症状が起こります。ひどくなると角膜の感染症や角膜潰瘍を生じることもあります。
 治療はタイプによって異なります。
 睫毛乱生は、眼球に当たっているまつげを部分的に抜く処置や、一部の毛根を切除したり、毛根を電気分解する方法があります。
 成人の眼瞼内反症は、手術でまぶたの向きを矯正します。 
 子どもの睫毛内反症も治療は手術なのですが、成長とともに改善する場合が多く、また子どものまつげは柔らかく角膜への傷がつきにくいため、通常は学童期くらいまでは様子をみます。しかし角膜の傷の程度によっては、繰り返すことにより角膜に歪みが生じて強い乱視になったり角膜の濁りが残ったりすることがありますので、低年齢のうちに手術を行った方がよい場合があります。生まれつき逆さまつげの子どもの場合は本人に自覚がない場合が多いので、まつげが眼球にくっついていないか確認しましょう。また定期的に眼科で検査を受けると安心です。
2021年01月27日(水) No.998 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

眼瞼下垂症


 眼瞼下垂症とは、上まぶたが瞳孔にかかって見えにくくなる状態です。大きく分けて先天性眼瞼下垂と後天性眼瞼下垂の2種類があります。
 先天性の場合は、生まれつきまぶたを持ち上げる「眼瞼挙筋」という筋肉や、その筋肉を動かす神経に異常があることが原因です。目の機能に障害はありませんが、弱視や斜視の原因となることがあります。
 後天性の場合は加齢に伴うものがほとんどです。ヒトは1日に2万回も瞬きをします。一年で700万回、生涯で6億回も瞬きをする計算になります。歳をとると足腰が弱くなるのと同じようにまぶたの機能も次第に衰えていきます。加齢に伴って皮膚がたるんできたり、眼瞼挙筋の膜が伸びたり緩んだりと弱くなったりした場合には、まぶたを持ち上げる力がうまく伝わらなくなります。まぶたは薄くて外からの影響を受けやすい組織なので、お年寄りだけでなく、花粉症で目をよくこする人、ハードコンタクトレンズを長期間使っている人などは若いうちから症状が出ることがあります。日頃からなるべく眼はこすらないようにすると良いでしょう。


 また、神経の刺激が筋肉に届かなくなる「重症筋無力症」や、まぶたを持ち上げる神経の麻痺である「動眼神経麻痺」、外傷によるものなどがあります。
 症状は、まぶたが重い、見えにくいなどです。目が疲れやすく、眠そうに見られます。見えにくさをカバーしようとしておでこの筋肉が頑張って持ち上げようとするため
眉毛があがり、おでこにシワがよります。その状態が続くと交感神経が緊張して肩こりや頭痛を引き起こすことがあります。また顎が上がって姿勢が悪くなり、肩や腰の痛みに繋がることもあります。
 治療は、神経疾患が原因の場合を除いて手術が基本です。筋肉が緩んだ場所を補強したり、余分な皮膚を切除したり、それで足りない場合は、おでこの筋肉を利用して筋膜などを通して釣り上げたりすることもあります。
2020年12月29日(火) No.994 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

【1】【2】 【3】 【4】