タイトル

動物咬傷


イヌ、ネコなどの動物やヒトに咬まれたことによる外傷のことをいいます。動物咬傷はイヌによるものが最も多く、次にネコ、ヒトと続きます。
 創部の状態は様々で、ごく浅い傷から腱や骨に至る深いものもあります。また傷口から唾液が侵入することによる細菌感染が問題になります。
 犬の牙は丸みを帯びており、また噛む力が強いため、組織の挫滅を伴い骨折や血管・神経の損傷を伴うことがあります。


 一方、ネコによるものはイヌより重症化することが多いのですが、その原因としてはネコの牙は細く尖っているため深い刺し傷となり、組織の奥深くで細菌が繁殖しやすくなることがあります。また一見傷口は小さく軽傷にみえるので受診が遅れることが多いのです。何もしなければ6割以上が感染を起こすという報告があり、早めの受診をおすすめします。
 イヌ、ネコについで三番目に多いのがヒトによる咬傷です。ケンカで握り拳が歯に当たって受傷することが多いようです。
 受傷後の感染症としてはパスツレラ病や破傷風、狂犬病など、ヒトの場合ではHIV、B型肝炎、C型肝炎などにも注意が必要です。
 狂犬病に関しては、日本は狂犬病清浄地域であり、犬に咬まれて狂犬病になった例は1957年以降ありません。基本的に国内での犬咬傷では狂犬病の心配はありません。ただし、海外で咬まれた場合は国によっては注意が必要です。現在でも発症後の死亡率はほぼ100%であり、発症前のワクチ
ン接種が必須となります。渡航前のワクチンに関しては在庫が限られており全例は推奨されていません。狂犬病流行国で長期滞在する、感染の危険性が高い研究者・獣医師等に対して行われています。
 治療はまずは創部を十分に洗浄することが重要です。水道水でよいので石鹸を使用して洗浄してください。狂犬病などのウイルスは石鹸に含まれる界面活性剤で不活性化するようです。上で述べたように傷が小さくても深部での細菌感染を起こす可能性があるので、早めに病院を受診してください。
 また自宅で処置をした際にはキズパワーパッドなどを貼っている方がいますが、このような密閉性の高い創傷被覆材は細菌繁殖の温床となる可能性があり、動物咬傷のような感染の確率が高い傷への使用はしない方が良いでしょう。
2020年11月25日(水) No.990 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

肘部管症候群


 肘部管とは肘の内側にあるトンネルで、骨と靭帯で囲まれており中には尺骨神経が通っています。トンネルの内腔が狭くなって尺骨神経が圧迫されることにより、痺れなどの症状が出るのが肘部管症候群です。
 前回お話しした手根管症候群は、手首のトンネルで正中神経が圧迫されることによるものでした。この二つは絞扼性神経障害といって、上肢においては手根管症候群が一番目に、肘部管症候群が二番目に多く見られます。
 尺骨神経は皮膚の表面に近い場所にあり、神経が障害を受けやすい環境にあります。肘を机にぶつけて指先までビーンと痺れたことがある人は多いと思いますが、そこが肘部管です。 
 尺骨神経は薬指・小指の感覚や、手の動きを司っている神経で、これが圧迫されると薬指、小指のしびれが出現します。肘を曲げているときや就寝時に症状が強くなるのが特徴です。症状が進むと箸が使いづらいなど指先の細かい動きが難しくなったり、手の筋肉が痩せ、握力が落ち、手指の変形をきたします。


 原因は、加齢に伴う骨の変形、骨折などによる肘の変形、靭帯やガングリオンなどの腫瘤などによる圧迫、外反肘や内反肘などの先天的な形によるものや、糖尿病や透析によるものもあります。野球や柔道などのスポーツが関連する場合もあります。
 治療はまずは肘の安静です。肘関節を90度以上曲げると肘部管の内圧は3倍以上になり症状が出やすくなるので、日常生活でなるべ
く肘を曲げないように心がけます。肘があまり曲がらないように職場の椅子を高くするなどの工夫をしたり、就寝時は肘が曲がらないように添え木を当てたりタオルを巻くなどするのも良いでしょう。ビタミン剤や消炎鎮痛剤が有効な場合もあります。
 筋力の低下や、痺れがひどい場合は手術を考慮します。
2020年10月28日(水) No.986 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

手根管症候群


 手根管とは手首にある骨と靭帯でかこまれたトンネルで、中には指を動かす腱と正中神経という神経が通っています。手根管症候群は、このトンネルの中で正中神経が締め付けられることによりしびれや痛みがでる状態です。


 原因は物理的な狭窄ですが、元々トンネルが狭い事に加えて骨の変形、靭帯の硬化、腱の腫れなど様々な原因によりトンネル内の圧力が高まり、正中神経が絞扼されます。
 手をよく使う職業の方、糖尿病、血液透析患者、喫煙者、妊娠している方に多くみられます。また閉経後の女性の発症が多いことから、女性ホルモンの減少が一因と考えられています。
 正中神経は親指から薬指までの皮膚の感覚と親指の運動を司っていて、これが締め付けられるとこの領域のしびれや痛み、親指の筋力低下が生じます。初期ではこのしびれや痛みは夜間から明け方に強く、手を振ったり指を曲げ伸ばしすると症状が一時的に楽になります。手のこわばりを感じることもあり、ひどくなると親指の付け根の筋肉が萎縮して動きが悪くなり、小さなものがつまみにくくなります。
  治療はまずは安静です。手首の曲げ伸ばしや、物を握る、持ち上げるなどの繰り返しの動きを避け、振動がある道具や工具の使用を避けます。手首を曲げると手根管の中の圧力が高まるので、家事や仕事でも手首をまっすぐにすることを心がけます。肩や肘は適度に動かし、散歩などで活動量を確保しましょう。体が冷えたり活動量が少なく血流が悪くなると症状が出やすくなります。また、装具をつけを手首を安静にすることも有効です。図のリハビリは、腱のむくみを軽減させトンネル内の圧を減少させる効果があります。
 手根管内のステロイド注射も有効です。これらで改善しない場合は手術を考慮します。
2020年09月30日(水) No.982 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

テニス肘


 テニス肘とは『上腕骨外側上顆炎』の別名です。上腕骨外側上顆とは肘の関節の外側のでっぱった部分で、手首を反らせる筋肉が骨に付着する場所です。ここに負担がかかり炎症が起こっている状態がテニス肘です。この部分にはその付着部の面積に比べて大きな力がかかるため、炎症や変性、腱の微小断裂が生じて痛みの原因になっていると考えられています。また腱などの組織の年齢的な変化も一因です。
 手首を反らせる、物を掴んで持ちあげる、タオルを絞るなどの動作で痛みが出現し、日常生活に支障を来します。


 30〜50代のテニス愛好者に生じやすいのでテニス肘と呼ばれていますが、テニスをしている人だけに発症するものではなく、むしろ日常生活で重いものをよく持ったり手をよく使う人、パソコンをよく使う人などに多く見られます。
 テニス愛好者に関しては、発生率は4割前後で、プロレベルになると6割を超える選手がテニス肘を経験しているそうです。テニスによるテニス肘は不適切なラケットの使用(重さ、グリップの太さ、ガットの張力など)やプレースタイルが関与しており、テニス肘患者ではインパクトの時に30度ほど肘が曲がっていることが多いという分析があります。
 治療はまずは安静です。スポーツや手をよく使う作業を控え、痛い動きを避けるように手の使い方を工夫し、手首や指のストレッチを行います。他に痛み止めの内服や外用、またテニス肘バンドというサポーターで痛む部分を圧迫す
ることで痛みや炎症を抑えることができます。
 パソコンで痛みがでる方は手首が反らない様にキーボードの角度やマウスを調整したり、腕の下に枕を入れるなどの工夫が有効です。
 痛みが治らない場合は、ステロイドの注射を行いますが、長期的には痛みがぶりかえすことも多く見られます。これらの治療が無効であった場合は手術を行います。
2020年08月26日(水) No.978 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

デュピュイトラン拘縮


 デュピュイトラン拘縮とは、手のひらから指にかけてしこりができ、進行に伴って皮膚や皮下の組織がひきつれて徐々に指が伸ばしにくくなる病気です。1832年にフランスの外科医デュピュイトランにより報告されました。
 手のひらには皮膚の下に手掌腱膜という繊維性の膜があり各指に向かって扇状に広がっています。手掌腱膜が皮膚に強く結合することで皮膚がずれるのを防ぎ、物を握りやすくしています。この手掌腱膜へコラーゲンが異常に沈着して肥厚、繊維化、収縮することによって指が次第に曲がっていきます。
 原因は、体内のコラーゲンの産生と分解のバランスの崩れと考えられています。薬指と小指に多く発症しますが、初期症状として手のひらにしこりや窪みができます。症状が進行すると徐々に指が曲がり始め関節の動きが制限されるようになります。初期に圧痛があることもありますが、通常は痛みを伴うことはあまりありません。さらに進行すると指を伸ばす事ができなくなり、日常生活に支障をもたらすようになります。洗顔、拍手ができない、手袋がはけない、運転ができない、手を使うスポーツなどが難しくなります。
 病気の進行速度は一定ではなく、急に症状が進行したりゆっくりと曲がっていったりと予測するのが困難です。また、反対側の手にも発症したり、治療で症状がよくなっても再発する場合があります。


 ご家族に同じ病気のある方、高齢の男性、糖尿病患者、手に外傷が
ある方に多く見られます。また、足の裏、陰茎の繊維腫を合併する方もいます。
 治療をしないと自然には治らない病気なので、指の変形で日常生活に支障をきたすようになれば治療を行います。有効な内服薬などはなく、指を伸ばすなどのリハビリテーションも効果はほとんどありません。治療は薬剤によるものと手術療法があります。
 薬剤による治療では硬くなった手掌腱膜を溶かす注射をし、硬くなった組織を断ち切る治療法です。手術では、皮膚を切開して原因となっている組織を切除し、皮膚のつっぱりを解消します。ともに治療後の拘縮を防ぐためのリハビリも重要になります。
2020年07月29日(水) No.974 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

ばね指


 指は腱によって曲げ伸ばしをする事ができます。曲げ伸ばしをする筋肉は前腕にあり、その力を腱が指先まで伝えます。その通り道で腱が浮き上がらないように押さえつけているのが腱鞘です。この腱鞘は指から指の付け根にかけて存在していますが、指のつけね部分は特に力がかかるため炎症を起こしやすくなっています。指を動かす度にその部分の腱と腱鞘の間で摩擦が起こり、指の付け根が痛みます。腱が腫れ、腱鞘が肥厚してさらに通りが悪くなり悪循環となり、さらに進行すると引っ掛かりが生じて指が曲がったまま伸ばせなくなる「ばね現象」が起こります。
 症状は朝方に強く、日中に手を使っている時は症状が軽減することもあります。更年期や、妊娠出産期の女性に多く、また手の使い過ぎやスポーツをする人などに多いのも特徴です。糖尿病、リウマチ、透析患者にもよく発生します。
 保存療法としてはシーネなどによる手指の安静や、内服、炎症を抑える腱鞘内のステロイド注射が行われます。ステロイドの注射は一旦は改善するものの、時間が経つと再発することも多くみられます。


 また「とくなが法」というストレッチが有効です。
ー蠎鵑鯣燭蕕擦疹態で、もう一方の手で指を最大限に反らせます。
 これは腱のストレッチと、関節の可動域を改善する目的があります。
⊆蠎鵑魴敕挌燭蕕擦疹態でブロックなどをぐっと握ります。
 指を曲げる力がかかることで、腱鞘を引き上げてその内腔を広げる目的があります。
 これはやったその場ですぐにばね現象が改善されることがあります。
 それぞれ一回につき30秒、1日10回行います。指を反らす際には炎症、痛みが悪化することがあるので、痛みが許容範囲を超えない程度のストレッチとしましょう。正しく継続すると一ヶ月ほどで効果が現れます。
 これらで改善しない場合は手術を行います。手術は、腱鞘を切開して通りをよくするもので、一度手術を行うと再発はほぼありません。
2020年06月30日(火) No.970 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

ドケルバン病


 ドケルバン病とは手首に痛みがでる腱鞘炎です。1985年にスイスの外科医ドケルバンによって報告されました。
 親指を動かす二つの腱と腱鞘との間に炎症が起こった状態で、親指や手首を動かすと痛みが生じます。腱は筋肉と骨とを繋ぐ丈夫な紐のような組織です。腱鞘はバンドのようなループになっていて腱が骨から浮き上がらないように押さえつけており、その中を腱が行き来することで指の曲げ伸ばしを滑らかに行うことができます。
 親指の使い過ぎによる負荷のため腱鞘が肥厚して硬くなったり、腱の表面が傷んで腫れたりして動きがスムーズでなくなり、さらにそれが刺激となって悪循環になります。超音波検査では腱の腫れ・腱鞘の肥厚などが確認できますが、生まれつき二つの腱の間に隔壁や骨の盛り上がりがある方がいて、その場合痛みを起こしやすいと言われています。
 慢性的な刺激が原因であり、手をよく使う仕事の人やスポーツをする人、スマートフォンの使い過ぎなども原因となります。妊娠・出産期の女性、中高年の女性に多く生じますが、解剖学的な男女差や、女性ホルモンのバランスが乱れることで腱がむくむことが炎症と関係すると考えられています。


 治療はまずは安静です。痛みがでる動きを避け、包帯やサポーターで親指・手首の動きを制限します。痛み止めの内服や腱鞘内へのステロイド注射を行う事もあります。また閉経後の女性の場合、エクオール(女性ホルモン類似物質)含有サプリメントが有効である可
能性があります。
 これで改善しなかったり再発を繰り返す場合は手術を行います。手術では、厚くなった腱鞘を切開し腱を開放します。
 ドケルバン病の発症や再発を防ぐためには、日頃から予防を心がけた生活をすることが大切です。スマートフォンやパソコンの操作、楽器演奏、スポーツなど、親指や手首を使った動作をする時には、長時間の作業は避けて定期的に手を休ませることを習慣づけるようにしましょう。
2020年05月27日(水) No.965 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

母指CM関節症


 母指CM関節症は母指(親指)の付け根が痛くなる疾患です。
 母指の手首に近い関節をCM関節といいます。この関節は、他の指の関節と比べて多方向に動き、可動域が大きいのが特徴です。これにより母指は他の指との間で「つまむ」動作ができるのですが、このときにCM関節には大きな力がかかります。物を強くつまむ時には120圓領呂かかるそうです。元々靱帯の支持性が弱く不安定であることに加え、日常生活で負担がかかることが母指CM関節症の原因です。
 中高年の女性に多く、閉経後の女性の1/3、90歳以上の女性では
全例で関節変形がみられるという報告があります。女性に多いのは、日常生活の中で長年にわたり家事を続けることでいつのまにか負担が蓄積している事が多い為と考えられます。また女性ホルモンは骨や関節を柔軟に保つという作用があるので、閉経後の女性は関節の炎症・変形を起こしやすくなります。
 症状は圧痛に加え、ビンの蓋を開ける、物を持つ、字を書く、洗濯バサミをつまむ等、日常の様々な動作で痛みが生じます。痛みによりつまむ、握ることが困難になり、細かい作業ができなくなります。利き手でない方に多いとされますが、利き手でない方の手が担当する動作の方がCM関節への負担が大きい可能性があります。
 レントゲンでは関節の隙間が狭くなったり、骨が変形したり、時には亜脱臼を認めることがあります。


 治療は、まず母指を動かさない
ことです。装具をつけることで関節が安静に保たれますが、3ヶ月ほど、炊事・入浴以外は常時しっかり着用を続けることで痛みが改善する方が多いです。他には痛み止めの内服、関節内の注射があります。
 これらで症状の改善がなく、日常生活への影響が大きい場合は手術を考慮します。手術は靱帯再建、骨を切って固定する、関節自体を固定するなど様々な方法があり、程度や年齢、術後の手の使用状況などを考慮して手術方法を決めます。
 母指CM関節症は重症化を防ぐためのセルフケアが大切です。親指は他のどの指より使用頻度が多く完全な予防は難しいのですが、痛みが出てきたら悪化する前にテーピングや装具で固定し安静にしてください。
2020年04月28日(火) No.961 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

ヘバーデン結節


 ヘバーデン結節とは、指の第1関節(DIP関節)が変形して曲がってしまう疾患です。この疾患の報告者ヘバーデンの名前にちなんでいます。心臓の血管が細くなり胸痛を起こす「狭心症」を命名したのもヘバーデンです。
 原因は不明ですが、40歳以降の女性に多く発生します。手指などの関節が痛むリウマチとは別の疾患です。人差し指から小指にかけてDIP関節が赤く腫れて痛んだり曲がったりします。動きも悪くなり、痛みのために強く握ることが困難になります。これが原因で前回お話しした「指粘液のう腫」ができることもあります。初期には起床時に手指の違和感やこわばりがあり、日によって感じる指や程度が異なりますがしばらくすると治ります。この症状が出ては治るという波が7〜10年ほど繰り返され、やがて関節の変形に至ります。レントゲンでは骨が棘のように変形したり、関節の隙間が狭くなったりする変化がみられます。
 第2関節(PIP関節)におこる場合はブシャール結節といい、ヘバーデン結節よりも稀ですが、より生活に支障が大きい場合があります。


 つまむ動作や、物があたったときに痛みがでるため、治療はまずはテーピングや装具で固定をし関節を安静にします。テーピングは、伸縮性のない医療用テープを背側あるいは全周性に巻き付けます。これだけでも関節の安定化と保護
になり痛みは和らぎます。関節内へのステロイド注射も有効です。痛みが改善しない時や、変形がひどくなり日常生活に支障をきたす場合は手術を考慮します。手術は、軟骨がすれる痛みを抑えるために関節を固定するのですが、痛みがよくなるかわりに関節は動かなくなります。
 近年、エストロゲンと似た働きを持つ「エクオール」含有サプリメントがヘバーデン結節に有効であると話題になっています。ヘバーデン結節の発症には女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量の減少が関わっている可能性があると考えられており研究が進んでいます。
2020年03月31日(火) No.956 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

指粘液のう腫


 指粘液のう腫は、指の関節に発生する良性の腫瘍です。
 加齢により指の関節の骨が変形して棘のように尖り、関節に炎症が起こった結果、関節液が関節の外にでてきて腫瘤を作ります。また組織の変性により粘液が過剰につくられて腫瘤を作ることもあります。
 爪と関節の間の部分に水ぶくれのような腫瘤ができます。皮膚は薄くなり、自然に潰れて中の透明なゼリー状の粘液が出てくることがあります。痛みがでることもありますが、腫瘤が周囲の組織を圧迫することが痛みの原因である場合や、関節の変形自体も痛みの原因となります。
 腫瘤がつぶれて感染を起こし炎症が関節の中に及び関節が固まって動かなくなることや、また、爪母という爪の根元にある爪を作る組織が腫瘤で圧迫されたり炎症が及んだりすると、爪の変形が起きることがあります。


 治療は、関節痛がある場合は関節をテーピングや装具で固定することで関節の炎症が改善し、副次的に粘液のう腫も治まることがあります。しかし装具を中止すると再発する可能性があります。
 腫瘤は潰れたりまたふくらんだりを繰り返しますが、まずは注射器で中の粘液を抜きとります。
 関節内にステロイドを注射して関節の炎症を治めることも有効です。繰り返す場合や、爪の変形がある場合は手術を行います。
指粘液のう腫の根本的な原因は関節の変形なので、手術では関節が変形して棘になった部分や、滑膜を除去します。腫瘤の部分の皮膚は薄くなっていることが多く、縫い閉じることが難しい場合には、皮弁といって皮膚を大きく切って回して皮膚を閉じるような工夫をします。
 爪の変形があった場合、爪母が腫瘤で圧迫されていただけならば治りますが、炎症がおよんでいた場合には変形が残ることがあります。
2020年02月26日(水) No.946 (渡邊先生(整形外科)のコラム)

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