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最先端の動脈瘤治療


 前回のコラムでは、長い年月をかけて体内で成長し、突然「破裂」という形で襲ってくる動脈瘤のお話を書きました。先日も、私の外来には無症状でありながら、かかりつけのクリニックで行われた腹部エコー検査で発見された腹部大動脈瘤の患者さんが来院されました。その患者さんは、以前から横になるとお腹に拍動するこぶが触れるので気になっていたとおっしゃっていました。このように腹部大動脈瘤に関してはお腹に拍動する腫瘤が触れる可能性がありますので、気になる方はチェックしてみることをお勧めします。
 今回は、動脈瘤による突然死を防ぐための治療法をご紹介したいと思います。残念ながら「薬」では一度膨らんでしまった動脈瘤の破裂を防ぐことができません。治療には手術が必要となるのですが、以前は開腹・開胸を伴う人工血管置換術しか選択肢がありませんでした。しかし、ここ10年の医学の進歩のおかげで、大きく切らずに動脈瘤を治療する「ステントグラフト内挿術」という治療法が急速に広がりつつあります。ステントグラフト治療では、足の付け根の血管から、ボールペン程の太さの「ステントグラフト」と呼ばれる特殊な人工血管を体内に挿入し、膨らんで破裂の危険のある動脈瘤を血管の内側から補強し、破裂を防ぐ治療です。この治療の最大の利点は体への負担が小さいということです。人工血管置換術を受ける場合は20〜30冂体を切らなければならないのですが、ステントグラフト内挿術の場合、足の付け根に6冂の傷で手術が可能となっています。この治療法が受けられるのはオホーツク圏では当院だけとなっており、2年前に新築移転した際に、最新式のハイブリット手術室(透視装置を備えた手術室)が完成し、ステントグラフト内挿術がより行いやすい環境となりました。


 しかしながら、ステントグラフト内挿術では治療できない場合や、手術後の再発等の問題点もあり、実際の治療の際には医師との相談が必須となります。
2018年11月28日(水) No.872 (仲澤先生(心臓血管外科)のコラム)

突然襲ってくる動脈瘤の恐怖


 これまで下肢の「静脈瘤」について書いてきましたが、今回は「動脈瘤」のお話です。下肢の「静脈瘤」は、見た目の悪さや下肢の重だるさなどの症状を起こしますが、死ぬことはありません。反対に「動脈瘤」は、ほとんど症状を起こしませんが、命に係わる病気です。道立病院には多くの「動脈瘤」の患者さんが来院されますが、なかには「動脈瘤」と「静脈瘤」を混同され、動脈瘤を軽く考えてしまう、または静脈瘤を深刻に考えすぎてしまう患者さんがいらっしゃいます。
 そもそも動脈も静脈も、同様に全身に張り巡らされた血管のネットワークなのですが、血管にかかる負担が異なります。動脈にかかる負担は血圧と同じですので、100〜140mmHgなのですが、静脈にかかる負担は多くても10分の1程度の5〜10mmHgです。つまり、動脈瘤は常に血圧という大きい負担にさらされているため、破裂に至る可能性がありますが、静脈瘤は大きくなっても破裂する心配はほとんどありません。


 動脈瘤はそのほとんどが胸部と腹部の大動脈にできます。大動脈は通常1.5〜2僂曚匹任垢、図のような動脈瘤となると、太さが2〜3倍に膨れ上がり、最終的に水風船のように破裂してしまいます。動脈瘤の怖いところは、破裂した場合、そのほとんどが突然死に至ることと、破裂するまでは「無症状」であることです。つまり、症状から動脈瘤の存在を調べることは極めて困難であるのに、ある日突然襲ってくる病気なのです。私の外来には、たまたま検査を受けて見つかった動脈瘤の患者さんがよくいらっしゃいます。動脈瘤は破裂するまで、数年から十数年かかります。そんな破裂前の動脈瘤をみつけるにはエコー検査とCT検査がお勧めです。腹部大動脈瘤は腹部エコー検査でみつけることができますし、CT検査は胸部と腹部のどちらの動脈瘤も見つけることができます。当院やお隣の北見赤十字病院では、これらの検査を受けることができます。動脈瘤は必ず遺伝するものではありませんが、もし、不幸にもご家族に突然死した方がいらっしゃる場合は、一度、調べてみた方が良いかもしれません。
2018年10月31日(水) No.867 (仲澤先生(心臓血管外科)のコラム)

下肢静脈瘤って放っておいたらどうなるの?


 前回に引き続き、下肢静脈瘤のお話です。前回は軽症でも下肢静脈瘤を見つけたら、市販の着圧ストッキングで、静脈瘤が悪くなるのを防ぐことをお勧めしました。現在、多くの着圧ストッキングが販売されていますが、足首の圧が15hPa以上であることが予防に効果がある目安と考えられています。
 今回は、「下肢静脈瘤をそのまま放っておいたらどうなるか」についてです。最も大事なことは、放っておいても命に別状はないということです。ですが、放っておくと、確実に足の見た目は悪くなっていきます。ボコボコの血管が太ももからひざ下に目立つようになり、もっと放っておくと、写真のように色素沈着を起こして、最後には皮膚潰瘍を起こします。


中には、静脈瘤内に血の塊が詰まり、静脈炎を起こしてしまう人もいます。また、代表的な症状である足のむくみ、重だるさ、鈍痛などを自覚するようになり、足のこむら返りを頻回に経験する人もいます。このように下肢静脈瘤は年齢とともに悪くなる病気で、妊娠・出産を契機に悪くなりやすいため、30代から50代の女性は注意が必要です。こんな下肢静脈瘤ですが、現在は比較的簡単に治療できるようになってきました。病状にもよるのですが、写真のようなラジオ波を利用した機械を用いると、皮膚を大きく切らずに血管の内側から静脈瘤を治療することができ、入院期間を短く、かつ少ない痛みで治療できるようになりました。北見市内では当院と小林病院でのみ、この治療法を受けることができます。また、比較的軽症の静脈瘤は、注射による硬化療法でも治療することもできます。硬化療法は入院が必要なく、外来で行える点がメリットですが、静脈瘤の再発が多いという問題点があり、前述のラジオ波血管内焼灼術と併用して行う場合が多いです。下肢静脈瘤は、長くても3日で治療できる病気です。しかし、写真のような重症例になると数週間の入院治療の必要があることから、お早目の受診をお勧めしております。
2018年09月26日(水) No.861 (仲澤先生(心臓血管外科)のコラム)

見て見ぬふりをされる下肢静脈瘤


 初回のコラムは下肢静脈瘤についてです。私はこの3月までの2年間、札幌医科大学の下肢静脈瘤専門外来を担当しており、多くの患者さんの下肢静脈瘤を診察してきました。その経験から、非常に多くの患者さんが下肢静脈瘤を自覚していながら、長期にわたり放置していることに気が付きました。下肢静脈瘤は、出産経験のある女性に多い病気で、日本人の10人に1人が持っていると言われています。発症時期は30〜40代に多く、初めはふくらはぎにうっすらとクモの巣状の血管が見えるだけなのですが、年齢とともに確実に悪くなっていきます。多くの患者さんが、下肢の痛みや浮腫み、非常に目立つ静脈瘤となってから病院を受診されてきます。現在、下肢静脈瘤の発症そのものを予防することはできませんが、悪くなることを予防することはできます。私のお勧めは、軽症の時に放置しないで、弾性ストッキングで悪化を予防することです。弾性ストッキングは通常のストッキングより強い繊維で作られたストッキングで、足を細くするように圧迫します。この弾性ストッキングですが、お近くのドラッグストアで1、000円から2、000円程度で販売されています。商品名は様々ですが、着圧効果が書かれているストッキング、いわゆる「着圧ストッキング」が市販品の弾性ストッキングです。私の患者さんには市販品の着圧ストッキングの効果を疑問視する人もおりますが、軽症の下肢静脈瘤の悪化予防には効果を発揮します。確かに病院で治療する重症の下肢静脈瘤の患者さんには医療用の弾性ストッキングをお勧めするのですが、医療用弾性ストッキングは高価である上に、厚ぼったく見た目が良くありません。これに対して、市販品の弾性ストッキングは安価で、薄く作られているため、足がきれいに見え、値段的にも買い替えが容易です。現在、足にクモの巣状の細かい血管が見える、または立ち仕事で、これから妊娠する予定の女性には、強く弾性ストッキングの着用をお勧めします。足の浮腫み予防効果も期待できます。

また、商品選択の時に注意して頂きたいのが、膝下までの弾性ソックスとパンストタイプの弾性ストッキングとの違いです。多くの人が勘違いしているのですが、下肢静脈瘤が初めに現れるのはふくらはぎですが、原因の多くはふとももの静脈にあるということです。そのため、弾性ソックスでも一定の効果はあるのですが、弾性ストッキングでふとももからふくらはぎまで圧迫した方が下肢静脈瘤の悪化予防効果が高いのです。

ここまで、弾性ストッキングの良いところを書いてきましたが、残念ながら、すでにできてしまった下肢静脈瘤を弾性ストッキングのみで治すことはできません。つまり、ストッキングを脱いだらもとに戻るということです。すでに目立つ下肢静脈瘤を自覚している場合は、病院でご相談いただけると、病状の評価と治療の選択肢をご説明できると思います。当院では、最近話題の下肢静脈瘤ラジオ波焼灼術や、注射剤による硬化療法、ストリッピング手術などを行っております。お気軽にご相談ください。
2018年08月29日(水) No.856 (仲澤先生(心臓血管外科)のコラム)