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不眠症と薬物治療8


 不眠には、うつ病のような精神疾患による不眠もあれば、関節リウマチやアトピーの痛み、痒みなどの身体疾患による不眠もあります。このように原因は異なっても、いったん不眠が慢性化すると、ある共通したプロセスで「正常な生体反応としての不眠」から「病気としての不眠症」に変化することが研究で明らかになっています。実際、不眠が1カ月以上持続すると、その後に自然に治ることは少なくなります。1カ月以上不眠が続いた人のうち、70%では1年後も不眠が持続し、約50%では3〜20年後も不眠が持続していたという調査結果もあります。すなわち短期不眠症と慢性不眠症との間には、予後を一変させる深い谷があります。
 慢性不眠症の発症の原因の1つとして心配性、神経質、気持ちの切り替えがへたなどの性格やストレスに弱い、高年齢や女性であることなどが考えられます。慢性不眠症の患者さんは若い頃から「枕が変わると眠りにくい」などの不眠体験を持っていることが多いですが、これだけで不眠症が発症することはありません。
 それに「不眠の原因」と呼ばれる、心配事、痛み、痒み、頻尿、うつ病、薬剤の副作用、アルコールなどが合わさる事で発症します。 たとえ何らかの原因で不眠症を発症してもそれらに早期に対処できれば、短期不眠症(一時性不眠障害)でとどまると考えられていますが、複数の素因を抱えていたり、慢性疼痛がある、うつ病が長引くなどの悪条件が重なると慢性化のプロセスに入ります。その原因にも色々ありますが、代表的なものは「不眠を悪化させる睡眠習慣」と、その結果生じる「生理的過覚醒」です。
 不眠が長引くと、その焦りからやたらと早い時刻に寝床に潜り込むがなかなか寝付けなかったり、短時間で目を覚ます、結果的に長時間寝床の中にいるが眠れずに悶々と過ごす、長く苦しい時間が負の条件付けとなって寝室や寝床恐怖症を引き起こして不眠が悪化します。逆に寝室外では身構えないため、思いのほか長時間の昼寝をしている人が多いのも特徴です。長すぎる昼寝も不眠を悪化させます。慢性不眠症で悩み始めると大部分の患者さんが「早寝」「長寝」「昼寝」という不眠を悪化させる睡眠習慣に陥ることが分かっています。
 もう1つの「生理的過覚醒」とは、慢性不眠症の結果として生じる、覚醒度を高める身体的変化です。不眠と薬物治療に関しては今回で一旦お休みにしますので、これらの説明やこれ以降についてはまた機会があればお話します。
2020年02月26日(水) No.942 (原口先生(薬剤師)のコラム)

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