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女性と漢方(176)〜不眠と漢方薬〜


「睡眠薬を止めたいので、漢方薬を服用したい」と来院する患者さんは多いです。結論から申しますと、なかなか難しいです。その理由は漢方薬の睡眠作用は西洋薬よりも弱いからです。睡眠は自然な生理活動であり、東洋医学での睡眠薬の考え方は、いわば体を眠りやすい状態にもっていく薬ということになります。単に眠らせるのではなく、全身状態を改善することがしばしば目標になります。
 例えば、「夜、眠れないんです。」という患者さんに対して、「寝つきは悪いですか?」という問診は「入眠障害」の有無を確認する点でどの医療機関でも行うとは思いますが、「はい」であれば私は「気持ちが落ち込み」「食欲」「悪夢」「疲れているのに目がさえるか?」という問診をします。それによって「抑うつ傾向」「だるさ」「貧血」などが確認されると『加味帰脾湯(カミキヒトウ)』などが有効です。「いやな夢をみる」ことが多い方にはさらに『桂枝加竜骨牡蠣湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)』を併用したりします。「疲れているにもかかわらず眠れない」ときは『酸棗仁湯(サンソウニントウ)』が定番です。
 一方、「寝つきが悪くない」方には「早朝や真夜中に目覚めるか?」どうかを問診します。「早朝覚醒型」の方で、「めまい・肩こり・耳鳴り」や「夜間高血圧」「朝の頭痛」などを伴う場合は、『釣藤酸(チュウトウサン)』が有効です。「夜間覚醒型」の方でも「音に敏感で一度気になると眠れない」「ドキドキして眠れない」タイプには『柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)』、そこまでではない方には『抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)』(チックなどがあるときにはより有効)などが有効です。
 また、「体がほてって寝れない」場合には『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』『釣三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ』、「冷えて寝れない」場合には『人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)』などを就寝前に追加で服用するとさらに有効です。
 不眠を生じる原因は様々ですが、東洋医学的には日々のリズムパターンを「陰陽」という考え方でとらえています。「陽」とは人を活発に活動させる力で、「陰」とは人に休息を与え新たなエネルギーとなる「陽」を生み出す力と考えられています。つまり、睡眠とは夜間に「陰」が盛んになり少なくなった「陽」は「陰」にピッタリと抱かれている状態で、睡眠時には「陽」は「陰」からエネルギーを与えられ、明日の活動に備えて休息しているわけです。「陰」が「陽」を抱ききれなくなり、「陽」が「陰」より多くなったときに不眠が生じるのですが、その原因は 岷◆廚良埖か、◆嵳曄廚硫畩蠅考えられます。その調節を漢方薬で行うのが東洋医学的な不眠治療につながります。当然ではありますが、漢方が合う場合には単に眠りを改善するだけでなく、全身の状態も改善されますので、この点が重要なポイントです。
2019年04月24日(水) No.899 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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