タイトル

女性と漢方(175)〜ストレスと漢方薬〜


『39歳Sさん。数か月前から動悸が気になる。仕事中に話をしようとすると動悸のためにうまく話ができず、手のひらにものすごい汗をかいてしまうことがあったとの事。漢方薬を試したいために来院。』
 Sさんは西洋医学的にみれば、交感神経が興奮している状態です。こういう場合には『四逆散(シギャクサン)』という「柴胡(サイコ))「芍薬(シャクヤク)」「甘草(カンゾウ)」「枳実(キジツ)」の4つの生薬で構成されている漢方薬をよく使います。「柴胡」+「芍薬」の生薬ペアは抗ストレス、鎮静作用があり、「芍薬」+「甘草」には筋肉の痙攣(けいれん)を抑える作用があります。一方「枳実」(みかんの皮を乾燥させたもの)という柑橘(かんきつ)類には、ストレスによって動かなくなった胃腸を動かすという消化管の蠕動(ぜんどう)運動を改善する作用があります。つまり、『四逆散』は生薬の構造からみると、ストレスすなわち交感神経の興奮を抑える作用がうまく含まれている漢方薬であることがわかります。
 Sさんのように「緊張して手に汗をかいたり、ドキドキして人前に出ると顔が真っ赤になってしまう」ような交感神経が興奮する方に使うイメージです。『四逆散』は生薬数が少ないので効果としての切れ味はよいのですが、『四逆散』単独で使うよりはそれに何か他のものを追加して治療するということが多いです。
 例えば、ストレスを感じて、抑うつ的な状態になっている場合には『半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)』、肩こりがひどければ『葛根湯(カッコントウ)』、神経性胃炎には『六君子湯(リックンシトウ)』、より胃痛がひどければ『安中散(アンチュウサン)』、ストレスによる過敏性腸症候群には『桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)』を組み合わせるといった具合です。このように単独で使うというよりは、何かストレスで引き起こされた症状も併せて治療するという使い方の方が、『四逆散』の持ち味が生かせると思います。しかし、ストレスによる症状がなくても、『四逆散』を使うだけで精神的ストレスが緩和し、気持ちが楽になります。ストレスに弱い方にはお勧めの漢方薬です。
 先日私は胃カメラをしましたが、こういう検査前の緊張を取って鎮静するように使うといいかもしれないとふと検査後に思いました(苦笑)。でも検査前に薬は飲んではいけないんでしたね…。
2019年03月27日(水) No.894 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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