タイトル

女性と漢方(174)〜冷えからくる下痢と漢方薬〜


 『38歳Sさん。半年前から下痢が止まらなくなり、近医で消化管の精査をしたが異常を認めず、いろいろ薬を試したがよくならない。朝方には臭いのない下痢をよくする。元々冷え症があり、疲れたりストレスが溜まると下痢はよくおこる。寒い季節になると下痢が悪化する傾向があり、漢方薬を試したいとの事で来院。』
 Sさんは冷え症で下痢があります。朝方に下痢をよくする理由は、朝は体温も気温も低いため、身体が温まるのに時間を要するからです。Sさんのようなタイプでしかも手足が冷えて下痢をする人には『人参湯(ニンジントウ)』をよく用います。
 『人参湯』は「乾姜(カンキョウ))「人参」「蒼朮(ソウジュツ)」「甘草(カンゾウ)」の4つの生薬で構成されています。『人参湯』という名前から「人参」が主役と思われますが、実は「乾姜」が主役です。これは「生姜」を蒸して乾燥させたもので身体を温める作用と下痢止めの作用があります。「人参」には代謝を改善したり、消化吸収を良くする作用があり、これが下痢を止めて脱水を改善するわけです。昔でいえば点滴の代わりのようなものです。また、「人参」は体力の低下した人を元気にします。特に下痢をする人には消化吸収を高めることによって元気になりますから、全身倦怠感が改善されます。
 『人参湯』で十分効かない場合には『附子末(ブシマツ)』を加えて、胃腸だけでなく全身を温めるようにします。胃腸の冷えは、飲食や体質だけではなく、感染症でも起こります。
冷えというのは機能低下や血液の循環不全をおこします。下痢に頭痛が加わった場合には『人参湯』に抗頭痛作用のある「桂皮」を加えた『桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)』を使います。おなかが冷えると頭が痛くなうような人には効果的です。以前に紹介したノロウイルスの下痢などのウイルス性急性胃腸炎の場合、寒気がして熱が出て頭痛もあれば、まさしく適応になります。また私が外来でよく使う症例では「よだれが出て止まらない」ときです。悪阻の方に多いのですが、この症状で困っている方は是非お試しください。とくに寝ているときのよだれを取ってくれます。
管理栄養士さんが困っている「経腸栄養で下痢をしている人」は基礎代謝が低下していることが多く、消化吸収機能の低下が下痢の原因ですので『人参湯』の適応にもなります。このように冷えと代謝の関連は密接ですので、いろいろと漢方薬の出番はあるわけです。
2019年02月27日(水) No.888 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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