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女性と漢方(166)〜浮腫と漢方薬 


「浮腫」いわゆる「むくみ」は体内に増えた水分がうまく排出されなかったり、滞ることでおこります。腎臓病・心臓病・ホルモンの異常・薬の副作用など西洋医学的な診断で原因を究明することが重要ですが、原因不明の特発性浮腫や体調不良による一時的なものもあります。今回から数回に分けて「浮腫」に対する漢方薬に関してお話をします。
東洋医学でも「むくみ」は「水毒(スイドク)」という体内の水分の偏在として解釈しますが、その原因が「気」「血(ケツ)」の異常や「水」をコントロールしている「腎」「脾」「肺」の機能異常ととらえて処方が決定します。
 「水毒」には「利水剤」という生薬にて治療しますが、『五苓散(ゴレイサン)』は二日酔い・めまい・頭痛・下痢など多岐にわたって有効でこのコラムで何度も紹介しましたが、構成されている生薬のほとんどが「利水剤」で作られています。西洋医学だと、「水」は「入れる」か「抜く」かという割とシンプルな考え方をしますが、東洋医学では「水回りをよくする」つまり、むくんだところの「水」を動かし、渇いたところを潤すという考え方です。
 高齢者の「むくみ」では、前回お話した「腎虚(ジンキョ)」(主として加齢にともななう身体機能の低下、特に腎生殖機能系および腰以下の運動機能の低下などを意味します)
により、多尿または尿量の減少などの症状とともに腰痛が出現することがあります。この場合には『八味地黄丸(ハチミジオウガン)』を使用し、「むくみ」が強い場合には『牛車
腎気丸(ゴシャジンキガン)』を、「冷え」が強い場合には『附子末(ブシマツ)』を追加したりします。また「腎虚」だけでなく「脾」の異常で「消化機能」の低下による食欲不振や慢性的な下痢や体重減少を認める場合には『真武湯(シンブトウ)』を使用します。
 手足の「浮腫」で何らかの熱を伴う場合には『越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)』を、局所の「気虚(キキョ)」(気の減少状態)を伴う場合には『防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)』を使います。この局所の「気虚」を判断する指標としては、「気」の不足による症状である局所の運動不足や筋力低下を参考にするとよいでしょう。『防已黄耆湯』単独でなかなか浮腫が改善しない場合は、「気」の流れを強力にする意味合いで『麻杏薏甘湯(マキョウヨクカントウ)』を少量加えるとより効果的です。私自身は産後の手足のむくみによく『五苓散』と『防已黄耆湯』の合法を使用します。『防已黄耆湯』は「防已」と「黄耆」の組み合わせで体表の湿を取り除く効果があります。水太りで汗っかきの人には特に有効です。(次号に続く)
2018年06月28日(木) No.850 (山内先生(産婦人科)のコラム)

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