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出産と乳がん


6回の予定で連載してきたこのコラムも早いもので最終回を迎えました。最終回は出産と乳がんとの関係についてです。
「出生率」ってご存じでしょうか?簡単に言うと、「1人の女性が一生に何人の子供を産むか」ということで、年齢別の出生率を合計したものを「合計特殊出生率」と言い、これが一般に言う「出生率」です。人口千人あたりにおける出生数で示し、日本では2005年の1・26という値が底値で2008年には1・37と若干増えてはいますが、これでもまだまだ今の日本は年々人口が減少しているのです。というのは、生まれてくる子供の男女比や、若年死亡などが影響し複雑なのですが、人口の自然増と自然減の境目が出生率にして2・08なので、この数字を上回らない限り人口は減り続けるからです。
女性の一生において大きなイベントの一つが出産であることには異論が少ないのではと思われます。乳がんが女性に圧倒的に多いことから(男性の約100倍)、出産と乳がんリスクとの関連については多くの疫学的研究が行われてきました。それらの結果をまとめると、
【1】出産経験のない女性では経産婦と比べて乳がんのリスクが高い。
【2】出産回数が多いほど乳がんのリスクは低下する。
【3】初産年齢が低いほど乳がんリスクは低下する。
【4】初産年齢が30歳以上の経産婦では、未産婦よりもリスクが高くなる。などが挙げられます。これらは世の東西を問わずほぼ共通した結果であり、確実といってよいでしょう。ですから、これらを参考にして、自分のリスクが高いのではないかと心配される方は、より定期的に乳がん検診を受けられることをお勧めします。
以上の結果から、すべての女性が20代で結婚し、瞬く間に2人や3人くらい子供をもうけることができれば乳がん罹患率を引き下げることができるのではと考えたくもなるのですが、今や男性のみならず女性も晩婚化が進んでおり、40歳近くで初産、というケースも少なくないそうです。昨今「婚活」なる言葉も生まれ、出産はおろか結婚にたどり着くまでが大変な時代になってしまいました。しかも残念なことに今の世の中は、全ての女性が安心して子供を産んで、育てていくことが難しい状況になりつつあると言わざるを得ません。そんな中で諸々の理由があるとはいえ、近年の出生率が上向きに転じたことは未来の我が国にとって小さいながらも明るい材料ととらえるべきでしょう。
まだまだ話題は尽きないのですが、この連載はひとまず終了です。今後の乳がんの罹患率や死亡率に少しでも減少の兆しが見られんことを切に願って筆を置きたいと思います。お読み下さった皆さん、ありがとうございました。
2010年04月28日(水) No.418 (芝木先生(外科)のコラム)

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