タイトル

ストレスと乳がんの発症とは関係あるのか?


これまでは食べ物や嗜好品と乳癌の関係について書いてきましたが、これらはいずれも『物質』との直接的な関係の可能性について述べてきたことになります。今回は物質ではない『心理社会的要因』という漠然としたものについて述べましょう。
たとえば、「病は気から」ということばがあったり、ストレスが原因で胃に潰瘍ができたりと、身近なところでストレスと疾患とが大いに関連している事例があることから、ストレスが発癌になんらかの影響をもたらすのでは?と考えるのは自然な流れとも言えます。
乳癌の領域でも実際に大がかりな追跡調査が行われているのですが、一方では「ストレス経験を有する女性の方が乳癌リスクの増加を示していた」という結論を出し、他方では「自覚的ストレスレベルの高い女性は低い女性よりリスクが低い」との結論を出しているという、全く背反した結果が示されており、『ストレスと乳癌リスクとの関連についての見解は一定していない』のです。ところが、例えば「夫の死」をはじめとした「身近な人の死」や「離婚」などの『ストレスフルなライフイベントが乳癌のリスクを増加させる可能性がある』という報告が少なからずあります。ストレスというものは各個人ごとにとらえ方が千差万別で、またその概念そのものも一様でないところから、目盛りで計るといったことができません。そんなところからこのようなちぐはぐな結果が出てきたものと思われます。
じゃあ、そんなに個人差が…、というのであれば、おおざっぱに性格傾向と乳癌リスクとの間には関連がないのでしょうか? 海外の報告では性格傾向と乳がんリスクとの間に関連はないとされていますが、我が日本では性格傾向とは若干意味合いが違うかも知れませんが、『「生きがい」をもつこと』や、『「決断力」があると感じること』などが、乳がんリスクを下げる因子として挙げられた研究報告があります。
以上、総合すると『心理的社会要因の中で、乳がんリスクとして同定できる明らかな因子はない』のですが、前向きに、積極的に生きようとすることは、その人の精神的・肉体的な活力を向上させ、その結果いろんな意味で健康に対し良い方向に作用するのではないでしょうか。医者をやっていてこんな言い方をするのもなんですが、日常いろいろな乳がん患者さんと接していて、あながち間違いとは言えないと思えます。きっぱりとは言えないのですが…。
2010年04月01日(木) No.413 (芝木先生(外科)のコラム)

No. PASS