タイトル

老年病から抗加齢(アンチエイジング)医学への展開③


動脈硬化の診断は、動脈の血管壁が硬くなる機能的変化と、動脈の内膜・中膜の肥厚や粥状(じゅくじょう)変化、石灰化などの壁構造の構造的変化を評価することから始めます。
機能的変化を評価する検査には、①血圧および足関節血圧÷上腕動脈血圧の比(ABI)②脈波速度(PWV)があり、構造的変化を評価する検査には①頚動脈エコー②CT③MR血管造影(MRA)があります。
動脈壁の硬化により大動脈の伸び縮み(伸展性)が低下するため、高い血圧(収縮期血圧)は上昇し、低い血圧(拡張期血圧)は低下します。したがって、高い血圧と低い血圧の差(脈圧)は増大します。一般的には60歳代から収縮期血圧は増大する一方で、拡張期血圧は低下してきます。脈圧が65mmHgを超えると注意が必要になります。脈圧が10mmHg増加するごとに、心血管疾患による死亡率が7%増加すると報告されています。
足関節と上腕で測定する足関節血圧と、上腕動脈血圧との比(ABI)も、動脈硬化の重要な検査です。動脈硬化が進展して血管内腔に狭窄や閉塞が生じると、その部位での血圧差を生じて手足の末梢側の血圧は低下します。ABI0.9(例えば足関節血圧90mmHg、上腕血圧100mmHgだと90÷100=0.9)以下の場合は動脈の狭窄を考えます。動脈の狭窄程度が進行し、ABIが低下する程、動脈血流の低下による虚血症状が重篤になります。
脈波速度(PWV)は、管が硬ければ硬いほど・内腔が細ければ細いほど・管の壁が厚いほど、脈波が早く伝播する物理的法則を動脈に応用したものです。PWVは上腕と足関節の脈波を測定する方法が簡便です。血圧測定カフを用いてPWVとABIを同時に測定を行うことができます。PWVは1、400cm/秒以上を異常値としており、動脈硬化に関連する予後の予測にも有効となります。
頚動脈エコーは体に害のない検査(非浸襲的)で、簡便です。頚動脈における動脈硬化の進展は、脳動脈・大動脈・心臓の冠動脈などの動脈硬化の進展と関連することが認められています。頚動脈の内膜と中膜を合わせた厚さ(IMT)が指標として用いられており、正常は1mm以下です。
マルチスライスCT(MDCT)は、検出器を複数配置することで「より速く」「より細かく」「より広く」検査することが可能になっています。特に64列のCT血管造影は、心臓のように動いている臓器の血管(冠動脈)を描出するのに大変有効な検査といえます。
核磁器共鳴装置(MRI)によるMR血管造影(MRA)は、非浸襲的な検査であり、血管壁の石灰化があっても内腔の描出が可能な利点があり、CTと共に有用な検査方法になっています。
動脈硬化の診断は、加齢により徐々に進行する血管病変を簡便な方法で検査できるので、老年病の領域にとって大変有用であり、今後さらに臨床研究が進む分野になります。
次回は動脈硬化を引き起こす危険因子と、血管を若々しく保つ予防について紹介いたします。
2009年08月05日(水) No.366 (森本先生(外科)のコラム)

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